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    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第6部

    蒼天剣・黒色録 1

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    晴奈の話、第401話。
    殺刹峰として、最後の戦い。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
     冬の海風が吹きすさぶ岬の先端で、大火とミューズたちはしばらくにらみ合っていた。
    「かかって来ないのか? 俺もそう暇ではないのだが、な」
     そのまま十数秒ほどしたところで、大火が面倒臭そうに声をかけてきた。
     ヘックスとキリアが踏み込もうとしたが、ミューズがそれを止める。
    「タイカ・カツミ。戦う前に、話がしたい」
    「何?」
     大火が短く聞き返してくるが、刀は下げない。
    「私の名はミューズ・『ブラック』・アドラー。
     種族はエルフ、……と言いたいところだが、実のところは……」
     ミューズの方が剣を下ろし、自分の腕を見せる。
     それを受けて、大火が短く声を上げた。
    「ほう」
    「知っているようだな、私がどんな存在であるかを」
    「自律人形、……いや、半分は人間か。半人、半人形と言ったところか」
    「そう、ドランスロープと言うやつだ。私はお前を倒すためだけに、造られた存在なのだ」
    「それは、それは。……で、それがどうかしたのか?」
     曇った夜空のためはっきりとは分からないが、大火は気だるそうな顔をしている。明らかに、ミューズの話に興が乗っていないようだ。
    「造られたのは、504年。それ以来ずっと、私はお前のことを研究し、想定し、検討して生きていた」
    「……」
     ミューズの後ろで話を聞いていたシグマ兄妹は、小声でつぶやき合っていた、
    (ってことはミューズって今、16なん?)
    (そうなるわね。……私より年下とは思わなかったわ)
    (せやなぁ……。ずーっとオレより年上やと思っとった。殺刹峰ん時は偉そうにしとったし)
    (人は見かけによらないわね)
     背後の二人を無視し、ミューズは話を続ける。
    「だから、……命をもらうと言ったが、厳密には少し違うかも知れない。私は試してみたいのだ、その研究の成果を」
    「それで話は終わりか?」
     大火はより気だるそうに尋ねてくる。
    「ああ。……行くぞ、ヘックス、キリア!」
     ミューズは剣を構え直し、大火に突っ込んでいった。

     3対1だったが、想像していた以上に、いや、想像をはるかに裏切られる形で、ミューズたちは苦戦した。
    「『三連閃』ッ!」
     ヘックスとキリアが大火を挟んで技を繰り出す。
    「……フン」
     タイミングも、打ち込む場所も見事にかみ合っていたはずだが、何故か大火に当たらない。
    「はああッ!」
     避けた後ならばかわせまいとして、ミューズが続いて大火に斬り込む。
    「ぬるい」
     が、これも刃が届く前に止められる。
     10分ほど斬り合っていたが、3人は大火に傷一つつけることができなかった。
    「この程度で俺を襲うとは。とんだ身の程知らずだな」
     大火に軽く罵倒されるが、ヘックスもキリアも、ろくに反論できないほどへばっている。
    「ハァ、ハァ……」
    「何で、当たらない、のよ?」
     一方、まだ余裕のあるミューズは、一向に刃が当たらない原因を探った。
    「……オーラ、だな?」
    「うん?」
    「お前もオーラが見えるのだな? オーラは感情によって、その色を変える。我々が攻める時、引く時の、色の変化を見て、応対していると言うわけだ。まあ、予想済みではある、が」
    「やれやれ」
     大火は刀を下段に構え、なおも面倒臭そうにため息をついた。
    「とんだボンクラ共だな。ぬるいにも程がある。それ以前の問題だと言うのが、さっぱり分かっていないようだな」
    「え……」
    「確かにオーラは見ることができる。が、お前ら如き三下相手に使うほどの技ではない。経験で見切っているのだ。
     お前らは、修行なり訓練なりは10年前後行っているのだろうが、実戦経験は恐らく2、3年、多くとも4年と言ったくらいだろう? さらに言えば、多数対寡数の、一方的な攻撃が主。一対一で、実力伯仲か、もしくは相手の力量が上と言う状況での戦いは、数えるほどしか経験していない。
     違うか?」
    「う……」
     的確に言い当てられ、ヘックスとキリアは顔色を変える。
    「こうして戦っていると、それが良く分かる。
     相手の力量・応酬を無視した、手前勝手で向こう見ずな連携。仲間の助けをはなから期待した、自分でとどめを刺す気がまったく無い、真剣身の欠片も無いチャンバラ。極めつけは見当外れの、取って付けた知識に頼った、無駄な勘繰り。
     まるで陸の上で帆を張る、ハリボテの軍艦だ。紙細工の大砲が火を噴くと妄想しているに過ぎん。それでまともに戦っているつもりか、お前ら?」
    「……」
     この時点で、シグマ兄妹の戦意は失われた。
     二人の頭にはこの時、かつて晴奈が大火に戦わずして負けた時とまったく同じ思考が走っており、自ら敗北を悟っていた。
     その様子は、二人の目から気力の光が失われ、武器を持つ手がガタガタと震えたことで、十分に察せられた。
    「臆したか。ならば、俺に刃向かう理由もあるまい。下がって見ているがいい」
    「……?」
     ヘックスたちはその言葉に顔を上げた。
    「『見ていろ』?」
    「一体、何を見せると……?」
     大火は再び、刀を正眼に構えた。刀が向けられた先には、ミューズの顔がある。
     ミューズはまだ、戦意を喪失していなかった。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2016.09.18 修正
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    ミューズたちには残念ですが、初手から彼女らの敗色濃厚です。
    相手がまさに絶対的存在ですから。

    NoTitle 

    設定上、感じるとタイカに勝てるかあ?っと思ってしまいますが。
    まあ、その辺はファンタジーなので、勝てるかもしれないですね。
    ファンタジーだからこそ勝てない絶対的な存在もいると思いますが。
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