fc2ブログ

黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
    双月千年世界 短編・掌編

    黒エルフの騎士団 4

     ←黒エルフの騎士団 3 →黒エルフの騎士団 5
    スピンオフ、4話目。
    いざ、南海へ。




    4.
     ペルシャーナ家の起源は、2世紀末頃とされている。昔から上質の塩や香辛料による貿易を行っており、それで蓄えた富により王家を築いたのだそうだ。
     現代でも南海有数の伝統ある裕福な国であり、また、王家一族が猫獣人であることから、南海でも「猫」の多く住む土地となっている。

    「それでー、あたしは街に行こうとしてたところをー」
    「先生にさらわれた、と言うことか」
    「うん」
     話を聞いたヘックスたちは憤慨している。
    「つくづくクズやな、先生……。王侯貴族にまで手を出すとか、えげつないわ」
    「王族どうこう、って言うよりも、そもそもそれって6歳か、7歳くらいの時でしょ? そんないたいけな子供までさらうなんてね」
     ミューズはここで、所期の目的に立ち返って質問してみた。
    「それで、だ。そもそもは、夢の中で見た砂中の城に恐怖を覚え、それが何に起因するのかを調べるために、記憶を呼び起こしたわけだ。
     ペルシェ、その城はお前が住んでいた城だったのか?」
    「うん、そう。……なんだけど」
    「だけど?」
     ペルシェは表情を曇らせ、ふるふると首を振った。
    「何で怖いのかー、まだ分からないのー……」
    「そうか……」
     と、ここでヘックスが茶々を入れてきた。
    「なあなあ、ミューズ」
    「何だ?」
    「言葉遣い……」
     ミューズは顔をしかめ、開き直った。
    「もういい。面倒くさくなった。……勘弁してくれ」

     ペルシェの記憶は大方戻ったものの、肝心の「城が怖い」原因ははっきりしなかった。
    「それが分からなければ、今までやったことは何の意味も無い」
    「せやな。……そう言えば、ペルシェ。えーと、呼び方はペルシェのまんまでええんかな」
    「いいよー。そっちの方がなじんでるしー」
    「ペルシェは、城ではどんな感じの子やったん? どんな暮らししとった?」
     その問いにも、ペルシェは首を振る。
    「覚えてないー」
    「え? 記憶、戻ったはずやろ?」
    「だってー、ちっちゃい頃だよー? 詳しくなんてー、覚えてないもんー」
    「……それもそやな」
     そこでミューズが立ち上がり、こう提案した。
    「行ってみるしかあるまい。南海に」



     ヘックスたちはまた「テレポート」を使って、南海へと飛んだ。
     とは言え、この術はどこへでも自由自在に行けるわけではない。ある程度の目標物、目印がなければ成功しない。
    「私も、一度もその国を訪れたことが無いからな。とりあえず以前に寄ったことのある、この島に来た」
     ヘックスたちが到着したのは、ペルラ島から島4つ、5つほど離れたベール島。南海の中でも、比較的平和な土地である。
     とは言え――。
    「央北ほどやないけど、武装しとる兵士、あっちこっちに仰山おるなぁ」
    「南海は豊かな鉱産資源と香辛料によって、非常に潤っているからな。それを基盤にして王族となった家も少なくないし、さらなる拡大を目指すところもある。となれば……」
    「実力行使で拡大を目指す、つまり戦争を起こして他の家の領土・領海を奪うところもある、ってことか」
     ウェルスの言葉に、ミューズは小さくうなずく。
    「その通り。まあ、この辺りは大きな島も多く、争う必要が少ない。
     ベール王国自体、南海の中では非常に力のある国家だから、戦争を仕掛けるような輩もいないし、ベール王国から仕掛ける理由も無い。
     この辺りで争いに巻き込まれることは、無いと言っていいだろう」
    「ペルラ王国はー、どうなのー?」
     自分の故郷について質問してきたペルシェに、ミューズは肩をすくめた。
    「すまない。大まかなことは分かっているのだが、詳細は良く分からない。
     ただ、ここ数年で大きな戦争に巻き込まれたことは無いと聞いているし、平和なんじゃないか?」
    「……そっか、良かったー」
     ペルシェはにこっと笑い、安心したような表情を見せた。
     だが、シグマ兄妹と違って勘の鋭いミューズは、ペルシェが一瞬見せた感情に気が付いていた。
    (腑に落ちない、と言う目をしたな。すなわち、平和だったと感じていないと言うことになる。城が怖いと言っていたことと、何か関係があるのか……?)

     一行はペルラ王国へ行くため、一般の客船に乗った。
    「いいわね、船旅も」
    「せやなぁ。組織にいた時なんか、船に乗っても槍を磨いてばっかやったしなぁ。のんびりできるんは、ホンマにほっとするわ」
     兄妹は呑気に海を眺めている。リモード夫妻も、楽しそうに海を見て騒いでいた。
    「あ、イルカ」
    「えー、どこー?」
    「ほら、あそこ」
    「ホントだー、かわいーねー」
     赤ん坊を抱きかかえながらのどかに海の生き物を愛でる様子は、まるで新婚旅行に来たかのようである。
    「……」
     ミューズは一人、南海に関する歴史書を読んでいた。
    (ペルラ王国……、渡航情報を見る限りではまあ、平和なようだ。王はさほど名君では無いそうだが、大臣たちは優秀。今のところ戦争も無く、円滑に政治・経済も進んでいる。
     一体ペルシェ、いや、カマラは何を怖がったのだろうか……?)
     船は6時間をかけて、ペルラ島に到着した。
    関連記事


    ブログランキング・にほんブログ村へ





    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 5;緑綺星
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    総もくじ 3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 5;緑綺星
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    もくじ  3kaku_s_L.png DETECTIVE WESTERN
    もくじ  3kaku_s_L.png 短編・掌編
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
    もくじ  3kaku_s_L.png 携帯待受
    もくじ  3kaku_s_L.png 今日の旅岡さん
    総もくじ  3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    • 【黒エルフの騎士団 3】へ
    • 【黒エルフの騎士団 5】へ

    ~ Comment ~

    管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    トラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【黒エルフの騎士団 3】へ
    • 【黒エルフの騎士団 5】へ