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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・囲陸記 5

     ←火紅狐・囲陸記 4 →キャラ紹介;特別造船所②
    フォコの話、359話目。
    打ちこまれた杭。

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    5.
     央北封鎖の半年前、オークボックスにて。
    「あんたがネールの刀自さんの、息子さんかい」
    「ええ、ランド・ファスタと申します」
     ランドはフォコと大火を伴い、あの大親分、ヨセフ・トランプ翁と面会していた。
    「……あの姐御さんとは、似ても似つかねえな。ひょろっちくて、ドンと押したら窓の外までブッ飛びそうな体つきしてやがらぁ」
    「血はつながってないんです。父の再婚相手なので」
    「ほう、そうかい。……ま、本題に入ろうか、お兄ちゃんよ。
     俺に頼みてえことってのは、一体なんだ?」
     ランドは脇に抱えていた地図を広げ、翁に見せる。
    「ん? こりゃウチの街、……だったところだな」
    「ええ、その通り。イーストフィールドの地図です」
    「こいつが、何だって?」
    「あなたは元々ここの大地主であり、この周辺の地理についても非常に詳しいと存じます」
     ランドの堅い言い回しに顔をしかめつつ、トランプ翁はうなずく。
    「ああ、まあな。どこの畑に何が植わってるだとか、どこの通りに誰が店を出してるかとか、それくらいは今でもソラで言えるぜ」
    「では、お聞きしますが――この街では、小規模ながら海産物や塩を売っていますよね?」
    「お? まあ、確かに売っちゃいるが、……本当に小規模だぞ。街の外にゃ卸してないからな。余所者のお前さんが、どうしてそれを?」
     ランドの代わりに、フォコが答える。
    「僕がエンターゲート氏の有していた全権利を継承しとるからです。イーストフィールドについての利権も、僕のもんですし」
    「なるほど、そんなら商売事も知ってておかしくはねぇな。で、その塩だの魚だのが、一体どうしたって?」
    「余所者の僕が知る限り、イーストフィールドは崖近くにある街です。製塩所はともかくとして、港や釣り場があるとは、聞いたことが無いのですが」
    「ああ、なるほどな」
     そう問われ、トランプ翁はニヤニヤとした顔でうなずいた。
    「確かにあるっちゃ、ある。街の奴らが半ば趣味や道楽で使う、ちっちぇえ漁場はな。
     ただ、ちっとばかし入り組んでっから、改装してちゃんとした港にするってなると、バカみてえな金がかかるし、酪農だの牧畜だので生活はできてっから、んなもんを無理に造る必要も無え。
     だもんで、そのまんまにしてあるってわけよ」
    「では、資金的・技術的問題がクリアできれば、港の造成は可能と言うことですね?」
    「おう。……ニコル卿、まさかあんた、あそこに港を造るつもりなのか?」
     けげんな顔をしたトランプ翁に、フォコはうなずいて見せた。
    「ええ、それでできれば翁にも、現地に同行していただいて、住民の皆さんの説得に協力していただければ、と思てたんですけども、よろしいでしょか?」
    「説得? んなもん、俺がいなくても賛成するさ。元々央北にゃろくな港が無えし、できるってんならできるで、喜ぶ奴もいるだろうしな」
    「あー、と」
     そこでランドが、申し訳なさそうに手を挙げた。
    「造成もなんですが、もう一つ、お願いしたいことがありまして」
    「もう一つ……?」
    「ええ。少しの間、家を離れてもらいたいんです」
    「誰にだ?」
    「全員です。イーストフィールドの住民全員を、央中の方へ一時、転居させたいんです」
    「なっ、……んだってぇ?」
     流石のトランプ翁も、この要請には面食らった。



     一連の交渉には多少、難航したものの、ランドの計画は結局、全面的に推し進められることとなった。
     そして314年現在、イーストフィールドには――。
    「……準備は万全だね。街の住民が丸ごと敵兵とすり替わっているだなんて、思いもよらないだろうな」
    「流石は『千里眼鏡』のファスタ卿、……っちゅうところですな」
    「まあ、そうなるのかな」
     ランドは眼鏡に手をやり、フォコに尋ねた。
    「その、……二つ名、って言えばいいのかな。それ、誰が付けたんだろうね」
    「僕が聞いたんは、イールさんからですわ。広めたんも多分、イールさんでしょうな」
    「イールか……。恥ずかしいなぁ、なんか。
     ま、……とにかく、これでこちら側の準備は整った。それも、考えうる最良の状態で」
    「ですな。兵隊さんの数も、4、5千くらい集まってくれれば上等と思てたところで、なんと2万近くも集まってくれはりましたからな。
     加えて、この街は元々、ウチの先代が自治権やら自衛権やら中央政府から買うとったおかげで、半ば独立都市扱いで放っとかれとりましたからな。それに加えて、あちこちからの襲撃でてんやわんやになっとる今、この街は完全にノーマーク、構ってられへんっちゅう状態。
     ここから急襲すれば、世界最強と謳われる中央軍も……」
    「勝算は高い。
     ……ついに、機は熟したと、言うべきかな。いよいよこの、連綿と続いていた戦いは、最終局面に突入する」
     ランドはどこか感慨深げに、そうつぶやいた。

    火紅狐・囲陸記 終
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