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    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・猫討記 6

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    フォコの話、376話目。
    急襲された反乱軍。

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    6.
     双月暦315年、3月。
     イールの集めた反乱軍は、既にその規模を1千人に増やしていた。
    「サンドラ卿、次はどこへ、志願を募りに?」
    「そうね……、沿岸部へは一通り、声をかけ終わったし」
     問われたイールは、チラ、と背後のアルコンに目をやった。
     アルコンが現れて以降、イールは強力な魔力と強靭な身体能力を手に入れた。そこから発せられるカリスマ性が、元々の「猫姫」人気と相まって、反乱軍の規模拡大に貢献していた。
    「沿岸部での人員獲得は、既に限界だろう。山間部、あるいは北方大陸外に手を伸ばすべきだ」
     アルコンの答えに、イールは小さくうなずいた。
    「そうね。敵が海の向こうにいるのに、まだこっち側でウロウロしてるってのもね。そろそろ、海を渡る頃よ」
    「しかし、敵軍は先の戦いで数を減らしたとはいえ、まだ10万近くは……」
    「ソレは全体の話でしょ? 拠点防衛に関しては、半分の5万程度。しかもあたしたちの行軍にいるのは、さらに半分の3万程度。1千名くらいなら、偽装して侵入は可能だし、むしろ現地で混乱に乗じて人を募った方が、集めやすいかも知れない。
     そろそろ、中央大陸へ……」
     イールが決定を下そうとした、その時だった。
     ドゴ、と言う鈍く重い音が、彼女がふたたび本拠地にしていた小村、ブラックウッドに響き渡った。

     慌てて音のした方へ向かったイールは、街の北側にある岩壁に、大きな穴が開いているのを確認した。
    「攻撃されてる……!? まさかもう、攻めてきたって言うの!?」
    「落ち着け、イール。現状のはんだ……」
     イールを抑えようとしたアルコンの言葉が、途中で途切れる。
     彼のすぐ前に、今まさに標的と挙げていた男が立っていたからだ。
    「まさか」
     再び口を開きかけたアルコンの顔に、大火はがつっ、と音を立てて刀を突き立てた。
    「あ、アルコン!?」
    「イール。良く聞け」
     大火はアルコンの喉奥に刀を突き立てたまま、青ざめるイールに顔を向けて静かに告げた。
    「これから1時間半ほど後、ここから南西にある丘陵地帯に中央軍の兵士が一個大隊、集結する。
     逃げても構わんが、その場合は中央軍の勝利と宣伝させてもらう。戦っても構わんが、その場合は俺自らが出張る。
     故に、お前らに勝ち目は無い。その上で、余計な人的被害を出したくなければ、前者を選択することを推奨する。
     以上だ。この鉄クズは、俺が処分しておく」
     それだけ伝え、大火はアルコンとともに姿を消した。
     と、後から追いついてきた同志たちが、慌ててイールの元に集まってきた。
    「サンドラ卿、ご無事ですか!?」
    「お顔が真っ青ですが、お怪我でも!?」
    「……え……?」
     ほんの10秒、20秒程度の出来事だったためか――イール以外に、大火の姿を見た者はいなかった。

     ブラックウッドから離れた大火は、まだ刀で突き刺したままのアルコンに声をかける。
    「残念だったな、アルコン・サンドラ。いや、アル」
    「……! ナゼ、私ノ名前ヲ!?」
    「情報提供があった。お前がふたたびイール・サンドラを傀儡とし、世界支配に乗り出すと」
    「イ、一体、誰ガ!?」
    「こうした秘密の暴露をする際、提供者を明かさないのが定石だろう?
     そいつからの情報提供により、お前は俺の計画、そして今後の世界情勢にとって、著しく邪魔な存在だと認識している。このまま放っておけば、面倒なことになるのは明白。
     よってイールと共に、お前は消す」
    「コ、コノ痴レ者メ! 私ガ担ッタ崇高ナ計画、神ノ思シ召シヲ知ラズ、己ガ都合デ御子ヲ消スト言ウノカ!」
    「それはお前のことだ、鉄クズ。
     俺は徹底的に、臆面も無く『神』などと名乗る、痴れ者共を駆除する。それが俺の目的だ。お前の主人も、俺の弟子も含めて、な」
    「……? オ前ノ弟子? ドウ言ウ……」
     アルが聞き返す前に、大火はその頭部を粉々に砕いた。



     大火からの忠告を受けたが、元よりイールは論理的判断より、感情的判断を優先する性分である。
     このまま撤退し、仇敵に対して恥を晒すよりも、彼女は戦って散ることを選択した。
    「……愚か者め」
     先陣を切って丘陵地帯にやってきたイールを、中央軍の本陣から確認した大火は、周りにこう命じた。
    「敵将、イール・サンドラ卿に最後通牒を送る。それで投降するならば、そのまま全員を拘束する。
     だがもし、それに従わないと言うのであれば、交戦はやむなしだ。しばらくここで待て」
    「分かりました、カツミ様」
     大火は一人、丘陵地帯に向かって歩を進めた。
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