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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第4部

    緑綺星・機襲譚 1

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    シュウの話、第147話。
    ホンモノのバケモノ。

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    1.
     トラス王国が偽の緊急出動を行う、その2日前――。
    「お前さんがラック・イーブンか?」
    「学校」の片隅でひっそり過ごしていたラックのところに、天狐が現れた。
    「あ、はい、ども、はい。……な、なんです?」
     ラックのことをじろじろと眺めている天狐に、ラックは困った顔を向ける。
    「妙なヤツだな」
     天狐はそう言いながら右目をつむり、光のない真っ黒な瞳をラックに向けながら周りをうろうろとしていたが、一転、けげんな素振りを見せる。
    「みょ、妙って、何がです?」
    「お前さん、ヘンなんだよ、オーラが。普通、オーラってのは感情に伴って色が変わるもんなんだが、……なんでお前さん、2色も3色もチラチラチラチラ重なってんだ? まるでお前さんの中に、人格が2つ3つあるみてーじゃねーか」
    「……っ」
     天狐の指摘に、ラックは顔を青ざめさせる。
    「そ、そんなことないでしょう。俺は一人です」
    「『どのお前さんが』そう言ってんだ?」
     天狐は両目を開き、ぐい、とラックに顔を近付ける。しばらく至近距離で見つめ合った後、ラックは目をそらしながら答えた。
    「……俺、……俺は、……時々、頭の中で、俺の隣に俺がいる、みたいな、そんな感覚になることがあるんです。多分、あんたの言ってる2人、3人ってのは、それが原因だと」
    「単純に二重人格だとか統合失調だとかってレベルの話じゃなさそうだな。詳しく聞かせてくれ」
    「……嫌です」
     ラックが断るが、天狐は折れない。
    「聞かせろ」
    「……」
     と、ラックの腕がピク、ピクと動く。
    「い、嫌です。言いたくないんで、どっか、行って下さい、本当、頼みますから、お願いです」
    「もしオレがこの場から離れなかったら? 殴りつけるつもりか?」
    「そ、そうなるかも知れないんで、早く、どっか、行って下さい」
    「断る」
     天狐はにやあっと悪辣に笑い、指をくいくいと曲げて挑発した。
    「殴りたきゃ殴ってみろよ。どーなるかは保証しねーけど、な」
    「……うう、……うっ、あ、……アッ、……ガアアッ!」
     ラックの右腕がぼこぼこと入道雲のように膨れ上がり、ぼっ、と風切り音を立てて、天狐の顔に向けて振り抜かれる。だが――。
    「ソレで全力か? 見掛け倒しだな」
     なんと天狐は人差し指と親指でちょこんと、自分の顔半分ほどに膨張したラックの右手をつまんでいた。
    「ウガァッ!?」
     ラックが腕を引こうとするも、天狐の二指は彼の拳をがっちりとつまんだまま離さない。
    「言っとくけどな」
     と、天狐は悪辣な笑みを崩さず、こう言ってのけた。
    「もしお前さんが島一つ分くれーに巨大化して襲ってきたって、オレは余裕で勝つ自信がある。いっぺん試してみるか? お前さんの全力、最大限、最大出力、100%中の100%を振り絞ってみて、オレを一発でも殴れるかどーかを、な」
    「グアッ……ガッ……う……うう……ううっ」
     巨木のようだった腕がしぼみ、元のしょぼくれた小男に戻ったところで、天狐は優しげな声で諭す。
    「分かっただろ? いや、悟ったっつった方が正確だろーな。もしマジに島一つ分の怪獣に化けたとしても、オレには絶対に敵わないってコトが」
     ラックはへなへなと崩れ落ち、天狐の足元に平伏す。
    「……なんでです……俺……俺は……ば……ばっ、バケモノ……なのに……」
    「本物のバケモノがどーゆー存在か、お前さんはマジに知ってるつもりなのか?」
     天狐はニヤニヤと笑い、どこからか取り出した鉄扇でラックの薄い頭をぺちぺちと叩いた。
    「オレに言わせりゃお前さんなんぞ、半世紀前の特撮映画に出てくる着ぐるみ怪獣と変わりゃしねーよ。眼の前に現れたところでコレっぽっちも怖かねー、子供だまし同然のドコにでもいるよーな小僧さ。
     だから素直に全部話してみろよ、この『ホンモノ』である克天狐ちゃんサマに、な」
     ラックはぽかんとした顔で天狐を見上げ――突然、泣き出した。
    「うっ……ふぐっ……うひっ……ひっ……俺……俺は、に、人間、です、か……?」
    「オレに比べりゃずっと人間だろーよ」
     天狐はラックと同じ目線までしゃがみ込み、彼の背中をぽんぽんとさすった。
    「がっつり涙流して落ち着いたら聞かせてくれよ。お前さんがどんな人生歩んできたのかをな」
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