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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第4部

    緑綺星・機襲譚 10

     ←緑綺星・機襲譚 9 →元ネタ解説とかいいから
    シュウの話、第156話。
    静寂の結末。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    10.
     その瞬間まで、制御室にいた誰もが勝利を――HSBMが直撃し、スチール・フォックスが爆発四散する光景がモニタに映し出されることを確信していた。
     ところが着弾しようかと言うその瞬間に、モニタの映像がぶつっと途切れた。
    「……ん、んん?」
     モニタをわしづかみにしていたグスマンは、慌ててモニタから手を離し、「壊れたか?」とつぶやく。が、オペレータたちのモニタもほぼ真っ黒になっていたのを見て、今度は「どうした?」とつぶやいた。
    「現地からの映像、いえ、データ通信がすべて途絶しました。復旧しません」
    「カメラの故障か? ドローン全部が?」
     あぜんとした顔で尋ねるグスマンに、オペレータたちも困惑した様子で応じる。
    「カメラだけではなく、ドローン自体に問題が発生した模様です」
    「通信の復旧を試みていますが、まったく応答がありません」
    「MPSも同様です。全員からの通信が途絶しました」
    「衛星からの画像を確認します。……え?」
     と、オペレータの一人が手を挙げる。
    「現地の映像来ましたが、あの、……着弾した様子がありません」
    「ちゃ、着弾してない? HSBMがか?」
    「衛星からの映像を確認したところ、HSBMは飛来した方向からそのまま東へ向かい、央北東部沖上空を20キロ程度進んだところで着水した模様です」
    「みっ、見せてくれ!」
     グスマンの席のモニタに、衛星画像が表示される。グスマンはモニタに食い入るようにして目をこらし、確かにオペレータの言う通り、現場にクレーターや焼け跡がなく、また、エヴァが潜伏していた廃ビルも、崩れず残っていることが確認できた。
    「……これは、……なんだ? 何が起こった?」
    「不明です。……通信回復に失敗。ドローンは完全に破壊されたものと考えられます。MPSとの通信も同様です」
     部隊が壊滅したことが確定的となり、制御室はしん、と静まり返る。その静寂に、「閣下」の冷え冷えとした声が響いた。
    「作戦失敗と判断。全員に処罰を検討する。以上」
    「……っ」
     涙目のグスマンの横を音もなく通り抜け、「閣下」は制御室を後にした。

     現場に到着したエヴァは、すっかりただの置物と化したドローンと、ぼんやり突っ立ったままのMPS兵士たちの様子を確認して回っていた。
    「ドローンもMPSも軒並み棒立ち。死者数はどうやらゼロだ。成功したみたいだな。ジャンニは、……いたら死んでるか」
    《そらそうやろ。あんなん至近距離で受けてたら、落っことされてそのまんま地面に真っ逆さまやん。スーツん中でミックスジュースになってまうわ》
     エヴァのインカムに、ジャンニの声が届く。
    《ギリギリで戻ってきたから、俺はバッチリ無事やで。エヴァさんも無事みたいで良かったわ》
    「対電磁シールドをカズちゃんにもらってたからな。おかげでインカムも無事だ。ミサイルはどうなった?」
    《こっちで観測してたが、どーやら海の方まで行ったみたいだぜ》
     天狐も会話に加わり、状況を伝える。
    《爆発はしてねーみたいだから、着水してそのまま海の底ってトコだろーな。ってワケで作戦終了だ。一聖に迎えに行かせるから、お前さんはソコで待っててくれ》
    「了解。EMP装置は回収しておくか?」
    《ああ。もう炭化してるだろーが、万が一誰かに拾われると厄介だからな。多分、ジャンニが最後にいた辺りの真下に転がってると思うが》
    「ああ、発見した。ただ、まだ煙上げてるから素手では触れそうにない」
    《発見したんならソレでいーよ。一聖に持って来させるし》
    「分かった。……と」
     特区の方から一聖が歩いてくるのを見つけ、エヴァが「こっちだ」と手を振る。
    「EMPも見つけておいたぞ」
    「ありがとよ。……ってやっぱこーなったか。現状、一回使ったらソレまでか。カネのかかる爆弾だな」
    「だが効果は絶大だ。白猫党のドローン軍団が、このざまだからな」
     そう言ってドローンを拳で小突くエヴァに、一聖はニヤニヤ笑いながら、黒化したその装置をつま先でちょん、ちょんと蹴った。
    「電磁パルス(EMP)発生装置――瞬間的に超強力な電磁波を発生させて電子機器をブッ壊す、今回の作戦第二のキモだ。しっかり役に立ってくれたぜ、ケケケ」



     こうして白猫党による特区襲撃は――実際には「セブンス・マグ」による応戦が行われたが、それは公にはされず――表向きには「白猫党が投入したドローン兵器が攻め入る直前に故障し、ミサイルも着弾することなく海に向かって飛んでいった」と報じられた。
     加えて帯同していたMPS兵が大量に発見・保護され、彼らの素性が調べられたことで、白猫党が人間を大量かつ非倫理的に集めていた疑惑が明白となり、白猫党に対する国際的評価は一層下落。関係があった中央大陸外の国から、取引停止と国交断絶が相次いだ。
     戦闘自体においても、そして戦闘後の評判においても、白猫等は惨敗を喫した。

    緑綺星・機襲譚 終
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