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    「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
    双月千年世界 短編・掌編

    火紅狐番外編 その5

     ←火紅狐・抱罪記 8 →3周年と1ヶ月
    フォコの話の、その裏で起こっていたこと。
    霊夢騒ぎの共犯者。

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    火紅狐番外編 その5
    《ほんならイヴォラちゃん、お父さんのコト、ホンマに大好きなんやねぇ》
    「うん、好きだよ」
    《えー子やなぁ》
     夢の中――そこが何と言う世界なのか、厳密な説明が難しいため、便宜上そう呼ぶ――エリザは、イヴォラと話を続けていた。
    「ねえ、おばちゃん」
    《ん、どないした?》
    「お父さん、うまく行くかな?」
     その質問に、エリザはけらけらと笑う。
    《アッハッハ……、おませさんやなぁ!
     ま、何だかんだ言うても、上手く行くやろ。アタシがずーっと見てきたけども、ええ感じやったからな、今までずーっと。
     誠心誠意、謝ってから告白したら、きっとランニャちゃんもハイって言うてくれるやろ。
     さ、そろそろ起きや。多分やけどな、二人ともずぶ濡れで帰ってくるやろし、お風呂を用意するよう、屋敷主さんに言うとき》
    「なんでずぶぬれになっちゃうの?」
    《船がもう、始発の便が出るか出えへんかくらいの時間やし、ランニャちゃんはもう乗っとるやろ。
     ほんで、船が出たトコにお父さんが向かって『好きやー』言いに行ったら、ランニャちゃんはどうやってお父さんのトコに行くやろな?》
     エリザの説明に、イヴォラは少し間を置いてうなずいた。
    「……、うん、分かった」
    《ほな、またな》
     エリザがにっこり笑ったところで、イヴォラは姿を消した。

     彼女はずっと、この世界に居た。
     その理由は彼女にも分からないが、「居たくなった理由」ならある。
     彼女の遺した息子が、あまりにも凡庸かつ、頼りなかったからだ。
     彼女の遺した巨大商会を支えきれず、日を追うごとに凋落していく様を見て、彼女は仕方なく、息子の夢枕に立つことにした。
     その結果自体は芳しくないものではあったが、以後、彼女は一族内で見どころのある人間に、助言を与えることにしたのだ。

    《……ま、コレで商会は多分、4、50年くらいは安泰やろ。あの子もまだ20代やし》
     一人になり、エリザはぽつりと、そうつぶやいた。
     と――。
    《そうかな?》
     背後から声をかけられ、エリザはビクッと尻尾を毛羽立たせた。
    《えっ!?》
     この世界に自分以外の者が、自分が呼んでもいないのに現れることなど、この200年余りの間、一度も無かったからだ。
    《ど、どちら、さん……?》
     流石のエリザも、この状況には面食らっており、恐る恐る後ろを振り向いた。
    《や、『狐』さん》
     そこにいたのは、銀髪に白い耳と尻尾の猫獣人だった。
     しかし、体型の凹凸があまり無く、見ただけではこの猫獣人が男か女か、エリザに判断はできない。
    《ども、『猫』さん。……えーと、さっき言うてたんって、どう言う意味?》
    《ああ。まず言っておくと、ボクには未来が見えるんだ。
     で、30年と、ちょっとくらいかな。ちょっと、揉めるんだ》
    《ちょっと?》
    《うん。二つの家と兄弟間とで争いが起こって、あちこちに親の資産を持ち逃げして、勝手に国を作るんだ。
     結局彼の元に残ってくれたのは、あの『猫』と、長男・末娘だけになる》
    《そうかー……。ま、ソレはしゃあないな。アタシには関係ないし》
    《そうだね。……ね、それよりさ、エリザ》
    《ん?》
    《キミのやってたコト、面白そうだね。ボクにも、やらせてよ》
     そう頼んできた白猫に、エリザはきょとんとなる。
    《へ? ……まあ、別にええけど。勝手にやってみたらええやん》
    《ボク、コッチに来たばかりなんだ。さっき目が覚めたばかりだから。
     だからさ、やり方とか教えてほしいなって》
    《そうかー……。ほな、まあ、……ええ、かな?》
     そう返され、白猫は嬉しそうに笑った。
    《く、ふふっ。ありがとう、エリザ》



     夢に白い猫獣人が現れ、預言を伝えてくると言う逸話が広まるのは、これ以後になってからである。

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    これにて第6部、終了となります。
    ようやくフォコ君、……いや、フォコは金火狐の総帥になり、家族を得たわけですが、
    これでおしまい、ではありません。

    「蒼天剣」で出たニコル3世、即ちフォコに関係する謎。
    これに対する答えが、まだ出ていません。

    と言うわけで第7部は、その謎の解答も含めての展開。
    そして「火紅狐」の、最終部となります。

    それに伴い、ちょこっと掲載をお休みします。
    次回は12月上旬辺りから。



    話は変わりますが、今回(第6部)、「アリとアリクイ」様より挿絵を多数、提供していただきました。
    改めて、ここにお礼申し上げます。
    ありがとうございました!

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    2015.06.01 タイトル表記を修正
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