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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・猫討記 2

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    フォコの話、372話目。
    千年級の会話;国盗りの理由。

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    2.
     大火の顔を見て、モールはニヤニヤ笑っている。
    「……なんだ?」
    「いや、似合わないなーと思ってね。私ならやりたかないねぇ」
    「俺とて、進んでやろうとも思わん」
     そう返した大火に、モールはもう一度、にやぁ、と笑みを向ける。
    「じゃあ、とっとと辞めたらいいじゃないね」
    「まだだ。まだ、やることがある」
    「って言うと?」
     大火は静かに辺りを伺ってから、モールにこう告げた。
    「3つ、ある」
    「3つ、ねぇ」
    「一つは、資金の確保だ。
     難訓も恐らく、資金を蓄えるために何らかの計画を図り、成功させていると、俺は見ている」
    「だろうね。でなきゃ2年前、あんな大規模なゴーレム製造工場を造ってポイ、なんてもったいないコトはできない。ただのお遊びにしちゃ、手が込み過ぎだしね」
    「ああ。それに対抗するとなれば、同等の資金を積み上げなければならんだろう、な」
    「なるほど、なるほど。二つ目は?」
    「情報網の構築、および情報収集だ。この世界の、現在の文明レベルでは、まともに情報を集めるだけでも手間がかかる。
     現時点で最も巨大な組織を、俺にとって都合のいいように改築し、そこから世界中の情報を集めさせようと考えている」
    「ふむ、そりゃあ名案っちゃ名案だね。私も、世界をあっちこっちブラブラして情報を集めてはいるんだけども、遅れてるコトが多くってねぇ。
     ひどいトコなんか、いまだに中央政府が前のまんまで、まーだ7代目が生きてるって思ってたし。……っと、そーだ。目的を忘れるトコだったね」
     モールはひょい、と三角帽子を脱ぎ、大火に近寄る。
    「なんだ?」
    「一発殴らせろ」
     言うが早いか、モールはいきなり、大火の懐に拳を突き入れた。
    「う、……く、……何をする?」
     にらんできた大火に対し、モールは怒りに満ちた表情で返す。
    「当然の報い、……にはちょっとまだ足らないけどもね。
     私ゃね、ゼロとは親友だったんだ」
    「ゼロ? ……初代天帝の、ゼロ・タイムズか」
    「そーだよ。あいつが汗水垂らして必死に作った組織を、しっちゃかめっちゃかにしやがって!
     これでもまだ、私の怒りとあいつへの無礼にゃ釣り合わないトコだけども、……まあ、組織としてはとっくに消費期限の切れたトコだったし、潰れて当然だってコトを加味して、コレくらいで勘弁してやるね」
    「……そうか。悪かったな」
     大火は顔を若干しかめつつ、床に落ちていたモールの帽子を軽く手で払い、頭に載せて返した。
    「フン。……で、あと一個、やんなきゃならないってのは、一体何だね?」
     大火はもう一度仏頂面を作り、静かに答えた。
    「……お前の言うように、俺は為政者の器ではないし、機を見て退くつもりだ。
     だが次の為政者、支配者にふさわしい者は、未だ現れない。手を挙げる奴、挙げようとする奴はどいつもこいつも、我欲にまみれた愚者ばかりだ」
    「まともに治められる奴がいなきゃ、折角キミが構築しようとするシステムも、満足に働くわけが無い。
     極端に言えば、次の時代を任せられるような奴が現れない限り、キミは仮初めの王で居続けなきゃいけないわけだね」
    「……せめて、あのジョーンズとか言う軍人が、まともであってくれれば幸いだったのだが」
    「あー、聞いたよ。勝手に王様を名乗って、街の奴らを皆殺しにしようとしたとか」
    「それに近いな。
     結局、為政者に適う人材は、まだ俺の前に現れていない。抑えつけるために、力を誇示し過ぎたようだ。今現在、俺の周りにいる大臣たちはどれも、俺の顔を見ようともしないから、な」
    「ビビらせ過ぎたねぇ。そんな状況ならむしろ、キミの命を狙うくらいの奴の方がいいかもね」
     そう言ってモールは、懐からぺら、と紙を差し出した。
    「うん?」
    「北方でね、キミに対する反乱組織が結成されつつある。
     リーダーは、イール・サンドラ元准将。どうやらキミを、ランド・ファスタ卿暗殺の犯人と決め付け、キミを亡き者にしようと企んでいるらしい」
    「……だから?」
     大火は肩をすくめ、モールが暗に示した案を却下しようとする。
    「俺を殺させ、イールを新たな王に立てろとでも言うのか? そんな茶番は御免だ」
    「だろうね。……でもね、克」
     モールはもう一度、大火の側に寄った。
    「アルが、……復活したんだ」
    「……なんだと?」
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