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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・猫討記 5

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    フォコの話、375話目。
    極秘会談。

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    5.
     クラウス王が懸念していた通り、イールの離反と反大火を掲げた私兵集めにより、北方沿岸部では少なからず混乱が起こっていた。
    「サンドラ将軍が挙兵したって、聞いたか?」
    「うんうん、聞いた聞いた」
    「何でも、新しく中央政府の主になったナントカってのを倒すんだとか」
    「あの『猫姫』が、相当頭に来てるらしい」
    「おお、こわいこわい」
    「……気になるのは山間部の方だ。サンドラ将軍が自分勝手に動いてるのに、止めようとも応援しようともしてないとか。まったく無視してるみたいだ」
    「何考えてるんだろうな、まったく!」
     元々より「猫姫」イールの人気は高く、彼女が離反すること自体が、ジーン王国にとっては憂慮すべき事態だった。「人気者」の彼女が離れれば、国民たちは離れた元、即ち軍部と王室政府には何らかの大きな問題があるのでは、と言う邪推をされやすかったためである。
     その懸念通り、ジーン王国沿岸部では、王国に対する不信感が、日に日に募っていった。そしてそれは、イールの同志集めをさらに容易なものにしていた。



     モールからの情報提供に加え、己の統治体制(システム)を揺るがす人間がいることを無視する大火ではない。
     大火は「魔術通信」により、クラウス王と直接会談を行った。
    「では、イールが俺に対する反乱組織を構築している、と言うのは確かなのだな」
    《ええ、……その通りです。私の方でも軍を使い、行方を追ってはいるのですが、成果は芳しくなく……》
    「……だろうな」
    《え?》
    「クラウス。芳しくない、と言ったが、実際のところはどうなのか、正直に言ってもらおうか」
    《え、いや、本当に成果は、その……》
    「挙がっていないどころか、逆効果になっているのではないか? 俺はそう、にらんでいるのだが」
    《う……》
     間を置いて、クラウス王の困り果てた声が、大火の脳内に返ってくる。
    《……仰る通りです。どうにか居場所をつかみ、説得、あるいは拿捕に向かわせても、その半数以上が帰ってきません。恐らく返り討ちに遭ったか……》
    「寝返った可能性もある、と言うことだな。……なるほど、お前にとっては真に、憂慮すべき事態だな。
     では、こうしよう。お前の軍勢では彼女を説得も、捕えることもできない。いや、できたとして、彼女の在野における人気は非常に高く、お前の国に悪影響を与えることは明白だ。つまるところ、彼女に対して何らかの手立てを講じても、逆効果となる可能性が非常に高い。
     一方で、狙われた俺が彼女を拘束ないし撃退しても、それは戦闘行為でしかないわけだ」
    《……つまり陛下、あなたが》
    「俺を陛下などと呼ぶな、クラウス王。以前通りに呼んでくれて構わん」
    《……タイカ、あなたがこの北方の地に、直接乗り込むつもりだと》
    「そうだ。……俺の予想では、お前への影響を彼女なりに考え、山間部には寄り付こうとはしないはずだ。恐らく沿岸部でのみ、同志集めをしているはず。
     お前はこの件に関し、『最初から関与していなかった。すべては彼女の独断であり、自分が動き出す前に事件は終わっていた』と言い張ることを要請、および推奨しよう」
    《え? ……では、この会談も》
    「俺とお前が偶然にも、同時刻に独り言を言っていた。それだけだ」
     大火はそこで、通信を切った。

     大火に言われた通りに、クラウス王はイール捜索に関するすべての対策を打ち切り、捜査資料もすべて破棄させた。
    「どう言うことですか、陛下!?」
     この行為は勿論、レブの知るところになった。
    「……この件に関しては、……市井の流れに任せることにした」
     そう返したクラウス王に、レブは目を丸くする。
    「本気ですか!? このままイールがタイカにやられても、いいって言うんですか!?」
    「もとより彼女は、カツミ氏との直接対決を望んでいた。……我々が止めても、彼女は飛び出すだけだ」
    「だからって……!」
     レブはわなわなと震え、踵を返そうとする。
    「どうする気だ?」
    「決まってる! このまま見殺しになんかできません! 俺は一人ででも、あいつを……」
    「それはならん! 傍観せよと、……いや」
    「傍観『せよ』? 誰にです? ……まさか陛下!?」
     レブはキッとクラウス王をにらみ、非難した。
    「タイカからそう命じられたと言うんですか!? 馬鹿な! 今や敵国のトップとなったあいつの命令を、国王のあなたが受けたと言うんですかッ!」
    「……」
     何も言えず、黙り込むクラウス王に、レブはもう一度、背を向けた。
    「……今日限りでジーン王国軍少将の地位を、退かせていただきます。あんたに対する忠誠心なんてのは、今この場で吹き飛んだよ」
    「……」
    「俺は勝手にやる」
    「ま、待て、ギジュン卿!」
     止めようとしたクラウス王に構わず、レブは立ち去った。
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