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    「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
    双月千年世界 短編・掌編

    黒エルフの騎士団 13

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    スピンオフ、13話目。
    まずは尻尾をつかむ。




    13.
     シグマ兄妹が砂に紛れて監視を始めてから、8時間後。
    「……キリア、キリア」
    「うう……ん。どうしたの……?」
    「来おった」
     ヘックスの緊張が篭った言葉に、キリアの眠気は吹き飛んだ。
    「……!」
     キリアは静かに毛布を抜け出し、ヘックスの側に寄る。
     まだ宵の闇が残る早朝の砂漠を、黒いマントに身を包んだ者たちが5名ほど、旧王城に向かって歩いてくる。ヘックスたちが待ち構えているのには、気付いていないようだ。
    「どないする?」
    「そうね……、奴らが城の中に入ったら、後ろから強襲ね」
    「せやな」
     黒マントたちは城門の砂を払い、閂を外して中へ入る。そのまま奥へ進んでいったところで、シグマ兄妹は砂の中から飛び出した。
    「行くで、キリア!」
    「ええ!」
     弾丸のように飛び出し、城門を潜り、二人は中へ侵入した黒マントたちに追いつく。
    「な……」
     黒マントたちが応じる間もなく、ヘックスの右拳があごを弾く。
    「は、う……」
     まるで糸の切れた人形のようにかくんと膝を着いた仲間を見て、他の黒マントが慌てふためく。その隙に、キリアがぐるりと回転しながら敵へと迫る。
    「はッ!」「ひゅ、っ」
     キリアの放った後ろ回し蹴りが鳩尾にめり込み、続いてもう一人倒れる。
    「な、何者だっ」
     うろたえる黒マントたちに応じず、兄妹はさらにもう一人ずつ仕留めた。
    「ひ、ひいい……」
     残った黒マントを挟む形で、ヘックスとキリアが並び立つ。
    「何しに来た?」
    「え、いや、その」
    「何しに来たんや、って聞いとるんや」
    「い、命ばかりは」
     怯える黒マントの襟元をつかみ、ヘックスがすごむ。
    「何べん言わせるつもりじゃ、あ!? 答えんかい!」
    「ひいーっ!」



     さらにその翌朝。
     調査団は旧王城に向けて出発していた。
     ミューズの後ろにはシグマ兄妹とペルシェ、そして横にはハッシュが並んで歩いていた。
    「しかし、何と言いますか……、あなたはなかなか、物怖じなさらぬ方のようだ」
     ハッシュが底意地の悪そうな目を向け、ネチネチとささやいてくる。
    「何がでしょうか?」
    「捨てられた城とは言え、代々の王家が住まわれた神聖な城を、麻薬の倉庫などと。もし何も無かったら、何と申し開きを?」
    「私は客観的な意見を述べたまでです。可能性はある、と」
    「ほうほう、なるほど」
     その応答には、「言い逃れをするつもりだな」と言いたげなニュアンスが見え隠れしていた。そこで、ミューズは強気に出る。
    「しかし、私個人の見立てでは存在すると、確信しています。今まで誰も侵さなかった聖域だからこそ、それこそ神をも畏れぬ冒涜者が利用しないとも限りません」
    「ふむ。……それで、アドラー女史。何も出なかった場合、どうされるおつもりですかな?」
    「どう、とは?」
    「我が国の聖域が麻薬の温床と、あなたは罵ったも同然。これは国家反逆級の侮辱と、私は捉えております。その罪、どうやって償いになるおつもりですか?」
    「どうとでも……」
     ミューズはにっこりと、しかし悪辣さを含んだ笑みを返した。
    「国の威信を踏みにじったと言うのならば、それ相応の罰は受けて当然。罰金でも禁固でも、首級でも、気の済むように請求していただいて結構です」
    「なるほど……」
    「国家や王侯貴族、そうした貴いものを侵したのならば、それくらいはしかるべき処分。そうでしょう、ハッシュ卿?」
     ミューズの態度に、ハッシュは何かを感じ取ったらしい。ハッシュは深々と、うなずいてみせた。
    「確かに。まあ、その話をするのは、結果を見てからですな」

     調査団は旧王城に着き、城門を開く。
    「さて、15年ぶりですかな、この中に入るのは。いやいや、懐かしい」
     ハッシュのその発言に、シグマ兄妹とペルシェは内心「嘘付け」と毒づく。
     城の中に入ったところで、サダトがつぶやいた。
    「ほう……、放っておいた割りには、汚れが少ない。まるで誰かがつい最近、片付けたかのようだ」
     挑発のつもりでそう言ったようだが、ハッシュは応じない。
    「なるほど。あながち、誰かが出入りしていたと言う可能性も少なくないですな」
     白々しい物言いにシグマ兄妹、ペルシェ、サダトは再度毒づいていたが、ミューズは無反応だった。
     ともかく、サダトが号令をかける。
    「それでは調査を開始しよう。1班は1階と地下1階、2班は地下2階、3班は2階と3階を探索してくれ」
     それを聞いて、ハッシュはまたミューズを一瞥した。
    「……分かりました」
     ミューズたちとサダトは1班、ハッシュは2班である。
     散開したところで、サダトは小声でミューズに確認した。
    「これで、いいのか?」
    「はい。上等です」
    「……しかし、良く分からないのだ。昨日、君たちの行動と作戦を聞いたが、本当にあれで、ハッシュ卿を捕まえられるのか?」
    「ええ。疑心暗鬼になっていたようですし、間違いなく自分からボロを出すでしょう」
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