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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第3部

    白猫夢・賊襲抄 6

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    麒麟を巡る話、第112話。
    奪還準備。

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    6.
    「ひどい……!」
     アルトの話に、ベルは蔑んだ目を向ける。
     しかしアルトに、まったく意に介した様子は無い。
    「ひどくて結構。これは子供の道徳授業じゃねえんだ。ど汚い戦争なんだよ。ゼェ、しかもとんでもない利益が絡んでる。
     手ぇ汚すんなら、それくらいは見合うもんがなきゃな」
    「利益って何? お金?」
    「それもある。今度の計画でハーミット卿を撃ち落とせば、これまで経済封鎖でがんじがらめになってた帝国は、その枷から解放される。ゼェ、そうなりゃ10年前みたいに、希少金属の輸出がバンバンできるようになる。売るもんは腐るほど、いや、錆びるほどある。金はたんまり手に入るだろうな。
     だが利益ってのはそれだけじゃない。今のプラティノアールはハーミット卿にべったり依存してると言っても過言じゃない。ゼェ、そこでハーミット卿がガタガタになれば、国は一気に混乱する。そこで皇帝になった俺が、総攻撃を仕掛けて攻め落とすのさ。幻の三国統一、実現させちまえるんだよ。
     権力も金も、国も手に入るんだ。そりゃあ、やるしかないってわけさ」



    「なるほど……、私の不在と、それを喧伝した卿の外交策。確かにこの局面で彼が皇帝に成りすませば、西方の世論は逆転するだろうな。
     しかし、依然として私には荒唐無稽な策としか思えない。アロイスがそんな話に乗るとは、到底思えない」
    「確かにその問題はあります。前例もありませんしね」
    「うん?」
    「いや、なんでも。……しかし、万が一これが成功した場合、我が国は1ヶ月以内に大きく傾くこととなるでしょうね。
     私の命も、あらゆる意味で絶たれるでしょう。それも、もっとも屈辱的な方法で」
    「と言うと?」
     ハーミット卿は首を大きく横に振り、こう答えた。
    「何故、私の娘がさらわれたか? その答えであり、皇帝に取って代わると言う荒唐無稽な作戦の成功要因の、3つ目でもあります。
     トッドレール氏は私に自ら、『皇帝の所在や亡命政府発足はすべて嘘だ』と言わせるつもりなのでしょう。娘の身柄と引き換えにね」
    「汚ねえ……!」
    「卑劣なことを……!」
     フィッボだけでなく、閣僚らも司令たちも、秋也も憤る。
    「確かに卿がそう公言してしまえば、王国の信頼は一挙に損なわれる。西方諸国が一丸となって取り組んできた経済制裁や条約、条項も、すべて破棄されるだろうな。
     それだけの条件が付けば、あのアロイスでもうなずくかも知れん」
    「ええ。故に王国は今、非常に危険な状態にあります。いや、王国だけではない。陛下の御身も、我々の首も。
     そして何より、娘の命もです。仮に彼の要求通りに行動したとして、娘が無事に返ってくる保証はありません。……それを踏まえ冷徹な判断をするならば、娘ごと機関車を襲撃、爆破すれば話は早いのかも知れませんが」
    「そんな……!」
     蒼ざめる秋也に、ハーミット卿も蒼い顔を返す。
    「勿論、そんなことはできない。いくら僕が王国の全責任を負う立場にあるからと言って、そんな非人道的なことはできない。いや、したくない。
     しかし――このままでは王国の破滅です。それを阻止するために採れる策は、2つです。1つは今言ったように、娘を見殺しにして亡命政府発足の声明を先んじて発表し、帝国に牽制をかけるか。
     そしてもう1つは、全力を以てトッドレール氏を追跡し暗殺した後、娘を奪還するか、です」
    「……」
     悲痛な面持ちの卿を前に、一同は静まり返る。
     その沈黙を破ったのは、秋也だった。
    「……オレが助けに行きます」
    「……」
     ところが、この答えに卿は首を横に振った。
    「君は駄目だ」
    「何故です!?」
    「君には疑惑がある。そのためここまで同行してもらった」
     そんな言葉をぶつけられ、秋也は面食らう。
    「疑惑? 疑惑って、一体なんですか?」
    「僕が邸内でトッドレール氏に襲われた際、彼は僕への攻撃を防いだ君に対し、『何やってんだ、シュウヤ!?』と言っていた。この言葉はおかしい。
     何故ならその言葉は、『あらかじめ決められていた筋書きと違う行動をとった人間に対して』かけるようなニュアンスにとれるからだ」
     いつの間にか兵士が2人、秋也の背後に佇んでおり、この瞬間、秋也の両脇をがっしりとつかんで拘束してきた。
    「なっ……!?」
    「そして襲撃のタイミングも、偶然にしてはあまりにも良過ぎる。亡命政府発足案がまとまり、これから声明を出そうと言うこの時期を狙ったかのように、彼らはやって来た。
     僕は話した覚えはないけど、僕の家をしきりに訪ねていた君だ。隙を見て僕の書斎を盗み見るなり何なりして、計画を察知できたんじゃないか?
     そこからこの疑惑が浮かぶ――君はトッドレール氏の一味で、これまでスパイとして潜り込んでいたんじゃないか? とね」

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    これが当ブログ、1,500番目の記事。
    本当に長く続けてるな、と思います。

    こないだ長々と語ったので、今日はこれだけ。
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    秋也はアホですが、ただの向こう見ずでも、知力が劣っているわけでもありません。
    抑える時はキッチリ抑え、やる時はバッチリやる奴です。

     

    何度でもいうけど、はやまるなシュウヤくん! はやまったら敵の思う壺だぞ!
    • #1437 ポール・ブリッツ 
    • URL 
    • 2012.10/16 17:05 
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