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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
    双月千年世界 短編・掌編

    黒エルフの騎士団 7

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    スピンオフ、7話目。
    枯れた人間と日記。




    7.
     一行は一旦外に出て、新鮮な空気を吸うことにした。
     外の空気は熱くたぎってはいたが、それでも麻薬の甘ったるく、鼻にまとわりつくような臭いよりはましだった。
    「……」
     ペルシェは半ば呆然とした顔で、日陰に座り込んでいる。
    「ショックやろなぁ……」
    「まさか自分の故郷の城が、麻薬まみれなんてね」
    「そんな簡単な話ではないだろう」
     中を一通り調べてきたミューズが、シグマ兄妹に小声でささやいた。
    「それ、どう言う……」
    「中を見てきたが、白骨化した遺体があった。身に付けていた服装からして、恐らく王族だろう」
    「へ?」
    「外から閂がかけられ、封印された城の中にある、麻薬の痕跡と王族の遺体。麻薬以外に、何か臭ってくると思わないか?」
    「……せやな」
     ミューズはそこで兄妹から離れ、呪文を唱え始めた。
    「何するの?」
    「空気を入れ替える。このまま何度も出入りすると、胸を悪くしかねない」
     程なくして、ミューズが魔術で送り込んだ風が城の2階、3階の窓を開けて出て行った。
    「……よし。再度探索するぞ」
    「ペルシェはどないする?」
    「そうだな……。キリア、すまないが彼女についてやってくれ」
    「分かったわ」

     ヘックスとミューズは再度、城の中に入った。
    「さっきよりは大分、空気がよーなったな」
    「そうだな。……こっちだ」
     ミューズはヘックスに手招きし、先程遺体を見付けた場所へ連れて行く。
     他の部屋よりも比較的豪奢な部屋の中央に、やはり豪奢であっただろうベッドがある。その上に、白骨化した猫獣人の遺体が乗っていた。
    「うわぁ……、見事に骨だけやな」
    「乾燥が激しいからな。肉や皮はとうの昔に干からび、粉になってしまったのだろう」
     ベッドの側には、やはり大麻樹脂が落ちていた。
    「この人も、麻薬漬けで死んだんかな」
    「にしては……」
     ミューズは遺体の側に目を向ける。
    「吐血などの跡が無い。
     大麻によって死亡した場合、概ね肺病が原因となる。となると当然、気管支炎などの症状を発し、血を吐くことになる」
    「……ほんなら、この人は血ぃ吐かへんで死んだんやろか」
    「そうなるな。そこから突き詰めて考えると、彼は使っていないはずだ。……ふむ」
     ミューズはベッドの下に、日記が落ちているのを見つけた。
     日記も風化しかかっており、ページのいくつかが枯れていたが、何とか読むことができた。



    「507年 8月20日
     日記を書き続けてきたおかげで、何とか月日の感覚だけは保てている。
     こうなってから既に、2週間が経過していると言うことも、日記で分かる。
     それが逆に、私を苦しめている。
     いっそ、狂ってしまえばいいのに。

     仕方なく、横たわる。
     明日もきっと、同じような日が続くだろう。



     507年 9月2日
     手に力が入らない。
     井戸の水もわずかだ。
     目をつぶる度、死と言う言葉が脳裏に浮かんでくる。

     気にかかるのが、カマラだ。今なお生きていてくれるのか。それが気がかりだ」

    「カマラ? ……ペルシェのことやろか」
     ミューズから内容を伝え聞いたヘックスは、顔を上げる。
    「可能性は高い。少し前のページに、何か書かれているかも知れないな」

    「520年 8月8日
     王にのみ伝えられる、隠し井戸。
     あれが何故、王だけが使うことになっていたのか、ようやく分かった。
     万一敵襲を受けた際の、脱出路だったのだ。
     これで私たちは、城を抜け出せる。
     滑稽な話だ。城に住む王が、城に閉じ込められるとは。
     だが、そんな愚痴も今日までだ。早速井戸を使い、ハッシュに報復するとしよう。

     つくづく滑稽だ。
     長年の砂の堆積で、私の体では抜けられそうも無かった。

     滑稽だ。



     520年 8月9日
     考えた末、カマラだけでも逃がすことに決めた。あの子なら、砂が積もった井戸の道も抜けられるだろう。
     私が閉じ込められていると言う旨をつづった文書も渡した。
     これで助かるだろう。
     いや、もしかしたらこの砂漠の熱に

     悪いことは考えたくない。
     生きて出られたと信じよう」
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