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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第3部

    白猫夢・曇春抄 6

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    麒麟を巡る話、第104話。
    プレゼンテーションの意義。

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    6.
    「あはは……」
     ハーミット夫妻の様子を秋也から伝え聞いたベルは、ころころと笑って返した。
    「何だかんだでパパ、心配してるんだね」
    「まあ、そりゃそうだろ。屋敷に残るって言った時も、いい顔してなかったし」
    「そだね。でもあんまり、話とかできないから。君がお兄さんとかお父さんとあんまり会えないって言ってた、そんな感じみたいに」
    「あー、そっか。だよな、オレも卿と会ったの、去年の暮れから今までで5回か6回くらいかだし」
     指折り数える秋也を見て、ベルはクスッと笑う。
    「ねえ、もしかしてシュウヤくんって」
    「え?」
    「考えたり計算したりするの、苦手?」
    「ああ、実を言うとあんまり。なんで?」
    「それ」
     ベルは半分開いた秋也の手に、自分の手を乗せる。
    「あ、うん、……だよな、こんなのコドモだよな」
    「結構多いよ? マーニュ大尉も囲碁教えてもらってた時、顔真っ赤にして数えてた」
    「う、うーん……。あの人とソコで比較されてもなぁ」
    「あたしは好きだけどな。そーゆーコドモっぽいの」
     ベルは秋也の手を握ったまま、ニコニコ笑っている。
    「子供の時からさ、パパ関係で大臣さんとか将軍さんとか、アタマいいけどしかめっ面ばっかりしてる人たちに会ってるから、そーゆー人苦手なんだ、あたし。
     それよりもすっきり、さっぱりした分かりやすい人の方がいいし、あたしもそーゆー風に将来なれたらなって思って。だから自分から、リスト司令の寄宿舎に入りたいって、パパたちにお願いしたの」
    「そうなんだ」
    「銃を撃つのも性に合ってたし、体動かすのも好きだし。このまま士官になれたらなって。
     ……ねえ、シュウヤくんは将来、何になりたいの?」
    「オレ? オレは……」
     秋也は腰に佩いている刀をトンと叩き、こう返す。
    「剣士になりたいなって思ってる。でもなぁ……」
    「でも?」
    「この国でもそうだけど、今じゃ戦争って言ったら銃を使うもんだろ? 剣士になっても、その先仕事口も活躍の場も無くなって、どうしようもなくなるんじゃないかって思うと、どうしても何て言うか、二の足踏んじゃうって言うか」
    「ふーん……」
     ベルは一瞬、困った顔を見せたが、すぐにころっと表情を変える。
    「ねえ、知ってる? この国、今シュウヤくんが言ってた通り、戦争にいっぱい銃を使ってるけど、そうなったのってどのくらい前の話だと思う?」
    「え? んー、銃が本格的に使われたのって、確か日上戦争辺りからだって聞いたから……、20年くらい前かな」
    「はずれー」
     ベルはにこっと笑って、答えを述べた。
    「正解は7、8年前くらいから。チェスター司令が招聘(しょうへい)された2、3年後からなんだよ」
    「8年前? じゃあ、帝国と戦争し始めた辺りじゃ、まだ使ってなかったってコトか?」
    「そーゆーこと。
     司令が王国の将軍として招かれた時、実は銃の有用性ってあんまり、この国の人はピンと来てなかったらしいの。接近戦なら剣や槍を、遠くを攻撃するなら弓や魔術を使えばいいんじゃ、って感じで。
     でも司令は『剣も魔術も相当の訓練を積まなきゃ軍用レベルに達しないけど、銃ならその5分の1、10分の1程度の訓練期間で、同等の効果を発揮できる』って説得して、採用させたの。
     この国の兵士が銃を持つようになったのは、司令の説得があったからなんだよ?」
    「そうだったのか……」
    「だからさ、シュウヤくん」
     ベルは秋也から手を放して軽く上半身を屈ませ、上目遣いになってこう続けた。
    「価値や効果があっても、それを知らなきゃただの金属の筒だけど、『使える』って主張して、実際に証拠を見せてくれた人がいたから、あたしたちは銃を使うようになったんだよ。
     それと同じで、シュウヤくんが『自分の剣には価値がある』って主張して、その証拠を見せれば、きっと誰かが認めてくれると、あたしは思う。
     主張もしないで、証拠も見せないうちから『使えない』って自分勝手に諦めちゃうの、良くないと思うんだ」
    「……そうだな」
    「あたしは応援するよ。シュウヤくんがすっごい剣士になって、大活躍できるように」
    「ありがとう、ベルちゃん」
     秋也は顔が赤くなるのを感じつつ、ベルに礼を言った。

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    拍手総数が5,000を超えていることを本日、確認しました。
    まさに、「皆様からのご声援」そのもの。
    これほどまでに応援していただき、感謝の極みです。
    今後ともよろしく、お願いいたします。

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    2017.10.02 修正
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