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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・大渉記 9

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    フォコの話、394話目。
    そして、正攻法すらも。

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    9.
     開会の時間となり、大火と閣僚ら、そしてバイエル大公とフォコが、卓に着いた。
    「御足労いただき、まことに痛み入ります」
     憔悴しきった顔でそう述べたランフィールド卿に対し、フォコと大公は、揃って頭を下げた。
    「いえいえ。では早速……」「その前に」
     それでも、ランフィールド卿は冷静に取り繕うとしているらしく、フォコに顔を向けてきた。
    「ゴールドマン総帥、……でお間違いないでしょうか?」
    「ええ」
    「何故あなたが、この場に現れたのか。それをお聞かせ願いたい」
     前中央政府の人間にとってフォコは、あの「黒い蓮」を率いた人間の一人である。露骨に大火との関係を疑われたものの、フォコはさらりと返した。
    「諸事情により、ちゅうことです。後で詳しく、説明させていただきますわ」
    「……今、説明していただきたい。
     あなたは今回の交渉にとって、まったく、無関係の人間だ。バイエル卿とは商業面、産業面での交流があるのでしょうが、我々との接点は、既に皆無のはずだ。
     それが何故、大陸一多忙なはずの、ゴールドマン総帥ともあろう方が、随行員として赴いたのか? 露骨に過ぎはしないか、卿よ!?」
    「露骨? はて? 何のことですやろ?」
     とぼけて見せたフォコに、ランフィールド卿は声を荒げてくる。
    「これが露骨、阿漕、あからさま、そう言わずに何と言うのだ!?
     大方、バイエル卿に入れ知恵をする形で、己の要求をいけしゃあしゃあと通そうとしている、そんなところだろう!?」
    「ま、大体はそんなところですな」
     今度はしれっと肯定され、さらにランフィールド卿は激昂した。
    「ふざけた男だ……! 我々は、君がこの席にいることを認めんぞ!」
    「それは何故です?」
     そう尋ねたフォコに、ランフィールド卿はバンバンと机を叩きながら、こう返した。
    「当たり前だ! この交渉は、我々中央政府と、央中名代との間で、今一度諸利権、条約、その他諸々、関係を明確化する場なのだ!
     名代ではない、単なる在野の人間が、ここにいていいわけが無かろう!?」
    「なるほど」
     猛るランフィールド卿に対し、フォコは依然、冷静に振る舞う。
    「仰ること、よお分かりました。では」
     フォコは立ち上がり――バイエル大公に手を差し伸べた。
    「バイエル卿、退室していただけます? 向こうの大臣さん、あなたがいるのんを認めへん、ちゅうてますから」
    「そうらしいなぁ。それじゃ卿、後はよろしく頼みます」
     そう言ってバイエル大公は、ひょいと席を立ってしまった。
    「……!?」
     思わずランフィールド卿は、大声を挙げる。
    「何をしている!? 私は、君に退席しろと言ったのだぞ!?」
    「言うてないですな。『央中名代以外は退席しろ』と、そう仰ったはずです」
    「だから、それは即ち君の……!」
    「ああ」
     フォコはニヤ、と笑い、平然とこう答えた。
    「言うてませんでしたな。今は僕が、央中名代です」
     その返答に、場は騒然となった。
    「……何?」
     唖然とするランフィールド卿に、フォコは悠然と椅子に座り直し、こう説明した。
    「数年前に起こった央中大恐慌の影響で、バイエル家はかなりの借金を抱えとりましてな。それこそ中央政府との、年間数千万クラムの取引程度ではどないもこないもならん程の額を。そんな状態ですし、現当主のカールさんも、借金返済で汲々としとったわけです。
     そこに僕が、とある交換条件を付けて、お金を融通してあげたんですわ」
    「条件? ……まっ、まさか!?」
    「お察しの通り、央中名代の権利ですわ。
     ついでに爵位も受け取りましてな、今ここにいるバイエル卿は、『単なる在野の人間』です」
    「ふ……」
     ランフィールド卿は再度、ダンと机をたたいた。
    「ふざけるな! そんな取引、我々が認めると思うのか!?」
    「あなたやないでしょ、名代変更を認める権限持ってはるのんは」
     そこでフォコは、大火に目をやる。
     大火もニヤ、と笑って返し、うなずいて見せた。
    「ああ。権限を持つのは、主権たる、俺だ。
     構わんぞ。どの道、そこの狐だか狸だか分からん男では、まともな話になるまい」
    「な……、ば、バカ、なっ……」
     築いてきた裏工作がすべて水泡に帰し、ランフィールド卿はその場に倒れ込んだ。
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