fc2ブログ

黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・尽火記 2

     ←火紅狐・尽火記 1 →火紅狐・尽火記 3
    フォコの話、411話目。
    勝ち過ぎた男の末路。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2.
     第11代金火狐総帥が決定され、屋敷の中は一時、その話題で持ちきりとなった。
    「やはり、と言うか、意外、と言うか」
    「せやなぁ。そら確かに、前総帥の孫なんは確かやろうけど……」
    「あの子自体は『狐』とは言え、あれの母親が『猫』やったんやろ? それで通ったっちゅうのんはなぁ」
    「ああ、どうにもモヤモヤするわ。なぁ?」
    「しゃあないやろ、それは。建前上、『血族の者であれば耳尾を問わない』って3世、自らが言うてたんやし」
    「3世もボケが来とったんちゃうやろか?
     大体、総帥に立候補でける人間を、『21歳から40歳までに限る』とか、『姻族は一切認めへん』とか、わざわざ口出して何やかや制限したくせに、孫娘やからって『耳や尻尾が違てもええ』なんて、おかしい話やで。どう考えてもひいきやって、ひいき」
    「いや、そうは言うけどもや、総帥かて投票権は1票分やろ?」
    「せや、あれは出るべくして出た結果やないか。総帥夫妻と各局長の一票ずつで全部なわけやし」
    「お前ら、よお考えてみいや。3世には自分の1票と嫁さんの1票、それから自分の息がかかっとる、局長3人の1票ずつがあるんやで?」
    「あー……、そうやったな。市長からして、あの子の母親の、『猫』やしな」
    「せやろ? そう考えたら、7分の5や。こんなもん、前もって決まっとるようなもんやないか。納得行くわけないやんか」
    「ちゅうてもや、お前。母親は、そら確かに『猫』やけども、父親の方は『狐』やろ? それも、前総帥のはとこなわけやし」
    「血で言えば4分の3やないか。それでごねとったら、他の投票された候補はどないやねん、っちゅう話になる。
     ベントはあの悪名高き9代目の孫やし、アキュラはむしろ、『向こうさん』の血が強いし」
    「……でもなあ、……うーん」



    「……みたいなこと、あちこちでよお聞くんです」
     そう伝えたトーナに、フォコは肩をすくめて見せた。
    「ま、しゃあないな。時代が変わる時っちゅうのんは、みんな混乱するもんや。私かて、総帥になった時は、君のお母さんやおばあちゃんのことで、色々いらんこと言われたしな」
    「そうなんですか……」
    「これからや、これから。総帥としてやることやっとれば、みんな文句なんて言わへんようになるよ。
     大丈夫や、トーナ。君はできる子や。なんたって、私の孫なんやから」
    「……はい。応援してくださいね、おじい様」
    「うん、うん」
     トーナはフォコにぺこりとお辞儀をし、部屋を出て行った。

     私室に残ったフォコは、窓の外に目をやった。
    (とうとう、総帥職も退いてしもたなぁ。……仕方ないことやけども)
     窓の外には、今は長女イヴォラの治める街、ゴールドコーストが広がっている。
     他の局、都市開発局と公安局にも、彼の子供が局長として勤めており、その点においてはまだ、フォコの権力は強いものと言えた。
     だがそれ故に――他ならぬ、その子供たちのせいで、フォコは総帥の座を退かざるを得なくなってしまったのだ。



     フォコの権力基盤を固めた央中再開発計画は、完了までに30年と言う、非常に長い期間を要した。
     しかしそれだけの価値はあり、この再開発により作られた都市と、それらをつなぐ街道や橋、港は央中全域を活性化させると共に、金火狐財団の商品やサービスを普及することに、大いに役立てられた。
     央中経済が潤った以上に、財団全体も大きく儲け、増長したのである。

     しかしその後、フォコただ一人のところに、あまりに利権や資産が集まったことを、他ならぬ彼の子供たち、そして妻の実家が疎んじ、また、妬んだのである。
     6人いた彼の子供たちのうち半数と、ネール家の若手・中堅らが共謀し、この利権と資産の半分以上を奪い、フォコが築き上げた各都市を牛耳った上に、既に形骸化していた央中名代職の権限を強引に割譲し、大義名分として掲げ、それぞれが王を僭称してしまったのだ。
     これにより央中経済は混乱し、急激な落ち込みを見せた。特に被害を受けたのはゴールドコーストを本拠とする各商会、そして金火狐財団だった。

     この混乱の元凶として、フォコはその槍玉に挙げられた。
     彼がもう少し若く、機転と勘、肉体が錆び付いていなければ、他の打開策もあったのかも知れないが――齢70を越え、老境を迎えた彼には、全責任を負って総帥を引退する以外の、効果的な収拾策を見出すことはできなかったのだ。



     フォコは深いため息をつき、窓を閉めた。
    (ルピアさんがいつか、言うてはったな。
     『7オブ7』、初めて一緒にやった時やったか――『勝てば勝つほど、進む道は危険に満ちる。そこで負ければ、悲惨な目に遭う』、……やったかな。
     言わはる通りやったな。私は、勝ち過ぎてしもたんやな。もう私に、復帰の目はあらへんやろう。この老狐は、もう二度とあの椅子に座ることは、無いやろうな)
     閉まった窓ガラスには、自分の老いた顔が映る。
    「……私ももう、長くはあらへんのやろなぁ」
     フォコはぽつりと、そんなことをつぶやいた。
    関連記事




    ブログランキング・にほんブログ村へ





    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 5;緑綺星
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    総もくじ 3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 5;緑綺星
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    もくじ  3kaku_s_L.png DETECTIVE WESTERN
    もくじ  3kaku_s_L.png 短編・掌編
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
    もくじ  3kaku_s_L.png 携帯待受
    もくじ  3kaku_s_L.png 今日の旅岡さん
    総もくじ  3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    • 【火紅狐・尽火記 1】へ
    • 【火紅狐・尽火記 3】へ

    ~ Comment ~

    管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    トラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【火紅狐・尽火記 1】へ
    • 【火紅狐・尽火記 3】へ