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    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第4部

    緑綺星・機襲譚 6

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    シュウの話、第152話。
    AIの異様な不調。

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    6.
     報告を受け、グスマンは首をかしげた。
    「あ……? なんで26発だけ撃ったんだ? まさかAIが、たったそれだけで十分と判断したのか?」
    「ち、違います。26700発撃ち込んでるんです。命中が、26発です」
    「……なんだって!?」
     グスマンが唖然としている間にもう一度攻撃が行われたが、結果は変わらなかった。
    「さっ、38発!?」
    「今度は何発撃った!?」
    「同数です! 命中率微増ですが、やはりほとんど当たってません!」
    「バカな!? 何かの故障か!? それともAIの異常か!?」
    「分かりません!」
     状況が把握できないままオペレータたちは漫然と攻撃を繰り返すが――千発単位で集弾させてどうにか相手の装甲を凹ませられる程度の弾を数発、数十発しか当てられていないのだから当然のことだが――一向にダメージを与えられない。
    「MPS兵の弾が尽きました!」
    「ドローンの被撃破率、10%を超えました!」
    「このままでは戦闘陣形を維持できません! どうしますか、指揮官!?」
    「うっ……うぐぐ……ぐっ」
     もはやゲーム画面に目を通す余裕もなく、グスマンはがたんと椅子を倒して立ち上がり、真っ赤な顔で怒鳴った。
    「特殊戦闘モード止め! 一般戦闘モード、いや、セミオートに切り替えろ!」
    「えっ!? し、しかし指揮官……」
    「AIアシストを切るんですか!?」
     ためらうオペレータたちに、グスマンはもう一度叫ぶ。
    「何がなんだか分からんが、AIがポンコツになってるとしか思えん! アシストは無駄だ! 切れ! 自分たちで狙いを付けた方がまだマシだ!」
    「りょっ、了解!」
     命じられた通り、オペレータたちは対スチール・フォックス用の戦闘モードからセミオート――敵の位置捕捉と照準設定をAIに分担させる、手動操縦モードに切り替える。だがこの戦術転換も功を奏さず、被害が拡大していく。
    「弾丸命中率は10%前後に上昇しましたが、効果が見られません!」
    「被撃破数、さらに上がってます! 30%を超えました!」
    「陣形崩れました! 作戦遂行可能予測、50%を切っています!」
    「指揮官、どうしますか!?」
    「……~ッ」
     グスマンは立ち上がったまま、前方をただただにらみつけていたが、やがてあきらめに満ちた声で「撤退しろ」と告げた。

     こうして白猫軍は国境直前であっけなく撃退され、彼らの油田掌握計画の完遂に、大きな壁が立ちはだかった。
     だが、作戦失敗の責を問われることを恐れたグスマンは、特殊戦闘モードが機能しなかった件なども含めた一切を上層部へ報告しないまま、翌日以降も攻めの一手を打ち続けた。しかし結果は変わらず、侵攻開始から5日が経過する間にドローン300体強を破壊され、銃弾50万発以上を無為に費やした末――ようやく軍本営がこの異常な浪費に気付き、意地を張ってほとんど制御室にこもりっぱなしになっていたグスマンを拘束・連行した。

    「この5日間にあなたの指揮によって消費された弾薬、そして修復・補充したドローンの総額は12億クラムに相当する。だけどあなたの部隊から成果が上がったと言う類の報告は一切受けていない。状況を詳細に報告しなさい」
    「閣下」の前に引き出されたグスマンは、憲兵たちに小銃を向けられながら、しどろもどろに答えた。
    「じょ、状況は、ですね、ええ、ええと、何と言いますか、じゅ、順調と、言えなくも」「セルヒ・グスマン三級党員」
    「閣下」は冷え切った眼差しを、グスマンに向ける。
    「状況だけを詳細に報告しなさい。あなたの感想は不要」
    「……我々は、難民特区国境のすぐ手前まで進軍しましたが、そこで会敵しました。相手は1名です。通称『対象SF』と呼ばれている、狐のパワードスーツの人物です」
    「対象SFに撃退されたと? 対象SF用に設定された特殊戦闘モードがあったはずだけど、使用したの?」
    「当初は使用しました。1回目の会敵では成果を上げましたが、2回目以降はほとんど命中しなくなり、セミオートでの戦闘に切り替えました」
    「その後の成果は?」
    「特殊戦闘モードに比べれば効果を確認できましたが、撃退できるほどのダメージを与えられず、……その……次は勝てる、勝ちうると考えて……ずるずると……」
    「では対象SFを撃退できないまま漫然と、弾薬とドローンを浪費したと言うことか。結構」
     直後、憲兵たちがグスマンに向かって小銃を構える。
    「ひっ……」「待ちなさい」
     が、「閣下」は手を挙げ、憲兵を制する。
    「もちろん、このままの失態が続くのであれば、あなたにはしかるべき責任を取ってもらう。しかし緒戦で勝利したことは確か。あなたに作戦遂行が不可能であるとは考えていない。だからあなたにもう一度だけ、機会を与える」
    「き、機会?」
    「5日間連日で交戦したことから、明日も対象SFが現れる可能性は非常に高い。それを次こそ撃破すること。できなければ今度こそ、責任を取ってもらう」
    「はっ、はい! しかと! しかと拝命いたしました!」
     真っ青な顔で敬礼したグスマンに、「閣下」はひんやりした声で「よろしい」と答えた。
    「では明日の作戦を行う前に、AI包括管理本部長とミーティングを行うこと。でなければ明日の結果も今日までと変わらないと予測する。私から連絡しておく。あなたは即時、彼の元に向かうこと。以上」
     そう言い残し、「閣下」は部屋を後にした。
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