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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第5部

    火紅狐・発火記 5

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    フォコの話、228話目。
    燃え上がる央南。

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    5.
     央南西部をあっさりと陥落され、清王朝は対応に戸惑っていた。
    「こんなにも呆気なく、我々の守りが崩されるとは……!」
     軍議の中心に座る一富王と家臣たちは、頭を抱えてうなる。
     反面、サザリーはどこか他人事のように、平然とこう唱えた。
    「まあ、今回の失敗は、敵軍の本拠地を把握できていなかったせいですよ。これでどこに本拠地があるか、大体は把握できたわけで。
     逆にですよ、これで後々の戦いがしやすくなったと、そう思えばどうでしょうか?」
    「何?」
    「敵のいる場所と、支配されちゃった地域とがはっきりしたわけですから、いわゆる『線引き』がしやすくなったわけですよ。
     ここは一つ、支配されちゃった地域は全面的に見捨ててですね……」「見捨てて、とは何だ!?」
     家臣たちの批判を受け流しながら、サザリーは話を展開する。
    「まあ、まあ、言葉の綾ってやつです。
     とりあえず、僕が言いたいのはですね。今後は央南西部地域と、こっち側との間に、でっかい壁か何かを作ってですね、相手が絶対攻めてこられないようにしちゃうんですよ。
     そうすれば奴らは逆に、央南西部で孤立することになる。そう言う手なんです」
    「ははあ……。なるほど、確かに見方を変えれば、壁を築くことにより、敵は東央中湾、央南洋、屏風山脈、そしてその壁。四方を囲まれるわけか。
     敵もどこぞの国であればまだ、諸外国との連携も取れようが、実質は単なる賊軍。手を貸す国なぞ、いるはずもなし。放っておいても、奴らはやせ細って自滅する、……と言うわけか。
     よし、直ちに壁を築くのだ! こればかりは、遅れを取るわけには行かぬぞ!」
    「はっ!」
     国王の号令を受け、将軍たちはバタバタと、軍議の場を後にした。
    「のう、エール氏よ」
     と、一富王がサザリーに声をかけてきた。
    「なんでしょう?」
    「わしは度々、物事を見誤ってきたようだ。特に、お前と言う男は、ただの疫病神と思っていたが……、これほど、貢献してくれようとは思っても見なかった」
    「……いえいえ、そんな、とんでもない」
     口ではそう答えておいたが、サザリーの本心は逆方向を向いていた。
    (とんでもない、とんでもない。
     貢献? ……した覚えなんてさらっさら無い! これは作戦なんだよ――敵じゃなく、あんたらを攻撃するためのね!
     そう、央南を二分するほどの壁の構築なんて一体、いくらかかると思ってる? さらにその、維持費は? 人件費だってバカにならない。
     もっともらしく理屈を述べてきたけど、これは結局、無駄な出費をさせるためのものなのさ!
     そう、あんたらにはもっともっと、無駄金をはたいてもらわないといけないんだ。それこそ大赤字、財政が真っ赤に燃えるくらいに!
     そのために、僕はこのド田舎に戻ってきたんだ。さあカズトミ王、ずっとバカでいてくれ。もっともっと、バカになってくれよ。
     そうすりゃもっと、僕たちの思い通りになるんだからね。……ヒヒ、ヒヒヒヒ)



     一方で、焔軍側もその動きを一旦、抑えることとなった。
    「様子見、か」
    「ええ。コゲンとコウカイを制圧したことで、我々は実質、央南西部を掌握しました。
     これにより、敵は陸路・海路とも、容易に攻め込めなくなり、我々には若干の余裕が生まれました。であれば今後に備え、焔軍を再編成するのが最適な策かと思います」
     ランドの献策に、少佐は深くうなずく。
    「ふむ。確かに、此度の戦いで我が軍はかなり拡大したからな」
     軍事物資の集積地である弧弦と、海港都市である黄海を手に入れ、焔軍の装備は大幅に拡充された。
     ランドの言う通り、今後のさらなる激戦に備え、軍の態勢を整え直すことに、反対する者は少なかった。「もっと攻めるべき」と言う意見も多少はあったが、前述の、清朝軍側からの「壁」の構築が始まったこともあり、無駄な攻めに終わりそうな気配もあったことから、この意見は却下された。
    「なあ、ファスタ卿」
     少佐は腕を組みながら、神妙な面持ちで尋ねてきた。
    「なんでしょう?」
    「長期戦になるであろうか?」
    「なりそうですね。ただ、僕も何かと忙しい身です」
     ランドはにっこりと笑い、こう宣言した。
    「3年以内に終わらせるつもりをしています。いや、もっと早くするかも」
    「できるのか?」
    「できるできないではなく、『します』と言うことで」
    「……頼りにしているぞ、ファスタ卿」
     少佐はニヤリと笑い、ランドに期待を寄せた。

    火紅狐・発火記 終
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