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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第4部

    緑綺星・国謀譚 4

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    シュウの話、第143話。
    次策を読む。

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    4.
     肩を落として帰っていく役人たちの後ろ姿を屋敷の窓から眺めながら、天狐はフン、と鼻を鳴らした。
    「コレで状況は次の段階に進んだってワケだ」
    「次?」
     尋ねたエヴァに、のんびりコーヒーを飲んでいたロマーノが答える。
    「そもそも今回の彼らの訪問は非公式なものです。公式なものであれば『外務省からの者』などと立場をぼかして訪ねたりはしないでしょうし、大々的に報道がなされるはずです。つまり公式に訪ねなかったのは、事細かく尋ねられたり、公に知らされたりしては困るからでしょうな」
    「いい線いってるぜ、ロム」
     天狐にほめられ、ロマーノは「ありがとうございます」とにっこり笑って返した。
    「つまり公式に報じられると、配下国からツッコまれるからだろう。『あの土地、オレたちが買ってるはずだぜ』ってな」
    「ふむ? と言うことは……」
     合点が行ったらしい様子のエヴァに、天狐はニヤッと笑いながらウインクした。
    「あの小役人どもは知らなかったみてーだが、もっと上の連中はちゃんと把握してんだよ、土地売買の件をな。もしオレたちが権利関係を把握せずに石油会社計画を進めてるなら、脅してビビらせりゃ手を引くと考えて、アイツらを送ったんだろう。逆に知ってると判明した今、他の手段を講じなきゃならねーワケだ」
    「なるほど、だから『次』か。では相手はどう出ると?」
    「考えられる可能性は3つだ。1つ、オレが煽った通り、土地売買の件を反故にして土地権利と石油利権を取りに来るか。だがコレはありえねー。10年前、20年前の債務を遡って支払うコトになるからだ。その額約300兆コノン、トラス王国の30年分の税収に相当する。今払えってなれば財政破綻は不可避だ。そもそも反故にした時点で金融筋が大々的に報じる。『一旦結んだ契約を一方的に破るろくでなし』としてな。そうなりゃ王国の信用は消し飛ぶ。仮に石油を奪取しても、誰もそんな大ウソつきを相手しなくなるだろーな。
     そして2つ目、計画の中心人物を暗殺、あるいは拘束して計画を進められなくし、そのまま立ち消えにさせる。だがコレも無理だろ?」
     天狐の言葉に、エヴァとロマーノは苦笑する。
    「テンコちゃんをどうにかできる人間がこの世に存在するなら、可能かも知れないが……」
    「私が存じている限り、お父上くらいでしょうか。しかし今回の件で敵対される理由はないでしょう」
    「地下に親父の秘密コレクションかなんかが埋まってるとかなら邪魔しに来るかも知れねーが、大野博士に入念に調査してもらって、ソコら辺の可能性はないと判明してる。そもそもマジでヘンなもんがあるってんなら、石油会社作った時点で向こうから連絡してくるだろーしな。
     大体、今更親父に政治上のしがらみなんかねーし、トラス王国とのつながりも皆無だ。である以上、こっちに干渉してくる理由はねーな」
    「仮にテンコちゃんの存在がなかったとしても、永世中立国がからんでいる話だ。商業上の交渉ならともかく、実力行使で差し止めに来れば、確実にミッドランドを敵に回す形になる」
    「中立を宣言している我が国に鉾を向けるようなことをすれば、白猫党と同類の危険勢力と見なされ、国際的に孤立することになるでしょう。そうなれば新央北の配下国も、軒並み新央北から脱退するでしょうな」
    「ならず者国家と認定された落ち目の王国と関係を保つより、世界規模の商業網の方が大事だろうからな。……で、3つ目は?」
     エヴァに尋ねられ、天狐は難民特区の地図を指差した。
    「こっちから土地を手放さざるを得ない状況に持って行かせる。こうして石油会社を作り、後は採掘を開始するだけ、と言う段階まで来たワケだが、『何らかの理由により』採掘ができねーとなれば、会社は回らなくなる。となれば計画の中心人物であるオレは、株式を持ってる配下国から責任を問われる。しかしオレの貯金は現時点でほぼすっからかんだから、補償するとなれば現物、つまり土地を手放すしかない。
     そうなりゃ後は後ろ盾がなくなった配下国へ従来通りに圧力かけて土地を王国が管理する形に持って行かせ、敵を一掃した王国が悠然と利を得るってワケだ」
    「ふむ……。しかし採掘ができない状況、と言うのは? 資材の搬入や油井の建設を妨害する、とか?」
    「その辺りだろーな。そしてソレら妨害を包括的にできる方法、そして今、国民の監視でうかつに動けねートラス王国が天下御免で難民特区に軍隊を送り込める方法が、一つだけある」
    「それは?」
     尋ねたエヴァに、天狐はフン、と鼻を鳴らして返した。
    「白猫党だよ。あいつらが間近に迫ってきたって情報が流れりゃ、国防上の理由から緊急出動が認められるだろう。後は出動のどさくさに紛れてラコッカのトコを荒し回りゃ、業務停止に追い込めるってワケさ」
    「なるほど。しかしこのタイミングで都合良く乗り込んで来ると?」
     ロマーノの問いに、天狐はもう一度鼻を鳴らした。
    「現実が都合良くなきゃ、ウソついてでも都合付けりゃいい。ツラの皮の厚い王国の連中なら、そう考えるだろーぜ」
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