fc2ブログ

黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・闘焔記 3

     ←火紅狐・闘焔記 2 →火紅狐・闘焔記 4
    フォコの話、381話目。
    良い話と悪い話。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
    「あ、あのー? 私に御用と言うのは、なんでしょうか……?」
     尾形卿が恐る恐る、玄蔵へと声をかける。
    「ああ、うむ。……尾形卿、良い話と悪い話がある」
     玄蔵は「通信頭巾」を脱ぎながら、落ち着いた声を作って、こう説明した。
    「まず良い話であるが、双葉殿下がそこの、拙者の不肖の息子である蓮蔵を、その、見初められてな。当人同士で話された結果、婚姻を結びたいと仰られた」
    「なんと」
     尾形卿はぴょこ、と猫耳と尻尾を立て、嬉しそうな顔になった。
    「それは良いお話でございますね。清家と焔家が結べば、ここ数年続いた問題にも、良好な形で片が付けられましょう」
    「それに関連して、だが。悪い話と言うのが、こうだ。
     中央政府が克大火主導の元、新たに動き出したのは知っておろう?」
    「ええ、存じております」
    「今しがた、その克から連絡が入った。以前と同様に、清家を名代とする統治体制を維持するようにと。
     そして従来から存在していた1.5~2%と言う奉納金も、上納金と名を変え、割合も15%と増やして、これまで通り送るようにとのことだ」
    「……はい? おいくつですって?」
    「15だ」
    「……ご、ご冗談を。ただでさえ2%でも、我々にとっては少なからず重荷となっていた額でございます。それを15だなどとは、我々に死ねと言っているようなもの! あまつさえ、先の戦争で発生した莫大な額の国債を、少しずつでも返済しなければならないと言うのに、そんな大金を毎年納めていたのでは、利子も払えませんぞ!?
     到底その額では、私も含め大臣、家臣一同、納得できません!」
     温和な尾形卿には珍しい、真っ向からの反対に、玄蔵も深くうなずくしかない。
    「左様、拙者もこれには反対した。しかし克からは、『もしこの要求が通らなければ、再び大艦隊を差し向けることになる』と返ってきた」
    「そ、それで閣下、何とお答えに?」
    「……つい、頭に血が上ってな。突っぱねてしまった。『そんな業突く張りの要求を呑むほど、拙者らは寛容にござらんし、愚昧でも無い! そんな寝言を吹かすような輩を上君と信奉するくらいなら、央南は中央政府より決別する!』、……とな」
    「なっ、……何と言うことを」
     先程とは一転して、尾形卿の猫耳と尻尾はしおしおと垂れる。
    「そ、それでは中央軍が再び、この地へやってくると言うことですか!?」
    「……いや、……そうはならんだろう」
    「……克氏が、お許しになったと言うのですか」
    「その点に関しては、逆と言えるな。
     克は激昂したらしくてな、『では貴様とお前とで決着を付けよう。その結果次第で、お前らに対する措置を検討する』と言って、通信が切れた」
    「それは、つまり、……どう言うことです?」
     青ざめた顔の尾形卿に、玄蔵も額に汗を浮かべながら、こう答えた。
    「一騎打ちだ。拙者と、克とでな。拙者が勝てば、央南は中央政府の軍門から脱却、独立が認められる。だが負ければ、上納金15%では済まぬだろうな」
    「か、……勝ち目は、……いえ」
     尾形卿も、大火の強さについては何度も耳にしている。
     予想を口にするのを恐れたのか、尾形卿はそのまま踵を返し、立ち去ってしまった。

     玄蔵と蓮蔵、そして双葉の三人だけになったところで、双葉が口を開いた。
    「もう、義父上とお呼びしてよろしいでしょうか?」
    「う、うむ」
    「では義父上。わたしには、義父上が今、尾形卿に伝えられた話と、『頭巾』で話されていたものは、まったく違う内容ではないかと思っていたのですが」
     双葉の言葉に、玄蔵はポリポリと頭をかいた。
    「殿下の目、あ、いや、……耳はごまかせませんな」
    「わたしが義父上と呼ぶのですから、義父上も双葉と呼んでくださって結構です」
    「……双葉殿、仰る通りです。克より、『そう言っておけ』と指示がありました」
    「やはり、そうでしたか。声色に、嘘が混じっていたように感じられたので」
    「本当は、『私見としては、神権政治だの『世界平定』構想だのが破綻した今、中央政府が央南までわざわざ威光を示す理由は無い。よって、お前らに央南を任せることにし、その案を大臣たちが納得するよう、一芝居を打ちたい。……ただし、腕の一本程度は覚悟してもらうが』とのことでした」
     玄蔵の返答を聞き、双葉は頬に手を当てつつ、首をかしげる。
    「……話の内容は理解できたつもりですが、その意図が分かりかねますね。どうして自ら、領土を狭めるようなことをなさるのか」
     双葉の問いに、玄蔵も首をひねるしかなかった。
    「拙者にも皆目、見当は付きません。しかしこれは、かなり有益な話です。
     乗らない手は無いでしょう」
    関連記事




    ブログランキング・にほんブログ村へ





    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 5;緑綺星
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    総もくじ 3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 5;緑綺星
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    もくじ  3kaku_s_L.png DETECTIVE WESTERN
    もくじ  3kaku_s_L.png 短編・掌編
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
    もくじ  3kaku_s_L.png 携帯待受
    もくじ  3kaku_s_L.png 今日の旅岡さん
    総もくじ  3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    • 【火紅狐・闘焔記 2】へ
    • 【火紅狐・闘焔記 4】へ

    ~ Comment ~

    管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    トラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【火紅狐・闘焔記 2】へ
    • 【火紅狐・闘焔記 4】へ