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    「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
    双月千年世界 短編・掌編

    黒エルフの騎士団 11

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    スピンオフ、11話目。
    直接対面。




    11.
     新しく王となったサダトの勅令により調査団が発足し、広い砂漠のどこを調査するか、会議が開かれた。
     そこに参加したミューズの前に、ようやく敵が姿を表した。

    「初めまして、ハッシュ卿。私はミューズ・アドラーと申します。サダト陛下に今回の麻薬騒動についての相談役を仰せ付かりました」
    「そうですか。初めまして、アドラー女史」
     双方穏やかに挨拶したが、互いに警戒・敵視し合っていた。
    (睨んできている……)
     表情こそ穏やかそうに繕っているが、毛量の多い猫耳はヒクヒクと、苛立たしげに動いている。何より、眼鏡の奥に見える神経質そうな目は、まったく笑っていない。
    「さて、諸君には今回、我が父上であり、先王であったアジム・ペルシャーナが麻薬を蓄えていたと言う、その証拠をつかむために集まってもらったが……」
     調査団を率いることになったサダトが議長となり、会議は始まった。
    「知っての通り、西に広がるファリザン砂漠は我が国の4分の1を占める広大な地域だ。そこをくまなく調査していては、どれだけの費用がかかるか分からない。
     そこである程度の見当を付け、その周辺を重点的に調査する方針を採ろうと思う。異議のある者はいるか?」
     誰も手を挙げない。サダトは小さくうなずき、会議を進めた。
    「よろしい。では、この方針で進めることにしよう。
     さて、アドラー女史の助言によれば、この岩陰が多く特に乾燥した地域、ここなら長期の備蓄に有用であり、市街地から遠く離れているため、隠すのにはうってつけの場所では無いかと言う指摘を得ている。
     他に、この場所が怪しいのでは無いかと言う意見はあるか?」
     サダトが意見を募り、それに何人かが返答する。
     が、ハッシュは何も言わず、じっとミューズをにらみ続けている。
    (おいおい、そこまで敵意をむき出しにしなくともいいだろうに)
    「ハッシュ卿、君の意見も聞きたいのだが」
     にらむハッシュに気付いたサダトが、それとなく水を向けた。
    「ええ、私も概ね、アドラー女史の意見に賛成です」
     それを聞いて、サダトが一瞬ミューズに困ったような視線を向けた。
    (『相手は自信たっぷりだ。ここには何も無いのでは?』と言いたげだな。……心配するな、王よ)
    「そうですか。ありがとうございます」
     ミューズはにっこりと微笑んでおいた。
    「ああ、それから……」
     ミューズは一転真顔になり、調査場所について一言付け加えた。
    「旧王城、ここも調査に入れましょう」
     その発言に、会議の場がざわめいた。
    「何故……?」
    「あそこはとうの昔に、封印されて……」
    「だからこそです。堅固な城であれば物の保管・保存にも適していますし、何より『封印された神聖な場所』であれば、誰も封印を暴いてまで見に行こうとはしないでしょうから」
    「しかし……」「うーん……」
     ミューズの言う通り、旧王城は神聖な場所、不可侵の場所として見られていたのだろう。会議に参加していた者たちは揃って、難色を見せた。
    「極論になるとは思いますが」
     ここでミューズは、自分の意見を強く推す。
    「麻薬を常用するような人間が、それほど信心深く、良識に篤い人物とは思えません。そう言った、一般人であれば畏怖・忌避するような場所にこそ、隠すのでは無いかと」
     そう言ってミューズは――半ば見ているような、見ていないような、ギリギリの角度で――チラ、とハッシュを横目に見た。
     その瞬間――。
    (……やはり、反応したか)
     ハッシュが動揺したのが、わずかに見て取れた。
     続いて今度は、はっきりとサダトに目配せする。サダトはこれを受け、重々しくうなずいた。
    「……うむ。確かに、そうした『聖域』にこそ悪が潜むこともある。一切の固定観念を捨てて調査しなければ、何の意味も無いからな。
     ではまず、近場の旧王城から調査を行うことにしよう」
    「いや、……しかし」
     反論しかけたハッシュを、サダトがにらみつける。
    「何かな?」
    「やはりそこを暴くと言うのは、どうも……」「私の意見に反対と言うのか?」「……っ」
     王であるサダトににらまれ、ハッシュは言葉を失った。
    「……いや、……そうですな。徹底的な調査は必要ですからな」
     ハッシュが折れ、会議は終了した。

    「何も、ハッシュ卿は伊達や酔狂で城中にばら撒いたわけでもあるまい」
     会議を終えたミューズはヘックスたちの泊まる宿に戻り、今後の作戦について説明した。
    「あるのだ。恐らくは、大量の備蓄が」
    「ってことは、あの城中に落ちていた大麻樹脂は」
    「誰の目にも映らない場所で、禁断の果実が目の前に山と積まれている。
     となれば、やることは一つ――取り扱っていた密売人たちがちょろまかし、吸っていたに違いない。その名残だろう。
     でなければ使用前の大麻樹脂がまばらに転がっているだけで、あれほど濃い臭いが溜まるわけが無い」
    「あの臭いはひどかったわね、本当に」
    「外からはまったく様子、分からへんもんな。スパスパ吸うても、誰も気付かへんやろな」
    「市街地からも適度な距離にある。隠匿・備蓄には、これ以上適した場所は、……と」
     言いかけて、ミューズはペルシェの方に目線を向けた。
    「……」
     ペルシェは青い顔をしてうつむいている。
    「……ひどいよ、ハッシュ卿」
    「ペルシェ……」
     ウェルスがペルシェの肩を抱きかかえる。ペルシェもウェルスに寄りかかり、グスグスと鼻を鳴らした。
    「何でそこまで、城を、父上を嬲り者にしたのかなー……」
    「対立していたと言っていたからな。その名残かも知れない。あの男、相当性格が捻じ曲がっているようだ」
     ペルシェはミューズの手を取り、強く握りしめた。
    「倒そう……! 絶対、絶対……!」
    「勿論だ。……だがその前に、奴にはやってもらわねばならぬ仕事がある」
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