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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第4部

    緑綺星・聖怨譚 10

     ←緑綺星・聖怨譚 9 →緑綺星番外編 その1
    シュウの話、第139話。
    対王国、次の一手。

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    10.
    「じゃあ結局、カズセちゃんはトラスには戻らなかったのか?」
     ブラウニーをつつきながら尋ねたロロに、天狐は渋い顔をしながらうなずいた。
    「実はな、戦争のドサクサでメルキンが死んだ後、こっそり様子見に戻ったコトがあるんだ。だが一聖がソコで見たのは、『全部一聖ちゃんのせいだ』って泣き叫ぶ、喪服姿のフェリスだったんだ」
    「どう言うことだ?」
    「狼猫戦争はどっちの陣営にも甚大な被害をもたらした。大将格の王族も含めてな。その王族の、猫陣営の方の一人が、フェリスの父親で第一継承候補者だった、カール・トラスだったんだよ」
    「そりゃ……まあ……そう言われてもとは思うけども、……だがそもそもの原因はカズセちゃんじゃないだろ」
    「大人の意見としてはそうだろーな。けども、『もしも一聖が病院で兵隊追い払ってたら』とか、『もしも一聖がメルキンの挑発無視して猫陣営に就いてたら』とか、『もしも』を重ねられたら、ソレは確かに話が違ってたかも知れねーし、反論のしようはねーな。
     とにかく――結局、一聖はトラスに戻る気をなくした。いや、マトモに俗世間に関わる気自体をなくしちまったらしい。さっきの話をオレに聞かせた直後から去年、フラッとオレんトコに戻ってくるまでの約80年間、行方知れずになってたってワケさ」
    「80年!? ……改めて思うが、やっぱ普通の人間じゃねえんだな、テンコちゃんもカズセちゃんも」
    「まーな」
    「しかし、なんでそんな世捨て人が急に戻ってきたんだ? 80年人目に出なかったってんなら、よっぽどでかいきっかけがあったとか?」
     ロロの率直な疑問に、最後のブラウニーに伸ばしていた天狐の手が止まる。
    「……なんでだろーな。オレにもその辺はよく分からねー。……多分だけど、よっぽどウマが合ったんだろーな、あの2人と。ま、オレから見てもあの2人は、何かと構ってやりたくなる性格してるよーに見えるし、な」

     その「構いたくなる2人」――シュウとジャンニはミッドランドの天狐屋敷で、天狐が新たに発注したパソコンの前に並んで座り、作業を行っていた。
    「ホンマにスペックエグいな……なんやねん、5分の動画のエンコードが10秒て」
    「ですよねー。ふつーにこのパソコン買ったら10万、20万エルはしますよね」
    「いや、もっとするかも。しかもそれを、ゼミ生用のんも含めて30台発注やろ? この学校、設備投資半端ないな」
    「だから世界最高峰なんでしょーね」
    「でもカイトのやつ、これでゲームしとるんやろ? もったいなーって思うねんけど」
    「本人がめちゃくちゃ楽しそうだからいーでしょ。そもそも『7M』関係者には一人ひとりにくれたヤツなんですし、使い方は人それぞれってヤツでしょ。ジャンニくんだって一緒にゲームするくらいしか使ってないでしょ?」
    「それは、……まあ、そやけども。俺かてもっとええ使い方したいけども……宝の持ち腐れ感が半端ないわ」
    「勉強に使ったらいいじゃないですかー。学習サイトなんて世の中、いっぱいあるんですし」
    「それはまあ、うん、まあ、そうなんやけどもな」
    「で、どーでしょ? ヘンなトコありました?」
     たった今シュウが編集した動画を確認し終わり、ジャンニは首を横に振った。
    「全然大丈夫や。特に問題なさそうやで」
    「良かったですー」
     にこっと笑うシュウに、ジャンニは「へへ……」と照れ笑いを返すが、一転、不安げな表情を浮かべる。
    「でもこれ、ホンマに流すつもりなん? もし向こうが何もしてこーへんかったら、ただウソついて終わりやんか。シュウさんの評判、ガタ落ちにならへん……?」
    「大丈夫です。状況的に間違いなく、向こうは近日中に動きます。でないと一連の流れを黙認したって思われちゃう、……と思ってるでしょうから」
     シュウは自信たっぷりな様子で、もう一度にっこりと笑みを浮かべた。

    緑綺星・聖怨譚 終

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    本日、当ブログ「黄輪雑貨本店 新館」は、開設から15周年を迎えました。

    長く続けてますし、コンテンツの幅も年々広がり続けています。
    半端なまま放置・終了した企画も少なくないですが、熱心に続け、無事に完結できたものもいっぱいあります。

    果たしてこのブログが終わる日が来るのか。
    あるとしたらブログサービスが終焉するか、僕に何らかの致命的な事態が生じて、更新する人間がいなくなるかだと思います。
    「飽きて終わる」と言うことだけは、絶対にないと断言します。

    記念日企画は考え中。
    「緑綺星」第4部の終了後に記事を掲載する予定です。
    お楽しみに!
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