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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第7部

    火紅狐・尽火記 4

     ←火紅狐・尽火記 3 →火紅狐 目次(第7部;黒白戦争編 後編)
    フォコの話、最終回。
    終の棲家、満ち足りた老人。

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    4.
     ナラン島は第三次南海戦争の後、政治犯となった元ベール王国護国卿、セノク氏一家の軟禁場所になっていたが、彼らは20年ほど前に恩赦を受けており、既にこの島にはいない。
     現在のナラン島は、誰のものでもなかった。



    「な、な、来てみ? ここの蜜柑な、誰も手入れしてへんかった割に、甘いねん」
    「ホント?」
     島に自生していた蜜柑の木から実をもぎとり、二人は口に入れてみる。
    「……あ、ホントだ、甘い」
    「懐かしいなぁ、ホンマ」
     島を一通り見て回ったフォコは、しきりにランニャへ声をかけている。
    「な、海の方行って……」「ちょ、ちょ、ちょっと、君さ」
     ランニャは目を白黒させ、フォコを制止する。
    「落ち着きなよ、まったく。70越えたじーさんのクセしてさぁ」
    「……はは、ちょっとはしゃぎ過ぎてしもたかな。いや、懐かしくて懐かしくて……」
    「そうだよな、君にとっちゃ、第二の故郷だもんな。
     終(つい)の棲家にするには、いいところじゃないか」
    「せやろ? ……あー、と」
     フォコは表情を硬くし、ランニャに手招きした。
    「ちょと、来てほしいところがあるんやけど、ええかな?」
    「ん……?」

     フォコはランニャの手を取りながら、昔の話を切り出した。
    「僕が、……ええと、いつくらいやったかな……、そう、第二次央中再開発計画を終わらせて、ちょっと間が空いた頃に、タイカさんに頼んで、この島に来たことがあってん」
    「へえ?」
    「何でかっちゅうとな、この島やないとでけへんっちゅうか、この島以外にはふさわしくないものを、ここに作りたかったんよ」
    「って言うと?」
    「これやねん」
     フォコは島の西に広がっていた野原に立つ、二つの墓標の前で立ち止まった。
    「誰の……?」
    「おやっさん――クリオ・ジョーヌと、……それから、ティナのや」
    「ああ……、そうか。二人とも、遺体は無いんだよな」
    「せやけど、死んだんは事実や。どんな形ででも、弔ってやらなアカンやろと思てな」
     フォコは墓標の前に屈み込み、頭を下げた。
    「どこに作ろかと思っとったんやけども、やっぱり、ここやないとな、と。
     この島で僕は、おやっさんから色々教わったし、僕とティナが愛し合ったんも、この島でや。
     ここやないと、アカンかったんや」
    「……そうだよな」
     ランニャもフォコの横に、並んで屈み込んだ。
    「参り方は、央中天帝教のやり方でいいのかな?」
    「気持ちや、気持ち」
    「でいいか」
     二人は央中天帝教の儀礼に則り、手を合わせ、もう一度頭を下げた。
    「……最期まで、お世話になります」
    「よろしく、お願いします」

     お参りを済ませ、それから二人は、夕陽の沈む海を、静かに眺めていた。
    「僕の人生は」
     と、不意にフォコが口を開いた。
    「ん?」
    「ホンマ、波瀾万丈やったわ。
     御曹司と生まれて、両親が殺されて、南海で海賊やって、放浪して、と思ったら北方で大番頭になったんを皮切りに、大成功の連続。
     大変やったけど、いい人生やったわ。君みたいなええ人にも、巡り会えたんやし」
     それを聞いて、ランニャはケタケタと笑う。
    「そうだよな、君は二人も奥さんがいたんだもんな」
    「せやな、あはは……」
    「あははは……」
     ひとしきり笑った後、フォコはニヤ、と笑ってこう言った。
    「……あの世に逝ったら、君と、ティナと、三人で暮らせるわけやな」
    「おおっと」
     ランニャはちょん、とフォコの鼻をつまんだ。
    「ふがっ」
    「生きてるうちは、あたしが独占するからな」
    「へ、へひゃひぇ(せやねぇ)」
    「……ま、こっちでも、『向こう』でも、……よろしくな、フォコ」
     鼻から手を離されたフォコは、苦笑いを浮かべながら、こう返した。
    「うん、うん、よろしゅうな。
     ……ホンマに僕は、幸せ者や。どこへ行っても、愛する人と一緒なんやからな」
     そして――この一言は満面の笑顔と共に、言って見せた。

    「僕は結局、幸せに生きられたんやな」



    火紅狐・尽火記 終

    双月千年世界「火紅狐」 終

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    これにて、「火紅狐」終了となります。
    ご愛顧いただいた皆様、誠にありがとうございました。
    執筆中、非常に頭を悩ませ続けた本作ですが、
    終わってみるとやっぱり、しんみりしますね。

    あとがきは明後日から始めます。
    明日は第7部後編の目次を掲載予定。
    今回もインタビュー形式となります。
    お楽しみに。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    そして「蒼天剣」の時代に、「フォコ300歳、いまだ生存説」を唱えるトンデモ教授が現れたりするわけですね。

    労いの言葉、誠にありがとうございます。
    次回作もご期待ください。

    NoTitle 

    一足早く、お疲れ様をいわせていただきます(^^)

    面白かったであります。

    わたしだったら、どうするかなあ。

    屋敷に書置きを残して姿を消し、大火の手下たちに頼んで、「フォコ生存説」を双月世界中にばらまかせるかなあ(^^)
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