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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第4部

    緑綺星・聖怨譚 7

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    シュウの話、第136話。
    襲撃される一聖。

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    7.
     まだ騒然としている王宮内で、一聖は思案に暮れていた。
    (妙なのは、なんで首相ともあろう人間がこんな暴挙に出たのか、だ)
     王宮をそれとなく歩き回り、情報収集していく内に、監禁の際に軍や警察と言った王国内の武装勢力に、動いた形跡がなかったこと――即ち、マクファーソン首相が差し向けた兵士が王国の正規軍ではなかったことが明らかになった。
    (ってコトは、病院を包囲したのはマクファーソンの私兵、あるいは外部から引き込んだ傭兵ってコトになるな。
     気味が悪りいな。なんだって王国の上流階級、やんごとないご身分の人間が、そんな物騒なヤツらを囲い込んでたんだ? ふつーはむしろ、清廉潔白を装うために遠ざけるだろ? なのにわざわざ危険人物と思われるリスクを抱えてまでそんな輩と手を組んでたってコトは、今回の計画が成功し、自分の行動に正当性が認められる公算が高いと踏んでたのか? だが結果はこうだ。計画は露見し、首謀者のアイツは逮捕された。オレが見る限り、成功する要素はねーぞ。
     大体、オレがフェリスを連れて逃げたコト自体、病院を占拠した時点で分かってただろーに。……ん?)
     ある可能性に気付き、一聖は足を止める。
    (ソレは逆に言や、フェリスに逃げられたコトを把握していたにもかかわらず、計画を進めたってコトだな? もちろん、既に兵隊動かしちまって後に引けねーって状況だったってコトもあるだろうが、あの状況から逃げたってんなら、オレが関わってるコトは見当も付いてただろう。
     となりゃ、こうしてオレが出張って計画をメチャクチャにするコトだって、予想が付いてたはずだ。そんなら大急ぎで兵隊引き上げさせて、『気が動転した』とか何とか言い訳してごまかした方が得策だろ――ソレでごまかせるかどーかは置いといて――ともかく、オレが出張るコトが分かっててなお、計画を進めたってのは愚策もいいトコだ。
     ソレともマクファーソンには、オレが出てきてもうまくいく算段があったのか?)
     そこまで考えて、一聖はふと足を止め、窓の外に目を向けた。

     その瞬間――窓ガラスにびしっ、とひびが入り、一聖の額に弾丸がめり込んだ。
    「うぐっ!?」
     とは言え、「魔法使い」の彼女である。弾丸が当たった瞬間に防御魔術が作動し、皮膚の薄皮一枚が削れた程度で弾丸が止まる。それでも衝撃はいなし切れず、一聖は首を大きくのけぞらせ、その場に倒れ込んだ。
    (なるほど……そーゆーコトかよ)
     倒れてすぐ、ぴょんと足を上げ、その場で立ち上がる。
    (つまりオレを仕留めよーってつもりか。そりゃそーだよな、計画止めようってなったら、オレがココに来なきゃならねーもんな。言い換えりゃ、ココにオレが絶対に現れるように仕向けたってコトだ。待ち構えて襲撃するにゃ、絶好の機会ってワケだ)
     瞬時に相手の狙いを読んだ一聖は、床に落ちた弾丸に魔術をかける。
    「『ウロボロスポール:リバース』」
     弾丸が浮き上がって一聖の頭があった位置まで戻り、そのまま窓ガラスのひびを抜けて、元来た方向へと飛んで行く。
    (こんなコトもあろーかとってヤツだな。モールのヤツから聞いといて良かったぜ)
     一聖も窓ガラスをブチ破り、空中へと飛び出す。
    「『エアリアル』」
     飛翔術で弾丸を追いかけ、やがて王宮正面にある高層ビルの屋上に、都市迷彩服の人影を見つける。
    (なるほど……てめーかッ!)
     たった10秒前にヘッドショットを成功させたはずの相手が空を飛んで迫ってきたのだから、当然と言えるが――たじろいでいる狙撃手に、一聖は空中から魔術を仕掛ける。
    「『ネットバインド』!」
     狙撃手の体をしゅるる……、と魔術で作られた紐が這い回り、がんじがらめにする。
    「うわっ……」
     当然、狙撃手は身動きできず、その場に倒れる。
    「よぉ、ごくろーさん」
     狙撃手の側に降り立ち、一聖は相手の体に足を乗せ、ぐりぐりと踏みにじる。
    「よくもやってくれたな。誰の差金だ?」
    「……」
    「答えろよ。グダグダ尋問なんかさせんじゃねーぞ」
    「……」
    「口が利けねーワケじゃねーよな? さっき『うわっ』っつってたし。答えたくねーってんなら答えさせるまでだぜ」
     足を離し、一聖は自分の身長の1.2倍ほどもある相手の体を持ち上げた。
    「なっ……」
    「やっぱしゃべれんじゃねーか。ほれ、何か言えよ」
    「い、言えない」
    「二度も言わせんなよ? こっちはのんびりオハナシしてられるほど、気が長くねーんだよ。答えねーってんなら」
     一聖は相手の体を両肩に乗せる形で背負い上げ、ビルの端に顔を向けた。
    「あそこから飛び降りる」
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