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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・狐殿記 2

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    フォコの話、404話目。
    愛を誓って。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2.
     フォコ・ランニャ夫妻は別荘に籠り、大火とルピアが来るのを待った。
    「いい眺めだね」
    「せやね」
     既に日は落ち、屋内の明かりだけが、二人を照らしている。
     二人は窓辺に座り、湖を見下ろしていた。
    「ねえ、フォコ」
    「ん?」
    「母さんたちが来てから、地下の工事するんだよね?」
    「うん」
    「最初さ、50人はいるって言ってなかった? あたしたち4人で、間に合うのか?」
     不安げにそう尋ねたランニャに、フォコはにこっと笑いかけた。
    「神殿自体は、別荘作る前に補修してあるねん。『万が一崩れてしもたら、別荘もぺちゃっと行くし』ちゅうてな」
    「あ、そなんだ。じゃあ後は、魔法陣を直すだけ?」
    「そう言うことや」
     それを聞いて、ランニャはほっとした顔になる。
    「じゃ、結構後は楽ちんなんだ」
    「んー……、一つだけ、『気に留めておけ』って言われとることはあるんよ」
    「って言うと?」
    「ナンクンのことやって。『俺がこの地に向かったことで、探りを入れてくる可能性はある。防衛策は整えておくが、戦闘準備は怠るな』ちゅうてたわ」
    「そっか。……イヴォラ、連れて来なくて良かったな」
    「せやな」
     そこで会話が途切れ、二人は夜の湖に視線を向ける。
    「……」
    「……」
     この日は曇っており、二つの月はほとんど見えない。闇に沈んだ湖はただの、黒いうねりにしか見えなかった。
    「……ねえ、フォコ」
    「ん?」
    「あたしたちさ、幸せになれるのかな?」
    「ちゅうと?」
    「君は、ヒーローになった。きっとこれから、もっともっと、とんでもなく忙しい毎日がやってくる。あたしはそれを、支えてやれるのかなって」
    「……そやね。きっと忙しゅうなってくる。でもな」
     フォコはひょい、と立ち上がり、ランニャに手を差し伸べた。
    「家族は絶対、大事にする。でも、仕事はそらもう、どんどん大変になってくるやろし、そうなると君にもべったり、甘えてしまうやろけど、……ええかな?」
    「……ふふ、任せてよ。受け止めてあげる」
     ランニャはフォコの手を取り、立ち上がった。
    「忙しいやろけども、君との生活も、十二分に満喫するつもりやで。
     それを誓うつもりで、……ちょっと、踊ってみいひん?」
    「いいね。いかにも満喫してる感じだ」
     二人は手を取り合い、居間の中央に進んだ。
    「……まあ、踊りなんて分からへんけども、やけど」
    「大丈夫、あたしも分かんない」
    「なら、適当でええかな」
    「いいよ、それで」
     二人は軽くキスを交わし、それから――多少ぎこちなくはあったが――ダンスに興じた。

     少しして、大火がルピアを伴い、別荘にやってきた。
    「待たせ、……なかったか」
    「あはは、どもー」
     フォコとランニャは汗を拭きながら、大火に会釈した。
    「こちらの準備は整っている。まずこれは、魔法陣修復に用いるミスリル化金版だ。これには小規模の魔法陣が彫られている。これを不良箇所に貼り付け、修復する」
    「それと魔術攻撃を軽減できる、ミスリル化銀を塗布した防具だ。ナンクンか、その手下が来るかもってことだから、その対策だな」
    「了解です」
     三人が防具を纏う間に、大火は説明を続ける。
    「これから別荘の地下、神殿内に入るが、当然暗くなっている。
     そこで明かりになる魔法陣も、別途制作してある。頭に装着できるように作っているから、併せて装備してくれ」
    「分かりました」
    「あと、これは最大限、気を付けてほしいことだが――魔法陣の再構築中、俺は身動きできない。非常に精密な作業だから、な」
    「その間、襲われたら……」
    「最悪の結果に終わる。天狐は復活し、別荘ごと俺を殺しにかかってくる。お前らは巻き添えを食らい、全滅するだろう。
     さらにはその状況を察知した難訓が襲撃し、天狐はお前らの後を追うことになる」
    「難儀なもんだ」
     ルピアはふん、と鼻を鳴らした。
    「これだけ君が、娘のことを気にかけてるってのに。テンコちゃんは全然、省みてくれないわけか」
    「……ああ。難儀だ」
     大火もはあ、とため息を漏らした。
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