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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第3部

    白猫夢・曇春抄 2

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    麒麟を巡る話、第100話。
    秋也の家庭事情。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2.
    「へっくしゅん!」
     一方――王国首都、シルバーレイク市街地。
    「風邪引いた?」
    「ああ、いや、なんかムズっと来ただけ」
     秋也はベルと共に、街へ遊びに出ていた。
    「うわさでもされたかな」
    「うわさ?」
    「オレの故郷じゃ、誰かがうわさしてると、そのうわさされたヤツがくしゃみするって言われてるんだ」
    「へぇー」
     他愛もない話を交わしながら、二人は街を歩いている。この3ヶ月の間、秋也はそんな風に、どこかぼんやりと、そして平和に過ごしていた。
     リスト寄宿舎で訓練がある時は精力的に参加し、無ければ寄宿舎の訓練生たちと遊ぶか、ハーミット邸でフィッボやハーミット卿を相手に囲碁を打ちに行くか、もしくはハーミット邸から離れ、居を移したロガン卿父娘とサンデルのところへ機嫌を伺うか――一言で括れば、極めてのんきな生活を送っていた。
    「オレの故郷って言えば、今くらいだともう春っぽくなってくる頃なんだよな」
    「そなの?」
    「央南は四季が1年の間でほとんど均等、3ヶ月ずつくらいに分かれてる感じなんだよ。大体12月から2月くらいが冬で」
    「いいなぁー。こっち、9月の終わりから4月に入るくらいまで、すっごく寒いもん」
    「あー、だから防寒グッズが一杯あるんだな」
     秋也はチラ、と店に並ぶ商品に目を向ける。そこにはマフラーや手袋、兎獣人用の耳袋、尾袋が整然と並んでいるのが見えた。
    「でも、ほとんど『兎』用だな」
    「そーそー、『猫』用ってあんまりないんだよね。だからこれ、自分で作ってるの」
     そう言ってベルは、自分の耳当てを指差す。
    「へぇ……、可愛いな」
    「でしょ? お気に入りなんだ」
     屈託なく微笑むベルに、秋也も笑顔になる。
    「ああ、似合ってるな」
    「うふふっ。……シュウヤくんのは、なんかボロだね」
     言われて秋也は、自分のマフラーを手に取る。
    「……確かに、結構使い込んでんなぁ」
    「もしかして、お母さんに編んでもらったの?」
    「いや……、母さんはあんまりそう言うの、得意じゃなくって。コレは母さんの友達の、橘って人にもらったんだ」
    「へぇー」
    「その橘さんと母さんと、母さんの師匠――オレにとっては大先生になるんだけど――はずっと昔から仲が良くて、今でも色々連絡したり、一緒にお茶したりしてるんだ。
     もしかしたらその橘さんとこの子と、オレの兄貴が結婚するかもって話もあるんだ、実は」
    「そうなんだ。あれ、って言うかシュウヤくん、お兄さんいたの?」
     目を丸くするベルに、秋也は詳しく答える。
    「ああ、春司って言って、オレと双子なんだ。でもオレとは違って父さん似で、今は政治家秘書みたいなのを、父さんのところでやってる。どっちとも、もう何年も会ってないな」
    「何年も?」
    「父さん、メチャクチャ忙しい人だから。ほとんど家では見たコト無いんだ。兄貴もここ5年か6年くらい、顔見てない」
    「うちのパパみたいだね。他には兄弟、いるの?」
    「ああ、後は月乃って妹が一人。でもこいつとも、あんまり仲良くないんだ」
    「……変なこと聞いちゃった?」
     しょんぼりした顔になったベルに、秋也はぶんぶんと首を横に振る。
    「い、いや、そんなコトないって」
    「あ、だからなんだ」
     と、ベルは急に表情を明るく変える。
    「シュウヤくんの話、お母さんのことばっかりなのって、だからなんだね」
    「え?」
    「お父さんともお兄さんとも、妹さんとも仲良くないから、……だからなのかなって」
    「……そうかもな。言われてみれば、そうだよな」
     今度は秋也の方が気落ちする。それを察したらしく、ベルがぎゅっと、秋也の手を握り締めてきた。
    「あ、じゃあさ、じゃあさ。あたしのこと、妹みたいに思っていいよ?」
    「ぅへ?」
     妙な声がのどから漏れ、またベルは笑い出す。
    「あはは……、変な声」
    「はは、……は」
     秋也は照れくさくなり、慌ててベルから手を放す。
    「そんな風に言われるの、悪くないな」
    「変な声が?」
    「違う違う、妹みたいに、ってヤツ。ホントの妹とすげー仲悪いから、なんか、そんな風に言ってくれるヤツがいると、すごくうれしいなって」
     はにかむ秋也に、ベルはいたずらっぽい笑顔を向けた。
    「じゃ、お兄ちゃん。かわいい妹に、さ。何か美味しいもの、おごって?」
    「ははは……、仕方ねーなー」
     秋也は自分の顔が勝手に緩んでいくのを感じながら、周りに出店や喫茶店などが無いか見渡した。

    「……っ!」
     そして秋也は視界の端に、顔の大部分をマフラーと帽子とで覆い隠した兎獣人らしき背丈の男が、こちらをじっと見ているのを捉えた。
     それは紛れもなく、皇帝亡命事件の首謀者――「パスポーター(何でも屋)」アルト・トッドレールその人だった。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    100話到達。

    今作「白猫夢」は、特に狙ったわけでもないのに、
    1部あたり50話くらいでいつも収まっています。
    この第3部にしても、現時点では全60話になってますし。

    このペースで考えると、終わりが大体500話くらいになるんじゃないかなーと。
    今のところは全くまとまってないですが。

    これからもよろしくお願いします。
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