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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第4部

    緑綺星・機襲譚 2

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    シュウの話、第148話。
    身の上話とヘッドハント。

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    2.
     ひとしきり泣いた後、ラックはぽつりぽつりと、自分の身の上を天狐に話した。
    「俺の……俺が『俺』になった時の、一番古い記憶は、どこか暗いところにいたってことです。俺は……俺の中には、色んな別の俺が、……別々の人間がいて、……それが、……なんでか、一つに『まとまった』んです。でも、まとまったのは俺一つじゃなかったんです」
     この時点で既に天狐は口をへの字に曲げていたが、こくりとうなずく。
    「イマイチ分かりにくいが……まあ、続けろ。どーにか解釈するから」
    「はい。……それで、俺とは別にまとまった奴が、俺に襲いかかってきたんです。なんで襲われたのか分かんなかったんですけど、でも、逃げなきゃ殺されるって思って、それで、必死で逃げたんです。暗いところを逃げて、逃げて、どうにか外に出て、森の中に逃げ込んで、どうにか相手を撒けたんです。でも相手は全然あきらめてなかったみたいで、その後も何度か俺の前に現れて、所構わず俺を襲ってきたんです。……その度に、どうにかごまかして作り上げてた俺の生活とか、人生とか、めちゃくちゃにされて、……その場にいられなくなって、逃げるしかなくって。多分、もう、200年くらい、その繰り返ししてて……」
    「200年逃げっぱか。なかなかキツいな」
     天狐はまたぽんぽんと、ラックの背を撫でた。
    「話を聞く限りじゃ、お前さんの変身能力は――おっさんが色んな形に変身できるって言うより、正確にはお前さんにそもそも『原型』が無いってコトか。今のその姿も……」
    「はい。あんまり目立ちたくないから、この姿にしてるだけで。誰だってこんなしょんぼりしたおっさんに、用もないのにわざわざ声かけませんから」
    「だろーな、ケケケ……。ところでその襲ってくる奴ってのは、何か分かってるコトはあんのか? 居場所とかは?」
    「さっぱり分かんないです。でも、相手は何故か俺のいるところが分かるみたいです。もしかしたら、念入りに調べて追ってきてるのかも知れないですけど」
    「名前は?」
    「多分なんですけど、オッドです。『まとまり』の中にそう名乗ってた猫獣人の記憶があって、その人とそいつ、同じ姿してましたから。襲われた時にも何回か、『ドクター・オッドと呼べ』みたいなこと言ってましたし」
    「オッド……ドクター・オッドか。ふーん……」
     天狐は意味ありげにうなり、それからラックに尋ねた。
    「ラック。お前さんが欲しいモノはなんだ?」
    「え?」
    「ぶっちゃけた話、何にでも化けられるお前さんが大富豪や銀行頭取にでも化ければ、好き放題に盗みが働ける。猫かなんかに化けてトラックや船にでも忍び込めば、世界中ドコにだって行けるワケだ。やろうと思えばこの世のあらゆるモノを手に入れられる能力を持つお前さんは、何を望む?」
    「……」
     ラックは頭を抱え、ぼそりとつぶやく。
    「俺の望みは一つです。……穏やかに、暮らしたい。バケモノだって後ろ指差されることなく、ひっそり生きていたいです」
    「だがドクター・オッドとやらはソレを許しちゃくれねー、と。おそらくお前さんが世界のドコにいようと、オッドは執拗にお前さんを探し出して、暴いてほしくねー秘密を白日の下に晒した上、殺しに来るワケだ。200年追っかけてくるよーなヤツが、いまさら『もういいやめんどくせえ』なんて都合良くあきらめやしねーだろーし。
     ソコで提案だが――オレに一つ、確実に安全な場所を提供できるツテがある。お前さんにソコで平和に暮らせる権利をくれてやる。もちろん、交換条件はあるけどな」
    「え……?」
     顔を上げたラックに、天狐はニヤッと笑って見せる。
    「オレのチームに入れ。お前さんのその変身能力を、オレの計画のために発揮してくれ。十分に働いてくれれば、お前さんに平和な生活を保証してやる。
     コレがこの克天狐が提示する、契約内容だ。どうする、ラック?」
     差し伸べた天狐の手を、ラックはがっちりとつかんでいた。
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