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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 5;緑綺星」
    緑綺星 第4部

    緑綺星・建国譚 6

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    シュウの話、第162話。
    白い闇に踏み込む星々。

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    6.
     天狐や「セブンス・マグ」の面々からは「声がかかるまで自由に過ごしていい」「気楽にやっていい」と言われていたものの、ラックが「何か仕事してた方が気楽ですんで」と固辞したため、彼は天狐ゼミが行われている屋敷で用務員を勤めることとなった。
    「真面目さんですねー」
     朝早くから掃除用具を背負い、仕事に出かける彼の姿をすれ違いざまに眺めながらつぶやくシュウに、ジャンニがうなずいて返す。
    「ホンマやな。俺らと大違いや」
     が、シュウは口を尖らせる。
    「わたし仕事してますけど? フリー記者ですよ? 『ビデオクラウド』の動画投稿でもちゃんと稼いでますし」
    「あっ、……せやった」
    「カイトくんもちょこちょこ警備とか用心棒とかテンコちゃんに頼まれてますし」
    「あ、うん」
    「オーノ博士もこっちで研究続けてますし」
    「まあ、うん」
    「エヴァもテンコちゃんの秘書してますし」
    「せ、せやね」
    「テンコちゃんだって普段は遊んでるよーに見えて今回、1兆エル規模のお仕事成功させたんですし。1エルもおカネ稼がずに本気で遊び呆けてるのはジャンニくんだけでしょ」
    「うぐっ」
     小突き回され、ジャンニの耳と尻尾がしおしおと垂れるが、シュウのお小言は止まらない。
    「ちゃんと勉強しましょうよー。そのまま大人になって歳取っておじさん、おじいさんになっても何一つ取り柄も特技も無いぞってなったら、ものっすごーくカッコ悪いでしょ」
    「や、やる時はやるから」
    「やらない時でもやりましょーよ。できる人とできない人はそーゆーところで差が付くんです。とりあえずカズちゃんに相談したらどーです? あの子も昔、先生やってたって話ですから」
    「……う、うん。気が向いたら」
     気のない返事に呆れたシュウは、ジャンニの手を取る。
    「じゃあ行きますよ」
    「む、向いたら言うてるやん」
    「いつ向かせるつもりですか? そんなコト言ってたら今日も明日もゲームして終わりですよー?」
     シュウに引っ張られ、ジャンニは仕方なく一聖のところに向かった。

     前述の通り、真面目に仕事に出てきたラックを、天狐が出迎えた。
    「ありがとよ、ラック」
    「ども。……そんじゃ、あの、早速」
     ラックが小さく会釈し、作業袋から雑巾を取り出すのを眺めながら、天狐はそのまま話し続ける。
    「鈴林だけじゃ手ぇ回らねーみたいでな。と言ってオレは掃除嫌いだし。お前さんがやってくれるっつってくれて、マジで感謝してるよ」
    「ええ、はい」
    「で、だ。ちょいと真面目な話がしたいから、悪いが手ぇ止めてくれるか?」
    「あ、はい」
     取り出そうとしていた雑巾をしまい、しっかり顔を上げたラックに、天狐が小声で話す。
    「オッドのコトを調べた。今はどーやらウラの世界にいるらしいな。お前さんにゃ極めて残念だろーが、ピンピンしてるみたいだぜ」
    「そう……ですか」
    「今は違法薬物の製造やら販売やらに関わってるらしい。いわゆる麻薬関係だな。バックに付いてるのは白猫党って話だ。つまり表沙汰にできねー資金源がまだ、白猫党にはいくつもあるってコトになる。今回の件でオモテに出せる資金源は粗方潰してやったが、ウラからのカネがまだいくらでも入るってなると、まだまだ奴らの息の根を止めるコトはできねーだろう。
     そもそも今回の石油の件も、一旦は手を引かせた形にはなるが、ほとぼりが冷めたらまた、性懲りもなく攻めてこようとするだろう。オレがメディア使って散々こき下ろしたけども、実際の白猫党は相当ヤバい軍事組織だ。EMP兵器についてもいずれ対策されるだろーし、コレからもっと手強くなるだろう。ココからが本当の戦いになると言っていい。
     オッドの件をどーにかしようとすれば、いずれ白猫党全体と戦わなきゃならなくなるが――ソレでもお前さんは、オレに手を貸してくれるか? 『セブンス・マグ』として戦ってくれるか?」
    「もちろんです」
     ラックは作業帽を脱ぎ、天狐に頭を下げた。
    「俺、あなたのためなら、何でもします」
    「……その言葉、信じるぜ」
     天狐はラックの頭をぽんぽんとなでて、その場を後にした。

    緑綺星・建国譚 終

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    第4部終了です。
    どんどん「剣と魔法」的なファンタジーとは遠ざかっていってますが、
    ただ、ああ言う雰囲気の世界だって何百年も経過すれば、
    僕たちの想像する「近代的」な世界になっていく可能性は、十分あると思います。
    当作品は1,000年単位で世界の変遷を追っている形になるので、
    典型的な「剣と魔法」の時代もあれば、「銃とスマホ」の時代も存在するのです。

    第5部の掲載予定は間違いなく来年半ばくらい。
    アイデアが湧いていないことも理由ですが、
    実はもう一つ、喜ばしい理由があります。

    現在新しい小説を執筆中です。
    首尾よく行けば今年中に公開できるかも知れません。
    お楽しみに!
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