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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・狐殿記 3

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    フォコの話、405話目。
    天狐を祀る神殿。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
     準備を整え、フォコたちは密かに設けた、神殿へ続く隠し扉の前に進んだ。
    「では、今から向かうぞ」
    「はい」
     タイル張りにした壁の前に立ち、そのうちの数枚をカチャカチャと押す。
     最後に押したタイルがすっと壁に埋まり、その真下にあったタイルがまとめて傾き、道ができる。
    「凝った造りにしたなぁ」
    「隠し扉らしく、と思いましてな。
     ま、それに、ここに招待したお客さんがうっかり見つけてしまうようなことになると、色々問題になるでしょうしな。多少は見つけにくくしとかんと」
    「確かにその通りだ。どこから秘密が漏れるか分からんから、な」
     隠し扉の先に続く階段を下り、一行は神殿の地下一階に到着した。
    「埋めて二ヶ月とちょっと、くらいなのに。もうこんな、空気が濁っちゃうもんなんだな」
    「土中にもカビの胞子など、菌類は多い。埋めれば当然、満ちもする」
    「考えてみれば、そうですな。もうちょっと、換気を考えた方が良かったですかね?」
    「いや、構わん。どの道、今回の処置が終われば、あと数百年は入る必要が無い」
    「なるほど」
     さらに階段を二度下り、一行は長大な扉の前に到着した。
    「この扉、どうしても開けられへんかったんで、『とりあえず放っとき』って押し通して、手つかずにしといたところです」
    「開けられんように施術してある。無理に開ければ、腕や足の一、二本は犠牲になっただろう」
    「やっぱり。……で、この中に?」
    「そうだ」
     大火は二言、三言つぶやき、扉に触れた。
     すると工事中、ビクともしなかった扉は簡単に開き、中の様子を窺うことができた。
    「……うっわ。でかっ」
     部屋の中には、黒水晶の巨大な柱が立っていた。
     大火はその前に進み、魔術で光球を作る。
    「『ライトボール』」
     発生した数個の光球は四方へ散り、部屋の中を煌々と照らした。
    「……これが、テンコちゃんですか」
     明るくなったことで、黒水晶の内部も、いくらか透けて見える。
     その中心に、どこか央南人じみた顔と服装の、黒髪の少女が収められていた。
    「そうだ」
    「復活しつつある、と言っていたが、特に動き出しそうな様子も無いな」
    「今は意識が半ば目覚め、沈むのを繰り返している状態だ。うつらうつら夢を見ているような、と考えてくれれば、そう間違いではないだろう。
     幸い、今は眠りが深いらしい。今のうちに、修復を行う」
     大火は紐でまとめていた金属板を解き、それを抱えて、部屋の奥に消える。
     残された三人はそれぞれ、部屋の中を見渡した。
    「ここ……、カツミ君が一人で、作ったんだろうか?」
    「可能性は高い、……と言うより、それ以外には考えられへんでしょうな。タイカさんはここの存在を知られたくなかったみたいですし、となれば、一人でコツコツ……」
    「こんな形で娘を封印しておいて、その後誰かの手を借りて、……となれば、騒ぎにならんわけが無いからな。もっとも、手伝った人間の口を封じると言う手も、無くはないが」
    「南海の端っこの、あんまり拓けてない辺りの島とかだと、そう言うのんはあったらしいですけどな。
     とは言えタイカさんは、手を貸してくれた人を手にかけるようなタイプやないですよ」
    「そうだよな、そう言うタイプだ。……でも『悪魔』って言われてるしな、何だかそう言う、怖い想像をしてしまうんだよ」
    「考え過ぎでしょう、……多分。まあ、タイカさんですし、魔術でホイホイっと、造ったかも分かりませんで」
    「それなら、今回私たちを頼った理由が……」
    「急いで修復したい、と言うてましたしな。それが理由なんやないですかね? 魔術でとは言え、一人では相当時間がかかるでしょうし」
    「まあ、そうなるか」
     曇った表情を見せるルピアに、フォコは恐る恐る尋ねる。
    「まだルピアさん、タイカさんのこと、疑ってはるんですか?」
    「……そりゃ、そうだろ?」
     ルピアはくしゃ、と髪を撫でつけ、苛立たしげにつぶやいた。
    「そりゃさ、あいつが嘘を付かないってのは分かってるさ。それは分かってるんだが、本当のこともあいつは、言ってない。 違うか?」
    「まあ、理屈はそうですな。嘘は付かないが、本当のことも言わない。そう言う姿勢はタイカさん、少なからず執っとるとは思います」
    「それが、ムカつくんだ。あいつはまだ、ランドのことについて真実を隠している、そんな気がするんだよ。
     ……まったくさ、最近は自分自身が嫌になってばかりだ。どうしてもあいつを、疑わずにはいられないんだよ。あいつはちゃんと、真実を言ってくれてるはずなのにさ」
    「きっといつか、ほとぼりが冷めたら、隠しとることも言うてくれますよ」
    「ああ、いつかは言ってくれるだろうな。……その『いつか』がいつなのか、もっと言えば、私が生きてるうちなのかは、別だろ?」
    「……まあ、……そうですな」
     フォコはこれ以上ルピアに話しかけても、彼女の気は晴れないだろうと考え、黙ってその場を離れ、ランニャの方に寄ろうとした。
     と――フォコは扉の方から、かり……、と言う音を聞きつけた。
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