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    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第4部

    緑綺星・機襲譚 5

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    シュウの話、第151話。
    本格侵攻の前に。

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    5.
     誰にも妨害されないまま、白猫党は余裕綽々で前線基地を構築した。
    「昨日の……対象SFはなんだったんでしょう?」
    「突然やって来てドローンを何台か破壊しただけで、結局逃げましたよね」
     作戦開始前のブリーフィングにて、前日に出現したスチール・フォックスのことがオペレータたちから指摘されたが、グスマンも首をかしげていた。
    「俺にも見当が付いてない、と言うのが正直なところだ。
     昨年から今年1月までの間に、奴は7回我々白猫党の前に現れ、遊撃的に攻撃してきた。だがその7回の交戦に明確な関連性が見られなかったことから、『独善的な正義感を充足すべく、国際的評判の芳しくない我々を漫然と攻撃目標に定めているのだろう』と言うのが、戦略研究室の見解だ。俺もこれに同意見であり、前日の出現はおそらく我々が他国への侵攻を開始したことを奴なりに危惧し、英雄主義的行動に出たのだろうと考えられる。
     だが結局、奴は我々の猛攻に圧されてあっさり逃走したし、前線構築の際にも一切妨害に現れなかった。もしかしたら今日も現れるかも知れないが、その時はまた、集中砲火で叩き落としてやれば良い。仲間がいると言う情報もあるが、いずれも歩兵レベルの存在だと考えられている。ドローン部隊に対しては、あまりにも無力だ。結論として対象SF、そして奴の仲間たちの存在は、取るに足らない要素と言えるだろう」
    「今回の油田開発にはミッドランドが関わっているとの情報もありますが、我々が本格的に踏み入った場合、行動に出るのでは?」
    「それも検討した結果、可能性は極めて薄いと判断されている。ミッドランドは永世中立国を宣言している央中の国家だ。だが今回の件に、即ち央北の地政学上の問題に軍事的・政治的に介入するようなことをすれば中立宣言の破棄、侵略行為と捉える者も現れるだろう。中立宣言を破り他国侵攻を行ったとなれば、ミッドランドの評判は地に落ちる。中立宣言は信用が物を言う。『今回だけ中立を破る』などと言うような、姑息な手は通用しない。一回反故にしてしまえばそれまでだ。ミッドランドがそこまでのリスクを負って行動に出ることはあるまい。
     加えて今回の件はミッドランド政府や当主のラーガ家が主導したものではなく、テンコ・カツミ氏の独断による行動だ。彼女の行動で国家に多大な迷惑がかかるとなれば、関係を切ることもありうるだろう」
    「ではテンコ氏が単騎で報復する可能性もあるのでは……?」
    「それも結果的にはないものと考えられる。もしテンコ氏が報復した場合、我々は――実態がどうであろうと――彼女がミッドランド政府からの支援を受けて計画を実行したと喧伝するし、そうすることは相手方も予想するだろう。その悪評を撤回するには、ミッドランドはテンコ氏との関係を切るしかない。
     関係が切れ孤立すれば、テンコ氏はミッドランドを――即ち堅固に守られた城を自ら出ることになるだろう。そうなれば我々にとってはどこまでも有利だ。一人になった彼女を白猫党全軍が狙うとなれば、いかに彼女が『悪魔の娘』であったとしても、ひとたまりもあるまい」

     天狐の性格と実像については今ひとつ捉えきれていない、いささか正確性を欠く予測ではあったが――ともかくこの時点までは、彼らの予測通りに事が運んでいたのは確かだった。そしてこの予測が正確であると確信した彼らは、ふたたび特区への侵攻を開始した。
    「ドローン全機、攻城モードに移行。国境線の破壊を開始します」
     既に経年劣化と密入国の横行で半壊しているフェンスの前に整列したドローンが、一斉に銃火器を構える。そしてオペレータが実行命令を下して0.5秒後、フェンスは木っ端微塵に吹き飛ぶ。
    「対象の破壊完了。攻城モードを終了します。続いて掃討モードに……」
     次の命令を送ろうとしたその瞬間――金と黒のパワードスーツがふたたび、カメラに映った。
    「対象SF現れました!」
     オペレータから報じられるが、昨日と打って変わって制御室に緊張感はなく、グスマンの反応も鈍いものだった。
    「またか。特殊戦闘モードで追い払え」
    「了解。特殊戦闘モードに移行します」
     ドローンとMPSの装備する銃火器の照準がすべて相手に合わせられ、昨日と同様に集弾攻撃を放つ。ここまでは昨日とほとんど変わることもなく、今日も同様の結果になるものと、グスマンをはじめとする制御室の人間がそう信じて疑わなかったし、実際、グスマンももう既に、オンラインゲームを立ち上げていた。

     だが――。
    「……え?」
     モニタに表示された数値を見て、オペレータたちは揃って目を丸くした。
    「26発?」
    「何がだ?」
    「め、命中数です。弾丸の」
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