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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 3;白猫夢」
    白猫夢 第7部

    白猫夢・密襲抄 5

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    麒麟を巡る話、第339話。
    真夜中の密かな襲撃。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    5.
     紆余曲折を経たものの、どうにか研究所が完成したため、ルナたちはその新研究所で、祝賀会を催した。
    「それではあたしたちチームの本拠地となる、この研究所の完成を祝して……、乾杯!」
    「かんぱーい!」
     人形であるパラを除く3人はグラスをあおり、一息に酒を飲み干す。
    「しかし、見違えたね。半分腐った牛小屋が、こんな綺麗になるなんて」
    「ええ、本当にね。これでようやく、研究が始められるわね」
    「一応今も継続してます。旧研究室で。明日からは僕の持ってた旧チームも合流させます」
     マークが報告するが、二人は聞いていない。
    「ところでルナさん」
    「なに?」
    「事後報告になっちゃうんだけど、パラを借りてもいい?」
    「事後? デキてたの、あんたたち?」
    「違うっ」
     フィオは顔を赤くしつつ、話を続ける。
    「鍛錬の相手にってことだよ。ルナさんたちが物件探してた間も、僕たち二人で稽古してたんだ」
    「ああ、そう言うこと。いいわよ、別に」
     ルナは二つ返事で、それを承諾した。
    「アンタも強くなってもらわなきゃ、これからが心配だしね」
    「ご理解いただけて助かるよ、リーダー」
    そう返したフィオに、マークが目を丸くした。
    「リーダー?」
    「だろ?」
    「……うん」
     反論したい気持ちは大きかったが、一方で貫禄負けしていることも、心のどこかで認めている。
     マークは素直にうなずくしかなかった。
    「……まあ、その。これだけははっきりさせておきたい。
     リーダー、つまり所長の座は僕よりルナさんが適任であるのは認めるとして、チームの主任研究員は僕だからね。そこだけは絶対譲らないよ」
    「分かってるよ、勿論。君抜きじゃ研究が進められるわけ無い」
    「そう言うことよ。アンタの存在価値は誰も否定してないわ。あたしも頼りにしてるわよ、主任」
    「ええ、そりゃもう、ね!」
     マークは勢いに任せ、グラスをあおった。



     その晩――。
     結局、マークはそのまま酔いつぶれ、ルナの家で寝てしまっていた。
    「……ん、ん」
     と、不意に眠りから覚める。
    (しまった……、家に帰りそびれちゃったよ。父上たちが心配してるだろうな)
     慌てて床から起き上がりかけて、自分の体にシーツがかけられていることに気付く。
    (あれ……。誰だろ? フィオじゃないよな。ルナさんも考え辛いし、まあ、パラさんか)
     マークは周囲を見回し、パラの姿を探すが――。
    「……?」
     部屋の中には、誰もいない。出来たてのフローリングには、空になった酒瓶とグラス、そして皿からこぼれたおつまみが、点々と転がっているだけだ。
    「変だな」
     不思議に思ったマークはふらふらと立ち上がり、辺りを探してみた。
    (研究室は、鍵がかかってる。休憩室にもお風呂にもいない。時間が時間だし、寝室かな?)
     しかし寝室にも、人がいるような気配は無い。
    (どこだろう……?)
     屋内すべての部屋を回ったが、どこにもルナたちの姿は無かった。
     と――玄関の方から、物音が聞こえてくる。
    (え……? 今のって、叫び声、みたいな)
     マークは恐る恐る玄関に近付き、そっとドアを開けた。

    「……!」
     マークは約一ヶ月ぶりに、修羅場を目にした。
    (ひっ……)
     ルナとフィオ、そしてパラの3人が、黒ずくめの者たちに囲まれていた。しかし既に、同様の装備を身に付けた者たちが4名、地面に倒れている。
    「さっさと来なさいよ。夜は案外、短いわよ?」
    「くそ……ッ」
     黒ずくめたちは小銃を構えてはいるが、発砲して来ない。ルナたちの、いや、ルナ一人の殺気に圧されているのだ。
     夜空にうっすらと浮かぶ赤い月も、ルナの周りに漂う雰囲気を、さらに冷たくあおり立てる舞台照明と化している。
     あまりにも恐ろしげなその光景に、動けるような者は、彼女をおいて誰もいなかった。
    「来ないの? じゃあこっちから行くわよ」
     そう言い放った次の瞬間、彼女の正面に立っていた男が突然、倒れた。
    「ぐふっ……」
     続いてその右隣の者も、弾かれたように横へ跳んでいく。
    「がはっ」
    「うっ、うわ、う」
     その隣にいた者が、叫びきらないうちに事切れる。
    「これで7人。残りは5人。どうするの、アンタたち?」
    「う……ぬ……」
     戦い慣れていないマークの目にも、彼らの戦意が削がれ、逃げ腰になっているのがありありと分かった。
    「こ、ここで引き下がれるか! ここで逃げても、どっちみち……」
     しかし1人がそう叫び、ルナへ向かって駆け出す。
     だが――それもルナの手によって、あっさり返り討ちにされた。
    「げぼっ……」
     瞬く間に敵を斬り伏せたルナは、残った4人にこう告げた。
    「今あたしの手で死ぬか、本拠地に戻って死ぬか、それとも雲隠れして人生をそれなりに謳歌してから、のんびり死ぬか。好きなの選びなさい。あたしはどれでも構わないわよ」
    「……」
     残った4人は顔を見合わせ――小銃を捨て、そのまま逃げ去った。

     それを確認した途端、マークは慌ててドアを閉め、キッチンへと駆け込み、シーツを頭からがば、と覆い被せて狸寝入りし――一睡もできないまま、朝を迎えた。
     どうやらルナたち3人もそれなりに疲れていたらしく、彼女らも朝までキッチンに入ってくることは無かった。
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