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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第2部

    白猫夢・離国抄 3

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    麒麟を巡る話、第72話。
    悪魔参謀の襲撃。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    3.
    「なっ……!?」
     ロガン卿は娘を居間に残し、慌てて玄関へと向かう。
     堅く施錠したはずの玄関には、大穴が空いていた。
    「何をするのだ、クサーラ卿!?」
     多数の兵士を背にしたアロイスが、破壊された玄関から入ってくる。
    「事実確認を行うぞ、ロガン少将」
    「事実? 一体何の話だ?」
     とぼけては見せたが、ロガン卿の内心は凍りそうなほど、恐怖で冷え切っていた。
    「お前は熊に襲われて気絶したためフィッボを見失ったと、そう言ったな?」
    「……そうだ」
    「だが不可解な点が2つある。
     冬眠前の、餌を探し回っているであろう熊に襲われながら、何故お前は生きているのだ? 餌として巣に運ばれていないのは、何故だ?」
    「野獣の考えなぞ知らん。壮年の身であるし、美味そうには見えなかったのだろう」
    「そして熊に襲われ、傷を負ったとお前はそう言っていたが、四足で歩いているはずの熊に襲われたにしては、傷口には土や泥の類が付いていなかった。
     そもそも周囲には、熊が通ったであろう形跡は何も無かった。爪痕も、毛も、足跡すらも無い。さらにはお前を襲い、付着したであろうはずの血も無かった。そこに熊がいたと言う形跡は、何一つ存在しなかったのだ。
     まさかお前は、翼を生やした熊にでも襲われたとでも言うまいな?」
    「そ、れは……」
     答えに詰まるロガン卿に、アロイスはさらに詰め寄る。
    「真相を話すのだ、ロガン少将。お前の説明では、状況の整合性が付かない。
     答えろ。お前は何を仕組んだ? フィッボはどこにいる? 何が狙いだ?」
    「くっ……」
     ロガン卿は弁解を諦め、屋敷の中に引き返そうとした。
     だが――。
    「答えろ、と言っているのだ!」
     ガキン、と硬いバネが弾かれたような音を立て、突如、アロイスが跳躍する。
    「う、おっ、……おおおっ!?」
     まるで砲撃でも受けたかのように、ロガン卿の眼前に大穴が空く。
     その大穴からアロイスが、床板がバキバキと音を立てて割れる音を立てながら這い上がってくる。
    「次は貴様を狙う。死にたくなければ答えるのだ」
    「……どの道、私を生かしておく気は無かろう!?」
     ロガン卿は腰に佩いていた剣を抜き、アロイスに斬りかかった。
    「せやあああッ!」
     勢いよく振り下ろされた剣が、アロイスの頭頂部に叩き付けられる。
     だが剣はぽっきりと、叩き付けた部分から折れてしまった。
    「なっ、……馬鹿な!?」
    「死にたいようだな、ロガン少将。ならば望み通り……!」
     アロイスは体勢を低く取り、ロガン卿に襲い掛かってきた。

     と、その時――。
    「閣下あああああッ!」
     ぎち……、と音を立て、アロイスの頭部に槍がめり込んだ。
    「グ、ガ、カッ……!?」
     アロイスは飛んできた槍の勢いを抑え切れず、穴の中に転がり落ちる。
     だがすぐに体勢を整え――るつもりだったのだろう。穴から這い出たところで、アロイスのはいていた具足から、ガキンとバネの弾ける音が響く。
     どうやら、玄関や床を破壊した時と同じ技を仕掛けたものの、槍に邪魔されて発動のタイミングがずれ、今になって発動したらしい。
    「シマッ、……アアアァァ~ッ!」
     金気走ったようなアロイスの声が、空遠くへ伸びていく。
     アロイスは、今度は屋敷の二階部分を吹き飛ばして、どこかへすっ飛んで行った。
    「はあっ、はあっ、……閣下! ご無事でございますか!」
     どこからか、野太い男の声が飛んでくる。
    「サンデル! お前か!?」
    「おお、閣下! 良かった、間に合いましたか!」
     武装したサンデルが、屋敷の中に飛び込んで来た。
    「助かった、礼を言うぞ!」
    「ありがたき幸せ! ……と、話している場合ではないですぞ! 既に屋敷は取り囲まれております!」
     サンデルが息せき切ってそう伝えたものの、外にいた兵士たちは、揃って困った顔を並べている。
     どうやら兵士たちはアロイスが無理矢理に引っ張ってきたらしく、ロガン卿らに襲いかかるようなことはしてこない。
    「……諸君!」
     それを察知したロガン卿が、屋敷の外に出てこう叫んだ。
    「私は諸君らに詫びねばならん! 私は、陛下の亡命を手配したのだ!」
    「……!?」
     これを聞いて、兵士たちは一様に目を丸くする。
    「だがこれだけは誓おう! 陛下の、そして私の本意はあの悪魔、アロイス・クサーラ卿の討伐にあるのだ!
     諸君、そのままそこで静観していてくれんか!? 私も今、国を抜ける! 陛下をお助けするためにだ!」
    「……」
     兵士たちは、今度はきょろ、と辺りを見回す。
     そしてどうやら、動かなければならない理由――即ち、自分たちを大恩あるロガン卿にけしかけさせたアロイスの姿が無いことを確認したらしく、全員が無言でうなずいた。
    「感謝する!」
     ロガン卿は屋敷内に引き返し、ぐったりしているノヴァを抱きかかえる。
    「お前も連れて行く! じっとしていろ!」
    「はっ、はい」
     ロガン父娘は屋敷の外に出る。
     と、待機していたサンデルが敬礼し、こう申し出た。
    「吾輩もお供いたします!」
    「……感謝するぞ、サンデル」
     三人は直立不動し、敬礼した兵士たちを横目に、屋敷から逃げ去った。
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    NoTitle 

    危ないところでしたw

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    危機一髪やわv-405
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