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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・掲露記 6

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    フォコの話、402話目。
    悪魔も頼るアイデアマン。

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    6.
     自分をにらみつけるルピアに、大火は淡々と説明を返した。
    「今、あいつの封印を解き、世に戻せば、世界はあいつを求める。そうなれば世界征服を目論む難訓も動く。
     ランドを封印後、難訓があいつにかけた、いくつもの術式を解析したが、非常に難解にできている。解除は容易ではない。
     だが解除できない以上、ランドを解放するわけには行かない」
    「……それは、どれくらいかかる?」
    「恐らく、半世紀、いや、一世紀かかるかも知れん」
    「ふざけろ」
     ルピアは大火に詰め寄り、襟に手をかける。
    「50年、100年だと!? それじゃあ私はもう、一生息子に会えないってことか!? もう死んだものと思って諦めろと、そう言うのか!?」
    「……それに関しては、本当にすまないと思っている。だが、こればかりはどうしようもないのだ」
    「……ッ」
     ルピアは大火のコートに、ギリギリと爪音を立ててしがみついていたが、やがてそろそろと手を放した。
    「……何でだ。……何でこんなことに」
    「分かってくれ、などと愚かしいことは言わん。……俺とて同じ目に遭えば、同じように猛り、叫ぶだろう。
     だが、……今あいつを世に戻すことはできない。……できる限り、急ぐつもりではあるが」
    「……カツミ君」
     ルピアは大火に背を向け、ぼそ、とこう尋ねた。
    「じゃあ君は、できるだけ早く、ランドを解放しようと、してはくれているわけか」
    「そうだ」
    「それは何故だ? 君が言うには、ランドはそのナンクンって女の、……道具、なんだろ?」
    「あいつに罪は無い。罪を見出すとすれば、それはあいつに不要な役割を与えた難訓に、その責があるのだ。
     もっとも奴からしてみれば、そのために用意した道具なのだろうが」
     大火の言葉を受け、ルピアは黙り込んだ。
    「……」
    「もし、解除措置を急いでくれ、と言うことであれば」
     と、大火はさらに、言葉をつなげる。
    「俺に協力することを、強く勧める。
     俺でなければその解除は不可能であるし、ここで天狐が復活し、難訓が襲来するようなことがあれば、俺にも『まさか』の事態が起こり得る可能性は、少なくない」
    「『まさか』?」
    「俺とて、無条件に不死身と言うわけではない。重篤なダメージを受ければ倒れるし、西方で既に一度、そう言う目に遭っている」
    「なるほど。……お前に協力しなきゃ、どっちみちランドは助からないってわけか」
     ルピアはガリガリと自分の頭をかきむしり、続いて、深呼吸した。
    「はあ……。分かった、協力してやる。
     その代わり、できるだけ早く、解除してくれ。早くて50年としても、私が生きているうちには間に合わないだろうが、それでも、息子が囚われたままなんてのは、三度と経験したくないことだからな」
    「承知した」
     と、ここでフォコが再度、手を挙げた。
    「タイカさん。僕からも条件、出させていただきますで」
    「なんだ?」
    「央中の利権と自由を、っちゅうことで先の戦争を起こしたわけですけども、タイカさんが全部追い返したせいで、その話はうやむやになってしまってます。
     きっと将来、中央政府の閣僚やら官僚やらが、話をはっきりさせようとしてくるはずです。その時の交渉ですけども、僕らの側に有利になるよう、便宜を図ってもろてええですな?」
    「ああ。お前に有利になるような措置を執るよう、最大限努めよう」
    「どうもです。まあ、恐らく央北の情勢が安定してからの話になると思いますし、今は約束だけで。
     で、具体的に僕らは、何をすれば?」
    「2つだ。一つは、魔法陣修復に必要な資材の確保。もう一つは、その事実を隠蔽することだ」
    「隠蔽?」
    「封印の効力により、天狐の所在は難訓には知られていない。
     だが封印が破られる、または再封印のために大規模な土木工事が行われた、となれば、難訓はそれを察知し、天狐を狙ってくる。
     工事に必要な人員を確保し、かつ、工事が行われたと言う事実をどこにも漏らさない。この条件をクリアしてほしい」
    「なるほど。……ふむ」
     フォコは椅子から立ち上がり、あごに手を当てながら、居間の中を三、四周ほど回り、続いて大火にこう尋ねた。
    「聞いた感じでは、かなり大がかりな工事をせなあかんみたいですな」
    「ああ。少なくともお前の本拠、金火狐屋敷の3分の1程度の規模を必要とする。魔法陣と言うよりも神殿、祭祀殿と言った方が適格だろう」
    「時間の猶予は、どのくらいです?」
    「完全に解除し、天狐が動けるようになるまでには、早くても3年だろう。しかし俺の方が、なかなか時間が取れなくなる。3年でも間に合うかどうか」
    「中央政府の主権さんですからな。しかし金火狐屋敷の3分の1くらいの規模であれば、3年、いや、2年でも十分間に合います」
    「ほう……?」
    「カムフラージュに関しても、僕に考えがあります」

     フォコは央中全土を再開発する計画を立て、その一環としてフォルピア湖周辺、およびフォルピア島の開発を進める裏で、魔法陣を構成する祭祀殿の建築を行ってはどうか、と策を立てた。
     大火の要請を受けると同時に、中央侵攻以前から懸念していた、結婚後のランニャの里帰り――既存の街道でクラフトランドとゴールドコーストとを行き来すると、非常な長旅となってしまう問題を、同時に解消しようとしたのだ。
    「なーるほーどねー」
     この案を聞き、ランニャはピコピコと狼耳を揺らした。
    「すごいじゃないか、フォコ! それなら全部、片付いちゃうよ!」
    「せやろ? ……ちゅうわけでタイカさん」
     フォコは不敵な笑いを、大火に向けた。
    「工事の準備は進めときます。お任せあれ、っちゅうやつですわ」

    火紅狐・掲露記 終
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