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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第4部

    緑綺星・聖怨譚 2

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    シュウの話、第131話。
    勢力図激変の予兆。

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    2.
     流石に8世紀最大のフィクサーとうわさされるだけあり、天狐は十重二十重の戦略・作戦によってラコッカ石油の、難民特区における地位と権力を固めさせていた。前述の、天狐にまつわるうわさを流し、盗みを働こうとするならず者たちを殺さず追い払っていたことも、その一環だった。特区内のならず者を退けると共に余計な争いを避けさせ、後に行うことを予定している特区内での求人活動に支障が出る可能性を減らすためである。
    「でなきゃ操業もままならねーからな。現状の人員だけじゃ絶対回らねーし」
    「だよなー……」
     数日前までボロボロに垢じみたTシャツに身を包んでいたロロは、今はさっぱりしたスーツ姿を装っていた。「組織のトップ、会社の顔に汚ねーツラされてたまるかよ」とする天狐の指導によるものである。
    「何だかんだ言って、俺んとこにいるのは半分が子供だからなぁ。資材運びやら何やらの力仕事は流石にさせらんねえし」
    「そんでも大人はほぼ全員がやるっつってくれたからな。オレの予想じゃ、せいぜい5人か6人くらいかと思ってたんだが、案外協力的で助かったぜ」
    「ありがてえ話だよ。半ば俺とあんたのワガママみたいな話に付き合ってくれるんだからよ。……いや、もちろんこの計画がすごく大事なことだ、世界的大事業だってのは、ちゃんと理解してるつもりだ。操業しだしたら間違いなく、世界経済ってやつに影響を及ぼすだろうし」
    「ソレどころじゃねーさ」
     天狐は自分が土産に持って来ていたブラウニーをほおばりながら、机の上に広げていた地図をフォークで指し示す。
    「この石油、そして石油製品が近隣地域に安定供給できるようになれば、今現在の央北西地域の勢力図は激変するだろう。
     現状じゃ『新央北』、つまりトラス王国を中心とした経済共同体が央北西地域全域に展開されてるが、『新央北』加盟国は事実上の王国の属国、しもべ扱いだからな。王国に開発援助とかのカネ出せ、国債の償還待ってくれって言われたら、加盟国は渋々従わなきゃならねー。近年じゃその横暴がひどくなってきてて、加盟国は不満たらたらって話だ。
     その従属の最大の理由が、防衛能力の事実上の委任――つまり白猫党の脅威を防ぐ役目をトラス王国に一任せざるを得ない状態になってるコトにあるワケだ。言い換えればソレだけ王国の軍事力が『新央北』内で飛び抜けてるってコトだが、その軍事力の源ってのはなんだか分かるか?」
    「うん? うーん……そりゃ兵隊の数とか、装備の強さとか」
     ロロの回答に、天狐は「ソコだよ」と返す。
    「その装備の充実こそが、王国ご自慢の重工業の賜物(たまもの)だ。逆に言や、王国が『新央北』圏内の重工業のシェアを独占しちまってるから、他の加盟国内で重工業発展の余地がなくなっちまったんだ。となりゃ当然、どの加盟国も自前じゃまともな軍事力が保てない。よそから装備を買って整えようにも、王国からは相当ふっかけられるし採算が合わねー。かと言って加盟国外からとなれば、王国が黙っちゃいない。王国に頼る以外の選択肢を軒並み奪われ、そうして出来上がったのが王国一強体制ってワケさ」
    「うへ、アコギなもんだなぁ」
     呆れた声を上げたロロに、天狐は深くうなずいた。
    「ところがよりによってこの特区に――『新央北』に隣接し、かつ、王国の指図を受けない地域に――石油産業を軸とする重工業が興ったら? 王国唯一のアドバンテージである軍事力の源を、加盟国全域に供給できるとなったらどうなる?」
    「……! おい、それって!?」
    「お察しの通りってヤツさ。長いコト骨抜きにされてた加盟国も、ちゃんとした軍隊を構えて自立できるようになる。そうなりゃもう、軍事力をタテにして専横を続けてきた王国に追従する理由がなくなる。アドバンテージを失った借金まみれの王国は、完全に立場をなくしちまうコトになる。
     トラス王国はお山の大将、『新央北』宗主国の立場から一転、時代遅れのカスに転落するんだ」
    「……」
     険のある表情で、吐き捨てるように語った天狐を神妙な顔で眺めていたロロが、おずおずと手を挙げた。
    「テンコちゃん……あんたどうして、そこまで王国を憎んでる? あんたからは『何が何でも王国を滅ぼしてやる』って言わんばかりの殺気を感じるぜ」
    「だろーな。そう思ってるからだ」
     天狐はブラウニーを一息に飲み込み、話し始めた。
    「トラス王家はオレ……いや、オレの姉に、とんでもねー無礼を働きやがったからだ。王国の滅亡を決意させるほどの、な」
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