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    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・大渉記 10

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    フォコの話、395話目。
    フォコの禁手的秘策。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    10.
     すべての工作、下準備が無駄に終わったため、中央政府側は、ほとんど丸裸に近い形での交渉を強いられることになった。
    「だ、大丈夫ですか、閣下?」
    「これが大丈夫と、そう見えるのかね……」
    「すみません……」
     倒れたランフィールド卿を介抱するため、会議は一時、休止となった。
     その間に、ソファで横になっているランフィールド卿を中心にして、閣僚たちは対応をまとめ直していた。
    「正面からの交渉しか、残されていません。どうにか互いの要求の均衡点を探り、両者の利益を……」「それは当たり前のことだ。それ以上のことを、我々は何としてでも、成さねばならなかったと言うのに……」「……」
     落胆するランフィールド卿を前に、一同は黙り込んでしまう。
    「……おしまいだ。最早、央中は我々から離れてしまうだろう」

     卿が嘆いた通り、会議が再開して早々、フォコは強気の要求を出してきた。
    「央中側の要求ですけども、率直に言えば、全利権の譲渡ですな。
     まず、中央政府が所有していた、央中内の領地。央中商家、貴族の債権全額。央中各地、各都市の開発権。
     その他諸々、いわゆる『国家』の体面を保たせるため、中央が央中名代に貸与していたすべての権利、権限を、こちらに譲渡していただきたい。
     勿論、ただでとは言いません。要求をすべて呑んでいただければ、300億クラムを代わりに送らせていただくつもりです」
    「ず、図に乗るな……っ!」
     氷嚢を頭に当てたまま、ランフィールド卿は拒否の姿勢を取る。
    「よりにもよって、債権もだと!? 300億以上の大損を被るではないか!
     そんな要求は、絶対に呑めんぞ!」
    「そこのところ、主権さんはどないです?」
     問われた大火は、肩をすくめて見せた。
    「火紅、その案は流石に度を越した強欲だ。そこまで奪われれば、中央政府は財政難に陥る」
     大火はフラフラになったランフィールド卿に座るよう促し、代わりに交渉する。
    「300億ではなく、8倍強の2500億ではどうだ? その額であれば当座の運営資金、諸権利の金額としては、割に合うはずだ」
    「あはは……。タイカさん、それは無茶ですわ。2500も出せるわけないですやん」
     フォコは笑い飛ばし、提示し直す。
    「300億。それが呑めへん、と言うことであれば、我々はもう一度、中央に攻撃を仕掛けます」
    「ほう?」
     大火の応対に、官僚たちは虚を突かれていた。
    「え……?」
    「裏で全部決めてたんじゃないのか?」
    「なんで普通に交渉してるんだ?」
    「ポーズだろ、ポーズ」
    「しかし2500は妥当な線と言える……」
     それに構わず、大火はフォコの返答を尋ね返す。
    「攻撃、と来たか。だがしかし、中央攻略の手は限られている。前回と同じ手が、通用すると思うのか?」
    「そら、そうでしょうな。勿論、別方向から攻撃するつもりです。軍事面やなく、経済面で」
    「経済面?」
     フォコは自分を指差し、驚くべきことを告白してのけた。
    「前回、僕が中央政府に押し入った際、財務院の造幣局をこそっと訪問したんですわ。
     そこで『あるもの』のスペアと、その管理者の一人を買収したんです。ファスタ卿の失踪騒ぎとタイカさんのクーデターとで、ドタバタしとった時ですな。
     簡単に、持ち運べました」
     フォコは続いて、内ポケットからころん、とクラム金貨を出して見せた。
    「『あるもの』が何か、もうお分かりですな?」
    「……まさか……!?」
    「そう、そのまさか。中央が発行する通貨、クラムの原版です」
     この言葉に官僚たちは憤慨し、こぞってフォコを非難した。
    「何と言う男だ!」
    「巨万の富を盗むに等しい、下劣な行為だぞ!」
    「この盗人め!」
    「はいはい、何とでも好きに言うてもろてええですよ。なんなら主権さん自ら、この場で僕を斬り殺してもろてもええですしな。
     でも、今ここで僕が死ねば、ウチが発行したクラム通貨を市場に、ドバドバーっと出回らせるように指示しています。
     それがどんな意味を持つか、優秀な官僚の皆さんは勿論、お分かりですやろな?」
    「う……」

     フォコの言うような事態が発生すれば、クラム――即ち、中央政府の原動力、国家の血液とも言える「通貨」は、極端に力を失うこととなる。
     中央政府の造幣局が発行した本物のクラムであれ、金火狐財団が水増しした偽物のクラムであれ、それが市中に、大量に出回れば、クラムの価値は暴落する。
     そうなれば中央政府の国力は、まるで急性的に貧血、低血糖症を起こしたが如く、衰えることとなるのだ。



     この凶悪極まりない「攻撃」を示された中央政府に、交渉の余地は無かった。
     フォコは先程提示した条件を呑ませる代わりに、300億クラムの支払いと、自分が掠めたクラム原版を渡すことで、交渉を締結させた。

     ちなみに――その際に支払われた300億クラムが、果たして本物か、それとも偽物であるかは、造幣局の人間でも、判断が付けられなかったと言う。

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    この「秘策」、現実に日本において行おうとすれば、
    6京5000兆円ほど準備しないといけません。
    良い子は真似をしないように。
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