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    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・掲露記 2

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    フォコの話、398話目。
    怒りのルピア。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2.
     央北から退去後、フォコはすぐにネール家の本拠地、クラフトランドへ飛んだ。
    「大変だったな、フォコ君」
     労うルピアの顔には、悲嘆に暮れる様子が見て取れた。
    「あの、……ランドさんの行方は、まだ」
    「ああ。……だが、……母親の私が言ってはいけないことかも知れんが、……もう、見つからない気がするんだ」
    「そんな……」
     励まそうとするランニャに、ルピアは力なく手を振る。
    「私の勘がな、そう告げている。あいつは恐らく、既にこの世にはいない」
    「母さん……」
     それ以上、誰も言葉を発せず、場が静まりかえる。
     それを無理矢理に破ろうと、フォコが口を開いた。
    「あの、ちょっと、お話があるんです」
    「そう言ってたな。一体なんだ?」
    「タイカさんが、僕とルピアさんに、頼みたいことがあると」
    「……あいつが?」
     怪訝な顔を向けたルピアに、フォコは経緯を説明する。
    「……ふむ。……しかし」
     ルピアは表情を曇らせ、ぼそ、とつぶやく。
    「……ランドが消えてまもなく、あいつがクーデターを起こしたんだろ? ……限りなく怪しいじゃないか。
     ……会いたくないんだ。会えば、私はあいつを殴りつけるかも知れん」
    「それは、まあ、怪しいと言えば、確かに怪しいですけども。
     でもタイカさんの態度だと、『他に適任がいなかったから、やむなく自分が』と……」
    「自分でその適任を消してしまった詫び、と考えられなくはないだろう? ……私は今、自分でも嫌になるくらい、疑心暗鬼なんだ。
     もう頭の中がモヤモヤして、今にも爆発しそうなんだよ」
    「……せやったら、むしろ会うた方がええんやないですか? はっきりさせて、その後でブン殴りたくなった時は、殴ったったらええやないですか。僕も手伝います」
    「……そうだな。これ以上ウジウジ悩むより、マシか」
     フォコとルピアは、大火に連絡を取った。



     1時間後、大火はいつものように唐突に、フォコたちの前に現れた。
    「わざわざ時間を割いてくれたこと、誠に感謝する」
    「ああ。……話を聞く前に、カツミ君」
     ルピアは大火に詰め寄り、率直に尋ねた。
    「お前が、ランドを殺したのか?」
    「何故そうなる?」
     大火の反応は、予期していたものとは違っていた。
    「……お前はごまかさないし、嘘も付かない男だ。そう答えるなら、……違うんだな? 信じていいんだな?」
    「信じる信じないは、俺の決めることではない。決めることではないが、俺の方から言えることは、一つだ。
     俺はランドを、殺してなどいない」
    「……」
     ルピアは顔を伏せながら、すう、と深く息を吸い込み、震えるように吐き出し、続けてこう尋ねた。
    「……じゃあ、何をしたんだ? 何故あいつは、姿を消してしまったんだ?」
    「それも含めて」
     大火はすと、と椅子に座り、こう続けた。
    「3つの話を、しよう。
     俺が何をしたいのか。ランドは何故、消えなければならなかったのか。そして二人に、頼みたいことは、何か。
     この3つの、話だ」

     大火はまず、どう言うわけか、シロッコを呼ぶよう頼んできた。
    「え、えっと、僕に何か?」
    「話してもらいたいことがある。ランドのことだ」
    「ぅえ? ら、ランドの話、したいって?」
     ランドについて尋ねた途端、シロッコは落ち着きを無くした。
    「そうだ。シロッコ、お前は大嘘をついたな」
    「え、な、何のことかな?」
    「お前は、ランドを自分の息子だと説明したのだろうが、それが嘘だ」
    「なに?」
     それを聞いた途端、ルピアの顔色が変わった。
    「どう言うことだ?」
    「こいつはある女に、ランドを自分の息子として育てるよう、頼まれたのだ」
    「な、何でそれを? ……あ、いや、その」
     口を滑らせたシロッコに、ルピアは怒りに満ちた目を向けた。
    「……話せ。正直にだ」
    「……うん。
     その、南海だったかな、北方だったかな。えっと、どこで会ったかはちょっと覚えてないんだけど、えーと、ちょっと前のホコウ君みたいに、ほら、フードって言うのかな、そんなのを被った女の人がいてさ。
     その人から、『あなたにこの子供をお預けいたします。きちんと育てきっていただければ、謝礼は相応にお支払いいたします』って、なんかすごく丁寧に言われてさ、まあ、前金とか、その時お金に困ってたんで、その、もらって、その、ランドごと」
    「つまりお前は、何の縁もゆかりも無い子供を、自分の子供だと偽り、私に育てさせたわけか。私に全部、任せっきりにして」
     次の瞬間、ルピアの拳が、シロッコの顔面にめり込んでいた。
    「ぶぎゃ……っ」
    「この最低ヒモ野郎ッ! よくも30年以上、だましてくれたなーッ!」
    「ごっ、ごべ、ごべん、悪気ばっ、ながっだん……」
     鼻血を噴き出しながら頭を下げたシロッコに、ルピアは追い打ちをかける。
    「やかましいぃ! この! このっ! このおォッ!」
     5、6発ほど殴られたところで、シロッコは気絶してしまった。
    「ハァ、ハァ、……くそ」
    「……すまない。不和を起こすつもりは無かったのだが」
     傍観していた大火に、ルピアは手の甲に着いた血を拭いながら答える。
    「……まあ、いいさ。こいつのことはもう知ったこっちゃないが、ランドが私の息子であることには、変わりない。それについては、もっとしっかり、聞いておきたい。
     お前は知っているのか、ランドの出自を?」
    「大体は、な」
     大火はこくりと、うなずいて見せた。
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