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    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第4部

    緑綺星・機襲譚 9

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    シュウの話、第155話。
    偽装作戦と、もう一つの決定打。

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    9.
     時間は、侵攻開始直前に戻る。
    「着る前から分かる。無理だ」
     スチール・フォックスのパワードスーツを前にしたエヴァはそう答え、首を横に振った。
    「だよなー」
    「確かにテンコちゃんの言う通り、スーツ内に別の人間がいるとなれば多少はAIをたばかることもできるだろうが、そもそもこれはジャンニ専用に設計してるんだろう? 私とこいつじゃ体格が違いすぎる」
     親指で差され、彼女の後ろにいたジャンニも同意する。
    「エヴァさんの方が背ぇ高いし、ムキムキでスタイルええもん。こないだ一緒に筋トレした時なんか、俺の倍の重り引き上げとったし」
    「それは盛りすぎだ。せいぜい1.5倍だろう。ともかくその案は却下せざるを得ない。着られる人間がそもそもいないんじゃ、机上の空論だ」
    「せやけど前にミサイルで狙われた時、カズちゃんが着てたやん? ほんならカイトとか行けるんとちゃうん? 俺より背ぇ低いし」
     ジャンニの提案に、今度は一聖が首を振る。
    「アレは緊急事態だったから、無理矢理着込んで自動操縦で動かしてたんだよ。実際、オレはスーツん中で宙吊り状態だったし。そんな状態でマトモに戦うのは無理だ」
    「自動操縦ができるなら、それで十分では?」
     エヴァの質問に、一聖はもう一度首を振った。
    「相手はAIだからな。機械的動作はすぐ解析されちまう。人間の反射だとか反応とかの『ゆらぎ』『ブレ』があるから、解析を難しくさせられるんだ。コレは相手のAIを翻弄させて時間稼ぎするための作戦だからな。すぐ解析されちゃ、意味がない。同様の理由でエヴァや海斗用に新しくスーツを設計するってのもナシだ。大きさが違うんじゃ、すぐバレちまう。
     そもそもスーツを新しく作るって方法は、別の理由からもナシだ。こんなもんが2つも3つも作れるって判明したら、相当デカいトコがバックに付いてるってバレちまう」
    「その線から探られれば、我々がテンコちゃんの元にいることも判明しかねない。こっちに直接ミサイルを撃たれでもすれば、無関係の人間にも被害が及ぶ。トラス王国の批判なんかできる立場じゃなくなるだろう」
     エヴァの言葉にうなずきながら、一聖は話を続ける。
    「バレるにしても、せめて特区が独立してからじゃなきゃダメだ。天狐が画策してる最中に『セブンス・マグ』とつながってるコトが発覚したら、独立後の軍隊設立がままならなくなるだろーしな。『あいつらに全部任せりゃいーじゃん』っつって」
    「国家が防衛力を自前で構えられないんじゃ、国防も何もあったもんじゃない。結局、独立後に攻め落とされることになる」
    「そーゆーコトだ。……っと、話が逸れちまったが、とにかくこのスーツの中にジャンニ以外が入らなきゃ、偽装作戦は成立しない。問題はその誰をどーするか、だ」
     一同が打開策を見出だせず、揃ってうなっている中、シュウが手を挙げた。
    「あのー、こないだわたしの先輩から、『誰にでも化けられる人がラコッカファミリーにいるらしい』って話、聞いたんですよー。ホントかどうかは分かんないですけど、もしホントならソレ、行けるんじゃないですか?」
    「ふーん……? じゃ、オレが一応当たってみる。ダメ元って感じだけども」
     そう言うなり天狐は「テレポート」で姿を消す。残った一聖はスーツを眺めながら、話を続けた。
    「もしシュウの話がバッチリ上手く行ったとしたら、作戦は半分成功したようなもんだ。そっちについてはコレ以上話してもラチが明かねーから、残る半分について、今のうちにちゃっちゃとまとめとくとすっか」
    「残り半分?」
    「ああ。偽装作戦が上手く行ったとして、ソレでどーにかできんのはせいぜい2、3日ってトコだろう。いくらなんでもご自慢のAIが全然機能しねーってんじゃ、スチフォが偽物だって分かるだろーしな。
     逆に言えば、その偽装作戦に気付いて態勢立て直してからが本番になる。この段階に来た相手は、確実にスチフォを破壊しに来るだろう」
    「スーツが1着と考えているなら、なおのこと破壊しようと試みるだろう。それこそミサイルでも何でも使ってな」
    「それはやりすぎとちゃう? 流石にないやろ」
     ジャンニがそう突っ込んだが、エヴァは肩をすくめて返す。
    「昨年、白猫党領のオライオン設計局を襲撃・壊滅させた時のことを覚えているか? 新型ミサイルの試作データを発見したところだ」
    「あー、なんやったっけ、超音速ミサイル? やっけ」
    「正確には『極超音速ミサイル』、マッハ5以上の巡航速度で目標物へ向かうミサイルだ。発見したレポートには既に発射試験も終わり、実戦配備に向けての量産体制を申請予定であると記載されていた。設計局自体は潰したが、ミサイルのデータが党本部に送られている可能性は十分ありえるし、あれから相当時間が経っているから、実戦配備されていてもおかしくない。
     そして以降の襲撃でそれに該当する兵器が使用された様子はない。と言うより、『長い7世紀戦争』をはじめとして大規模な戦争が終息した今、使う機会がないと言った方が正確だろう。そこに来て、通常兵器で太刀打ちしきれないスチール・フォックスが出現したとしたら? 実戦投入のいい機会と考える可能性は、十分にある」
    「ま、ミサイルは行き過ぎでも、相当大掛かりな兵器を投入してくるであろうコトは容易に予想が付く。恐らくは白猫党お得意の、AIによる遠隔自動操縦機能を搭載したヤツが、な。
     ソコで第二の作戦だ」
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