fc2ブログ

黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第2部

    白猫夢・起点抄 6

     ←白猫夢・起点抄 5 →カウンタ素材;リムジン(ベース車:ホンダ・シビック)
    麒麟を巡る話、第56話。
    パスポーター・トッド。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    6.
    「大体、そりゃマスターが悪いんだよ。入ってきた客をいきなり襲う店があるかっつの」
     アルトの叱責に、店主はもごもごと弁解する。
    「いやさぁ、『人を見たら金袋と思え』ってさぁ~、じいちゃんから教わったからねぇ~」
    「捨てっちまえよ、そんな教え」
     二人のやり取りに、秋也は思わず噴き出す。
    「ぷ、くく……」
    「すまないな、本当。こいつ、礼儀と倫理観ってもんがアルコールで蒸発しちまってんだ。だから酔っぱらったまま店に立つし、一見の客をいきなり襲ったりもするし。
     ま、それに慣れさえすりゃ、タダみたいな値段で酒は飲み放題だし、話も色々融通してくれっから。残念ながらあえて美点を無理くり挙げるとすれば、そこだけになるんだけれっども」
    「ひっどいなぁ~」
    「否定できるもんならしてみろよ、まったく。こんな滅茶苦茶な店、世界中でここだけだっつーの」
     そう悪態をついたところで、アルトは話題を変える。
    「っと、それで……、えっと、シュウヤだっけ。
     何でまた、運び屋なんかやりたいんだ? 5対1で圧勝できるような実力があるんなら、他にいくらでも働く口なんかあるだろうに」
    「まあ、その、色々事情がさ」
    「その事情、聞かせてくんねえかな。どうしても教えたくないってんなら、そりゃ、無理には聞かないけどさ」
    「うーん……、信じてもらえるかどうか」
     そう前置きし、秋也は夢の中で白猫に会い、運び屋をやるよう指示されていたことを説明した。
    「……白猫、か。となるとそりゃ、『白猫の夢』ってことなのか?」
    「『白猫の夢』……。そっか、……そうなのかも知れない」



     夢の中に白い猫獣人が現れて預言を与え、この夢を見た者は幸せになれると言ううわさは、この双月暦6世紀頃には既に広く知られており、秋也もこのうわさは何度か耳にしていた。
     ちなみに彼の母、黄晴奈もこの夢を見た一人と言われている。



    「もしそれがマジで『白猫の夢』だってんなら、従わない手は無いだろ」
     そう言うとアルトは、店主にこう提案した。
    「マスター、こいつから運び屋やりたいって言ってんだから、やらせりゃいいだろ」
    「いや、でもさぁ~、西方人じゃないってのはちょっとねぇ~」
    「別に構やしないだろ、依頼人からしたら。仕事やるんなら、それが兎だろうが猫だろうが、問題ないわけだし。
     ま、それにさ。こいつを雇うんなら、俺も一緒に行ってやるぜ?」
     そう言ってアルトは、パチ、とウインクを店主に送る。
    「……あ、え、ホントに?」
     アルトの言葉に、店主は顔をほころばせて見せる。
    「いやいやいや、あんたが来てくれるならそりゃもう、どんな条件だって呑んじゃうよぉ~!
     よし決めた、シュウヤくん、君採用! よろしくちゃん!」
    「なんだよ、よろしくちゃんって……。
     まあいい、とりあえずそう言うことになった。改めて自己紹介させてもらうぜ。
     俺の名前はアルト・トッドレール。何でも屋だ」
    「何でも屋?」
     そう尋ねた秋也に、店主が代わりに答える。
    「西方じゃあ、彼を知らない人なんていないよぉ~。
     パン屋から煉瓦焼き、博打の代打ちから用心棒、果ては弁護士、魔術師まで一通りこなしてみせる、まさに天才!
     彼に頼んだ仕事がこれまで失敗に終わったことなんて、一回も無いんだよぉ~」
    「そりゃ言い過ぎさ、俺だって多少はしくじったりもする」
     そう前置きしつつも、アルトは続いてこう言ってのけた。
    「つっても、ここ数年はヘマやった覚えは無いけれっどもな。俺と一緒にいれば、怖いもんなしだぜ?
     ま、そう言うわけだ。よろしく頼むぜ、シュウヤ」
    「ああ。よろしく、アルト」
     秋也とアルトは酒の入ったグラスを交わし、乾杯した。



     この、西方に来てすぐ就いた、何と言うことの無さそうに感じた仕事が、大変な冒険の起点になるとは――のんきな秋也に、分かるはずも無かった。

    白猫夢・起点抄 終
    関連記事




    ブログランキング・にほんブログ村へ





    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 5;緑綺星
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    総もくじ 3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 5;緑綺星
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    もくじ  3kaku_s_L.png DETECTIVE WESTERN
    もくじ  3kaku_s_L.png 短編・掌編
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
    もくじ  3kaku_s_L.png 携帯待受
    もくじ  3kaku_s_L.png 今日の旅岡さん
    総もくじ  3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    • 【白猫夢・起点抄 5】へ
    • 【カウンタ素材;リムジン(ベース車:ホンダ・シビック)】へ

    ~ Comment ~

    NoTitle 

    「蒼天剣」だと、第3部で出てくる話ですね。

    NoTitle 

    白猫夢ってすでに出てたのねv-283

    NoTitle 

    秋也君はまだ、事の重要性と危険性が分かってない、と言うかピンと来てません。
    のんきなヤツです。



    ちょっと修正しました。

    NoTitle 

    国境線を突破して、戦略物資を秘密裏に輸送するという仕事、わたしにはとても「何と言うことの無さそうな」とは形容できないです(^^;)

    しかも囮まで使って、どこからどうみても大ヤバな仕事であります(^^;)
    管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    トラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【白猫夢・起点抄 5】へ
    • 【カウンタ素材;リムジン(ベース車:ホンダ・シビック)】へ