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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第4部

    緑綺星・建国譚 5

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    シュウの話、第161話。
    シェイプシフター;その勇気のために。

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    5.
     小男が部屋に入ってきたのを見て、シュウがきょとんとする。
    「お掃除ですかー?」
    「あ、はい、すんませんです。先日、あの、えっと、テンコちゃんに雇われまして。俺のことは気にしないで下さい。すぐ終わりますんで」
    「はーい」
     軽く返事し、一瞬目線を切りかけたが、シュウはもう一度小男に向き直る。
    「ラックさんでしたっけ?」
    「えっ!?」
     小男はびくんと体を震わせ、シュウと目を合わせた。
    「こないだスチフォスーツに入ってくれた方ですよねー?」
    「あっ、いえ、……あの、そ、そうです、ども」
    「んー……?」
     一方のジャンニは首を傾げながら、ラックの姿を眺めている。
    「そんな顔やったっけ……? もっとなんか、うーん、なんちゅうか……なんかちゃうねんな。しょんぼりしてはるんは一緒やけども」
    「確かに顔、ちょこっと違いますねー。わたしたちとは初対面ですみたいな体でお部屋入ってきましたし。なんで知らん顔したんですー?」
    「いや、その、えっと」
     ラックは口ごもり、シュウから目をそらす。と――。
    「案の定だな、お前さん。普通に挨拶しろっつったろーがよ」
     天狐が呆れ顔で、部屋に入ってきた。
    「そのツナギも何なんだよ? オレは清掃業者雇ったつもりはねーぞ」
    「あ、その、あのー……すんません」
    「すんませんじゃねーよ。なんでだって聞いてんだろーが」
    「まーまー、テンコちゃん」
     シュウが天狐とラックの間にやんわりと割って入り、ラックに笑いかける。
    「とっても恥ずかしがり屋さんなんですねー。でも大丈夫ですよ。わたしもジャンニくんも堅苦しいのも暑苦しいのも苦手なタイプなんで、自己紹介なんてさらっと一言、『どーも』くらいで十分ですから。ってワケでどーも、シュウ・メイスンですー」
    「あ、はい、そんじゃ、ども。ラック・イーブンです」
    「ジャンニ・ゴールドマンです。よろしゅう」
     と、やり取りを見ていた天狐が「ふむ」とうなった。
    「そー言やラック、その名字は自分で考えたのか?」
    「あ、はい、そうです。名前だけだと宿取れないことがあるんで」
    「今までラックのスペル、普通に『Luck(運)』って思ってたが、お前さんの性格でその名字名乗ってるってコトはまさか、『Lack(欠ける)』なのか?」
    「あ、はい、そうです」
    「ってコトはだ、お前さん自分のコトを『半欠け』って名乗ってんのか? だとしたらクッソ縁起悪りいな」
    「すんません、その通りです、はい」
     素直にうなずいたラックに、天狐は口をへの字に曲げて返した。
    「そんなシッケシケのシケ散らかした名前自分で付けっから、人生も性格もツラもシケんだよ。オレが付けてやる」
    「えっ? いえ、そんな、いいです。ずっとこれで通してきたんで」
     戸惑うラックに構わず、天狐はピン、と人差し指を立てた。
    「四の五の言うな。お前さんは今からラック・ポプラだ」
    「な、なんでです?」「あーなるほどぉ」
     困り顔のラックに対し、横で聞いていたシュウがぺち、と両手を合わせ、合点が行った様子を見せた。
    「『勇気の青い花』のお話ですねー? あと、ラックもLuck(幸運)にする、と」
    「ご明察。そーゆーコトだ」
     天狐はイタズラっぽい笑みを浮かべながら、ラックに説明した。
    「LuckにPを付けりゃ、勇気(Pluck)になる。こっちの方が断然イケてんだろ」
    「い、いやー、その、俺に勇気なんて全然似合わないです、全然。何かもう、俺とは対極って言うか、程遠いって言うか……」
    「遠いコトねーだろ。そもそも今までの話の始まりは、お前さんがロロたちの前に立ちはだかってタマ防いだからだろーが。勇気ってのはそーゆーもんだろ。所構わず暴れ回るのは勇気でも何でもねー。ただの無鉄砲だ。出すべき時に絞り出して奮い立ち、未来を切り開くからこそ勇気ってもんだ。お前さんの勇気でロロも、アイツの生徒たちも、特区の人間みんなも助かったんだ。
     お前さんの名前にゃ、勇気こそふさわしいってもんだぜ」
    「……は、は、はい、ども、……ありがとうございます、……ども」
     耳の先まで顔を真っ赤にしたラックの顔は――先程よりどことなく、印象が深くなったように見えた。
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