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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第2部

    白猫夢・起点抄 5

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    麒麟を巡る話、第55話。
    破落戸バー。

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    5.
     ロガン卿らが酒場を出て行ってすぐ、秋也はその店に飛び込んだ。
    「すまない、失礼するぜ!」
    「あ~……?」
     カウンターに突っ伏す寸前だった店主が、のろのろと顔を上げる。
    「なんだ、今日は客の多い日だなぁ~……?」
    「客って言うか、何ていうか、ええと、……まあ、いいや。
     おっちゃん、さっき仕事受けたよな?」
    「あ~……、受けたけども、それがどうしたぁ~……?」
    「オレ、その仕事に雇ってくれないか?」
    「はぁ~……?」
     頼み込んできた秋也の顔を見て、店主は黙り込んだ。
    「……」
    「な、頼むよ。ほら、なんだ、その、金に困って……」「ないよねぇ~……」
     店主は棚から新しい酒瓶を出し、栓を抜きながらこう返す。
    「お兄ちゃん、身なりが綺麗すぎるよぉ~……。金に困ってたら、そんな格好してないよぉ~……」
    「あ、じゃあ、その、この国の仕事に触れてみて、見聞をさ」「ないよねぇ~……」
     と、この方便も嘘だと看破される。
    「お兄ちゃん、どう見ても真っ当なタイプの人だよねぇ~……。そんな真面目くんがさぁ~……、わざわざこーんな裏通りの小汚い店に入ってさぁ~……、見聞深めたいなんて話、ないよぉ~……」
    「えーと、じゃあ、……えー」
    「帰った方がいいよぉ~……。今ならさぁ~……、そのかばんくらいで許してあげるからさぁ~……」
    「……なんだって?」
     秋也の問いに店主が答える代わりに、店のあちこちから小汚い兎獣人たちが数名、割れた酒瓶や短刀を手にして現れた。
    「君が悪いんだよぉ~……? こーんな店に、一人で入って来るなんてさぁ~……」
     店主はそう言うなり、空になっていた酒瓶を、秋也目がけて投げ付けてきた。
    「わ、っと!?」
     飛んできた酒瓶をすれすれでかわすと同時に、近くまで迫っていた兎獣人2人が短刀を腰だめに構え、秋也の胴を狙ってくる。
    「ひひひ、金だ金だぁ~!」
    「金が自分から飛び込んできやがった、へへへへ……!」
     が、秋也は肩にかけていたかばんをぐるんと振り回し、片方の兎獣人の顔に叩き付ける。
    「ふえっ!?」
    「だーれが……、こんなところでやられるかってんだ!」
     動きの止まった兎獣人の足を、秋也はぱしっと乾いた音を立てて蹴り払う。
    「おわあ!?」
     倒れこんだ兎獣人を飛び越し、もう一人の方にもかばんを叩き付け、続いて平手を胸に入れる。
    「ぬへっ!?」
     べちんと痛々しげな音と共に、兎獣人は床に倒れ込む。
     その間に、新たな兎獣人が3名、秋也に向かってくるが――。
    「うらあっ! ……て、あれ?」「こっちだよ、マヌケ」
     酒瓶を振り下ろした兎獣人のすぐ後ろに回った秋也は、相手の背中を平手で叩く。
    「ほ、ほあー!?」
     兎獣人は酒瓶を落とし、背中を押さえて悶絶する。
     一瞬のうちに倒れた仲間を見て唖然とする残り2人にも、秋也は左と右、それぞれの手で平手を食らわせ、吹っ飛ばした。
    「ふぎゃー!?」「いてえー!?」
     あっと言う間に5人が倒され、赤ら顔の店主も目を丸くする。
    「な、なんちゅう早業だぁ」
    「どうだ? もう他にはいないのか?」
    「……う、うーん。残念だけどもぉ、……いないんだよね」
     もごもごとつぶやきながら、店主はそろそろと屈み、カウンターの下に隠れようとしている。
     と、膝立ちになった辺りで突然、本物の兎のようにぴょんと飛び跳ねた。
    「……と思ったら来た! アルト来た! これで勝てる! やっちゃって、アルト!」
    「は?」
     いつの間にか入り口に立っていた赤毛の兎獣人が、怪訝な顔を向けてくる。
    「あれ、あんた……?」
     秋也が問いかけるのをさえぎり、店主がわめく。
    「そいつ、うちの奴らをボコボコにしちゃったんだよぉ! 目一杯ブッ飛ばしちゃってぇ~!」
    「つってもなぁ」
     アルトと呼ばれた兎獣人は、困った顔を秋也に向けてきた。
    「さっき一緒に楽しく露店メシ食った奴を殴るなんて、俺の性にゃ合わないぜ。あんただって殴られんの、嫌だろ?」
    「そりゃ、まあ」
     そう答えた秋也に、アルトは肩をすくめた。
    「それより飲むか? 店主はアホだけど仕事はちゃんとする奴だから、酒もうまいぜ」
    「ああ、そっちの方が断然いいよ」
     そう応答し、秋也とアルトは同時に笑った。
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    NoTitle 

    テキトーに見えて、結構やる男です。

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    さっきの兄ちゃん強よいんだv-392
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