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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・猫討記 4

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    フォコの話、374話目。
    将軍の離反と王国の体面。

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    4.
    「アルコン?」
     そう呼びかけたイールに、そのフードの男は淡々と答えた。
    「そうだ。ようやく北方へ戻ってきたな、イール」
    「タイカが、アンタを殺したって言ってたけど。どうして生きてるの?」
    「お前はあの男の言葉を信じるのか?」
     アルコンはギチギチとした金属的な音を立てながら、イールに近寄る。
    「お前の想い人を殺し、育ての親である私を打ち倒したあの男を、お前は信じるのか?」
    「……っ」
     その言葉に、イールは椅子を倒して立ち上がる。
    「それは、本当なの?」
    「ああ、そうだ。私はあの男によって……」「ソコじゃない!」
     イールは思わず、ガンと机を叩いて叫んでいた。
    「ランドを殺したのは、ホントにあの、タイカ・カツミだって言うの!? あたしはソレを、聞いてんのよッ!」
    「……そうだ。私には分かる。あの『黒い悪魔』こそが、諸悪の根源なのだ」
    「そう。……アンタのコトは、ずっと嫌いだったけど」
     イールはブルブルと震えながら、悲壮な笑みを浮かべた。
    「その意見だけは、あたしも賛成するわ。……あたしは今、本気で決意した。
     あたしが、あの『黒い悪魔』、タイカ・カツミを殺してやるわ」
     そう宣言したイールに、アルコンは籠手で固められた右手を向けた。
    「イール。よくぞ、決意してくれた。
     私の存在理由、お前をこの世界の女王にすると言う計画にとって、あいつは最優先に、排除しなければならぬ対象だ。
     これよりお前の潜在能力を、開花させよう。お前は真に、この世界を統べる女王となるのだ」
    「あたしの能力を、開花……?」
     尋ねたイールに何も言わず、アルコンは彼女の額に手を押し当てた。

     数日後、クラウス王の元に、驚くべき報告が届けられた。
    「サンドラ卿の私邸が、全焼……!?」
    「はい、今朝未明頃と思われます。放火したのは、恐らくサンドラ将軍本人かと」
    「どう言うことだ?」
    「本日、軍部宛にこのような手紙が送られておりました」
     手紙を受け取ったクラウス王は、読み終えるなり「ああ……」と声を漏らした。
    「何と言うことだ……」
     そこへ、騒ぎを聞きつけたレブが駆け込んでくる。
    「陛下、イール……、サンドラ卿の私邸が燃えたと聞きましたが……!?」
    「ああ。彼女は、もう止められない」
    「それは、どう言う……?」
     答える代わりに、クラウス王は手紙をレブへと手渡した。



    「国王陛下ならびに、ジーン王国軍本営御陣へ

     私、イール・サンドラはこの度、世界最大の逆賊、タイカ・カツミを討伐することを決意致しました。
     つきましては、被害や影響が及ぶことを鑑み、本日を以て将軍職を辞し、市井にて同志を募る所存です。
     どうかこれらの行為について、邪魔や、あるいは手助けをなさらぬよう。

    ジーン王国軍准将 イール・サンドラ」



    「これは……!」
    「非常に困ったことになった、と、……言わざるを得ない」
     クラウス王は、沈んだ面持ちで彼女の行為を嘆く。
    「今やカツミ氏は、強大な政治力と軍事力を有した、軽視のできぬ存在だ。
     彼に楯突く勢力を、彼女は恐らく、この地で集めるだろう。それが成功するにせよ、失敗に終わるにせよ、建国からまだ10年も経たぬ我が国にとって、政治騒乱の火種になりかねん。
     できることであれば、一刻も早く彼女を、……保護し、冷静にさせねばならんだろうが、それも難しいだろうな。何しろ、我が軍の二枚看板であったのだから」
    「……『であった』とか、『火種になりかねん』とか」
     レブは思わず、叫んでいた。
    「陛下はサンドラ卿をもう、厄介者扱いするのですか!?」
    「……しているのは彼女の方と言っていい。彼女は我々に、はっきり『邪魔をするな』と言ってのけたのだからな。
     それに勘違いしないでもらいたい、将軍」
     クラウスは額に手を当て、重たげなため息交じりに、こう弁明した。
    「私とて、彼女の身を少なからず案じているのだ。少しでも我が父の胸先が違えば、この国を治めていたのはあるいは、彼女だったのかも知れんのだからな。
     そして私自身も、多少形は違えども、それを望んでもいたのだ。彼女と歩んでいければどれだけ良かったか、とな」
    「それは陛下、もしかして、……いえ」
     レブはクラウス王の口走った言葉に、少なからず驚かされた。
    「……失礼致しました。執務に戻ります」
     そのため、レブはそれ以上クラウス王に詰問することをやめ、その場を去った。
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