fc2ブログ

黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第2部

    白猫夢・黒宰抄 7

     ←白猫夢・黒宰抄 6 →白猫夢 目次(第2部;秋也、西方南部奔走編 前編)
    麒麟を巡る話、第98話。
    自分はどこに?

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    7.
     パーティも終わり、秋也はベルと共に、リスト寄宿舎への帰路を歩いていた。
    「人気者だったねー、シュウヤくん」
    「参ったよ、マジで」
     暦は既に12月に入っており、街にはうっすらと靄(もや)がかかっている。
    「はー」
     ベルがマフラー越しに、ふーっと息を吐く。
    「今日はすごく寒いよね。息、真っ白」
    「だなぁ。……ぷっ、ふふ」
    「どしたの?」
    「耳」
     ベルの猫耳は寒さのためか、耳当てを付けていてもなお、プルプルと震えている。ベルは顔を赤くして、両耳を手でぽふっと押さえる。
    「ああん、もお! ……シュウヤくんだってプルプルじゃない」
    「へへ……」
     同じ猫獣人だからか、二人は妙に馬が合った。
    「そう言やさ、ベルちゃん」
    「ん?」
    「親父さん、すごく偉くて賢いのに、なんで寄宿舎に?」
    「どう言う意味?」
    「いや、ベルちゃんもそう言う方に進まないのかなって」
    「あー」
     ベルは肩をすくめ、こう返す。
    「あたし、目以外はママ似だから。
     大臣やれるほど頭良くないし、それに魔力高かったのと運動神経いいのと、目がすごくいいから、士官候補ってことでリストさんのところに行ってるの」
    「そうなんだ。……目以外って?」
    「ママ、目が悪いのよ。若い時に病気したんだって。
     でも魔力はすごく高くて、昔は魔術兵だったらしいわ。どこかの将軍だったみたいなことも言ってたけど、それは多分ウソかも。
     リストさんだって将軍級になったの30代の時なのに、ママの話が本当だと、10代終わりくらいで将軍やってたことになるもん。流石にウソだよ、そんなの」
    「ふーん……?」
    「ねえ、シュウヤくん。あたしばっかり話してて、ちょっと疲れちゃった。君の話、してくれない?」
     そう問われ、秋也は考え込む。
    「えー、……と。そうだなぁ、じゃあ、オレの母さんの」「じゃなくて」
     ベルはぎゅっと、秋也の手を握る。
    「君の、お話」
    「ぅえ? えー、えーと、うーん」
    「例えばさ、夢とかある?」
     ベルに助け船を出され、秋也はぽつぽつと答える。
    「一応、ある。母さんみたいなすごい剣士になりたいなって」
    「お母さん、ねぇ」
     ベルはビシ、と秋也の鼻に指を置く。
    「君、もしかしてマザコンさん?」
    「ふぇ?」
    「お母さんの話ばっかりじゃない。そんなんじゃ君、一生お母さんの影に悩むことになるんじゃない?」
    「……それは、……確かに」
     秋也の脳裏に、焔流の免許皆伝試験で見た、若い頃の晴奈の姿が浮かぶ。
    (ベルちゃんの言う通りだよな。オレの人生、何かにつけて母さんが関わってくる)
    「ねえ、シュウヤくん。君、しばらくこっちにいるんだよね?」
     ベルにそう確認され、秋也はうなずく。
    「ああ。1ヶ月か、2ヶ月くらいは」
    「もっと居といた方がいいんじゃないかなって、あたし思うんだけど」
    「え?」
    「気分の切り替えよ、切り替え! ここにお母さんはいないんだし、シュウヤくんは『英雄セイナの息子』じゃなくて『シュウヤくん』として、自分づくりしてみたらどう?
     なんなら、半年くらいさ」
    「いや、そんなに長居したら流石にチェスターさんも……」
    「別にいいと思うわよ。大抵部屋、空いてるし。あたしからお願いしてみる」
    「え、いや、でも君にそんなの頼むなんて」
    「じゃ、明日二人で頼みに行こ? ね、決定!」
    「えー……」
     そしてベルはにこっと笑い、こう続けた。
    「だってあたし、シュウヤくんともっともっと仲良くなりたいし」
    「えっ?」
    「あ、もう着いちゃった」
     ベルはたた……、と駆け出し、秋也に手を振る。
    「あー寒かった! 早く入ろ、シュウヤくん!」
    「おっ、おう」
     秋也は慌てて、ベルに付いて行った。



     その夜――。
    《や、シュウヤ。久しぶり》
     あの白猫の夢を、秋也は見た。
    「またアンタか……。今度は何の用だ?」
    《なに、簡単なコトさ。第二段階終了ってコトを、キミに確認させたくってね》
    「第二段階だと? まだ何かやれって言うのか?」
    《ああ。皇帝亡命事件でキミは、とても大きな信用を得た。その国の、実質上の最高権力者からもね。
     ソレが一番、重要だったんだ》
    「最高権力者……? ハーミットさんのコトか?」
    《そう、ソレだ。彼に悠々と近付ける。ソレが最も重要だったんだ。キミは良くやったよ》
    「ハーミットさんと仲良くなれ、ってコトか?」
     と、そう尋ねた途端、白猫の顔に険が浮かぶ。
    《ダレがそんなコトしろって言った?》
    「えっ?」
    《違うよ、まるで違う! そうじゃない! そんなコトされてたまるもんか!
     ボクが頼みたいのはだよ、シュウヤ》
     白猫は表情を変える。
     それは悪辣そのものの、残酷じみたものを感じさせる笑みだった。
    《殺してほしいのさ、彼を》

    白猫夢・黒宰抄 終

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    これにて「白猫夢」第2部が終了しました。

    この物語では色んな人の化けの皮がはがれてくる、「嫌」な感じが始終、付きまといます。
    ただ、いい人は結局いい人ですし、胡散臭い人は結局信用ならない。
    その辺りはブレてないはずですし、最後までその方向性は続ける予定。

    人を信じる、というのは非常に良いことではありますが、やはり無条件に信用するようでは危うい。
    自分自身の頭と感覚で、その人を信じていいのか、悪いのか、判断することが大切だと思います。



    なんて説教臭くなってきたところで、今後について。
    とりあえずの小休憩として、9月30日まで連載はお休みです。

    次回、第3部は10月1日から開始予定。
    その間、余力があればドット絵とか短編とか制作する予定です。
    カウンタ素材の制作や交換小説などのリクエストがあれば、多少はお答えしやすいかも知れません。



    次回、第3部はいよいよ秋也編のラスト。
    果たして秋也は母親の影を踏むことなく、「自立」できるのか。
    乞うご期待。
    関連記事


    ブログランキング・にほんブログ村へ





    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 5;緑綺星
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    総もくじ 3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 5;緑綺星
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    もくじ  3kaku_s_L.png DETECTIVE WESTERN
    もくじ  3kaku_s_L.png 短編・掌編
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
    もくじ  3kaku_s_L.png 携帯待受
    もくじ  3kaku_s_L.png 今日の旅岡さん
    総もくじ  3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    • 【白猫夢・黒宰抄 6】へ
    • 【白猫夢 目次(第2部;秋也、西方南部奔走編 前編)】へ

    ~ Comment ~

    管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    トラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【白猫夢・黒宰抄 6】へ
    • 【白猫夢 目次(第2部;秋也、西方南部奔走編 前編)】へ