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    「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
    双月千年世界 短編・掌編

    黒エルフの騎士団 12

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    スピンオフ、12話目。
    砂漠の夜の会話。




    12.
     会議の晩。
     シグマ兄妹は砂漠へこっそりと出向き、旧王城の近くに穴を掘っていた。
    「こんなもんでええかな」
    「そうね。後はじゅうたんをかぶせて、……と」
     掘った穴の上にじゅうたんを敷き、さらに砂をかぶせてカモフラージュする。
    「後は待つだけ、やな」
    「そうね。……それじゃ、私は3時間眠るから」
    「おう。その後はよろしゅーな」
     二人はミューズから、「恐らくハッシュ卿は証拠隠滅を狙い、使いの者を旧王城によこすはずだ。2日後の調査開始まで見張り、そいつらを捕まえておいてほしい」と頼まれていた。
    「じゃ、おやすみ」
    「おう」
     交代で監視するため、まずはキリアが眠りに入る。
    「……そうだ、兄さん」
     が、毛布からもそもそと顔を出し、キリアが声をかけてきた。
    「何や?」
    「もう10日近くいるのよね、ここに」
    「せやな」
    「……ソフィエランドの仕事、なくなっちゃったかもね」
    「……うーん」
     しばらく休むとは伝えていたものの、流石に2週間近く姿を消していては差し支えも出てくる。
    「どうしよっか、帰ったら……」
    「仕事、復帰でけんか頼むしかないよなぁ」
    「……それか、さ」
    「ん?」
    「ペルシェの村に、みんなで移り住むって言うのはどうかしら」
    「……それもええなぁ」
     久々に二人きりになり、話は弾み出す。
    「ソフィエランドと同じようにさ、私は服を仕立てて、兄さんは畑を耕して、ミューズは本を集めてって、そんな風に暮らしたいね」
    「せやなぁ。前みたいに、三人でのーんびり暮らしたいなぁ、また」
    「そうね。……ねえ、兄さん」
    「ん?」
    「ミューズのこと、どう思ってる?」
     しばらく沈黙が流れる。
    「んー……、どうって?」
    「街でさ、良く聞かれるのよ。『お兄さんとミューズって、付き合ってるのか』って」
    「ああ……、オレもよー聞かれたわ。『妹みたいなもんですわ』って返してるけどな」
    「それ、本当に? 本当に、ミューズのことは妹としてしか見てない?」
    「……まあ、お前に比べたら雰囲気は大分ちゃうけども、そう思てた方がミューズも気楽かな、て」
     キリアはたまらず、毛布から抜け出した。
    「あのね……。私も鈍いって言われるけど、兄さんはもっと、ね。
     何で旧王城で、私じゃなくて兄さんと一緒に探索しようとしたと思う? 兄さんの方が優しいし、あの時のペルシェをなだめるなら兄さんの方がぴったりだったはずよ?」
    「……どゆこと?」
     キリアははー、と呆れ返ったため息を漏らした。
    「ミューズは、兄さんのことを好きなのよ。
     だから兄さんに良く話しかけてるし、兄さんが『女の子っぽい話し方の方がかわええよ』って言ったら素直に従うし、兄さんが怒ってハッシュ卿のところに行こうとした時も、兄さんの身を思って無理矢理止めたし。
     あの子は好きって、自分から言わないだけなのよ」
    「……へえ、そお、やったんか」
     ヘックスの口調が、カクカクしたものになる。
    「うっわー……、そやったんか、知らんと、まあ、……よーやってこれたなぁ」
    「でも、もう一回言うけど。
     あの子は自分から好きって言わない子だからね? 言うなら、兄さんの方からじゃなきゃ無理よ。嫌いって言うにしても、恋人として見れないって言うにしてもね」
    「……うん。……またミューズに会うた時、考えてみるわ」
     ヘックスの返事に満足し、キリアは毛布に入り直した。
    「そうしてあげてね。私にとっても、ミューズは大事な家族だから。……おやすみ」
    「……おやすみ」

     キリアはまどろみの中で、ぼんやりと昔を思い出していた。
    ――ぐす、ぐすっ……――
     それは、まだ殺刹峰に連れて来られて間も無い時だった。
     連れて来られてすぐ厳しい訓練にさらされ、それが幼い彼女には耐え切れず、ずっと泣いていた。
    ――なあなあ、どないしたん?――
     そんな時に声をかけてきたのが、自分より少し早く、殺刹峰にやって来たヘックスだった。
    ――その、んー……、寂しかったりするん?――
     今も鈍い彼の性格は、この当時からそのままだった。
    ――さびしくないの。いやなの――
    ――……何が嫌なんか、よー分からへんけど――
     ヘックスは泣きじゃくるキリアをひょいと抱え、膝に乗せた。
    ――ま、お兄ちゃんが側にいといたるし。たっぷり泣いて、早よ元気出し、な?――

    (鈍感で、ヘタレで、ちょっとバカ。私たちがいなきゃ、てんでダメ男。……でも、優しい。どんな時でも、兄さんは優しい人。
     だからミューズも私も、あなたのことが好きなのよ)
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