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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第4部

    緑綺星・聖怨譚 6

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    シュウの話、第135話。
    戴冠異議申し立て。

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    6.
     カレン崩御からまもなく――国家元首不在では何かと不都合であるから、当然の流れであるとも言えるが――王室政府は大慌てでメルキンの即位に向けての支度を整えた。そのため崩御から3日後にはすべての準備が整い、謁見の間にて戴冠式が行われることとなった。
     場面はいよいよメルキンが戴冠する直前となり、テレビ局をはじめとする各種メディアが見守る中、玉座の前にかしずくメルキンの頭に、マクファーソン首相の手で王冠が載せられるかと言うところで――。
    「その戴冠、異議申し立てるぜッ!」
     怒りに満ちた形相の一聖が、フェリスを伴ってその場に現れた。
    「……っ」
     王冠を抱えたままの首相が、顔をこわばらせつつも、鷹揚な口ぶりで一聖に応じた。
    「異議申し立てですと? 今更何を仰られますやら。王族全員の承認を得て、正式に決定された事項ですぞ」
    「承認してねー王族が少なくとも一人、ココにいるぞ」
     そう返し、一聖は傍らのフェリスを指し示す。
    「そしてカレンの子供と孫も、おそらくは承認してねーはずだ。どうなんだ? はっきり言ってみろよ。メディアの皆さんの前で、な!」
    「え……ええ、もちろん。全員からご承諾、委任いただいておりますとも」
     そう答えた首相に、一聖が畳み掛ける。
    「そーかよ。ソレじゃ聞くがよ、今、カールはドコにいるんだ? カレンの長子で、ココにいるフェリスの父親のカールのコトだぜ」
    「むろん、存じておりますとも、ええ、はい。心労で倒れられまして、今は病院でご療養中です」
    「じゃ、奥さんのヴェーラは?」
    「同じくご療養中です」
    「カールの弟のイブリンも? その奥さんと子供も? 全員療養中だってのか? 同じ日同じ時間に同じ場所で同じ症状を起こして同時に倒れたって言うんじゃねーよな、まさか?」
    「それは……」
    「オレの方からはっきり言ってやろーか?」
     一聖はカメラに視線を移し、大声で喝破した。
    「全員、カレンが亡くなったその日に、その病院に閉じ込められて監禁されてんだよ。今もだよな?」
     ざわ、と場がざわめき、何人かが謁見の間から飛び出す。
    「急いで向かって、しっかり確認してきてくれ。もし元気いっぱいで病気もケガもしてなさそーな兵士がウヨウヨいるよーなら、大々的に報じてくれよ」
    「……」
     黙り込んだままの首相に、一聖が詰め寄る。
    「お前さんの企みは全部バレてんだよ。カレン崩御に乗じて、彼女のトコに集まってきた子供と孫たちを一網打尽、外に連絡できねーように監禁し、その一方で『狼』血統の中から前もって結託してたメルキンを推挙。『狼』血統でメルキンより優先順位が上のヤツらはどいつもこいつも今、会社経営やら政治活動やらで忙しくしてる。前もって継ぐコトが打診されてたってんなら身辺整理して応じるコトもできただろーが、『猫』が継ぐだろーと思ってるトコに何の打ち合わせもなく『今すぐ決めろ』って言われりゃ、王族の中で唯一ヒマ人だったメルキンに委任せざるを得ない。
     後は他のめんどくせートコから異議申し立てされる前に急いで戴冠式を済ませちまえば、お前さんの傀儡となったメルキン王の出来上がりってワケだ、な」
    「……私欲からの行動ではない」
     首相は怒色満面の表情で、一聖をにらみつけた。
    「トラス王家は代々、『狼』血統の長子が継いできたのだ。その伝統を軽んじ、ないがしろにすることは今までの歴史、王家としての誇りを踏みにじるような、恥ずべき行為だ。むしろうわべだけの合理観や先進意識を振りかざし、この国の伝統を破壊した貴様こそ、私利私欲でこの国を操ろうとする国敵ではないか!」
    「ほーぉ」
     一聖は斜に構え、首相をにらみつけた。
    「ソレじゃ聞くがよ、カレンが女王になってからの約40年、トラス王国は発展したのか? ソレとも衰退したのか? 少なくとも数字は雄弁に、前者だって物語ってるぜ。人口は2倍に増え、経済成長率は平均4%台、最大で12%以上のプラス。世界のトップ企業ベスト10のうち2つに、王国国籍の企業がランクインしてる。財政もこの四半世紀、黒字が続いてる。コレだけの結果が出てて、お前さんはオレの進言がトラス王国に貢献しなかったって言うのか?」
    「詭弁だ! トラス国民の努力の成果と貴様の方便には、何の関係も無い!」
    「だったら伝統だなんだって話も関係ないだろ。国民の努力だってんだから、な。どちらにせよ」
     謁見の間に、兵士と警官数名が連れ立ってやって来る。
    「お前さんが王族監禁の主犯である事実は変わらねー。コレ以上言いたいコトがあるなら、警察の方でじっくり聞いてもらえ」
     こうして事件は解決したかに思えたが――事態は、これで収束しなかった。
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