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    「双月千年世界 短編・掌編・設定など」
    双月千年世界 短編・掌編

    黒エルフの騎士団 15

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    スピンオフ、15話目。
    事件の決着と、みんなの今後。




    15.
     呆然とした顔のハッシュがミューズたちの前に現れたのは、通信してから5分後のことだった。
    「あ、言うとくけどな。この魔方陣、昨日来た掃除屋のアジトにあったもんを回収させてもろたしな。
     他の魔方陣と混線するようにはできてへんし、ちゅうことはアンタがこの城の掃除を指示したっちゅうことになるわな。
     アンタ、自分の手の届くとこにはよー気ぃ利かせてたみたいやけど、部下の身柄までは気ぃ回らへんかったみたいやな。麻薬だけ掃除させて安心してたやろ、へっへへ……」
     それを聞いて、ハッシュの顔が悔しそうに歪む。
    「すべては……、策略か。わざとここを掃除させたのも、何かしらの罠があるようにほのめかしていたのも、……アジム王を陥れたのも」
     ミューズはニヤリと笑ってうなずく。
    「そうだ。前もってあんな風に、『我々は偽の証拠で陥れることもする』と見せ付けておけば、お前はきっと『自分にも同じ手を使われるかも知れない』と深読みするだろう、と踏んでいた。
     お前は周到で考え深い人物だ。単に罠を仕掛ければ、看破する。……だったらいっそ、罠があるように見せかけて惑わせ、その明晰な頭脳を暴走させた方が御しやすい」
    「……くそっ」
     ハッシュはその場に崩れるように、膝を着いた。
    「(……ハッシュ。私のことを、覚えていますか?)」
     と、ペルシェがハッシュに呼びかける。
    「(誰だ? ……見た顔だ、とは思っていたが)」
    「(娘の顔は父に似る、と言うでしょう? 忘れたとは言わせません。あなたがこの城に閉じ込めて餓死させた男の、娘です)」
    「(……ま、まさかっ)」
     ハッシュは眼鏡を外し、まじまじとペルシェの顔を眺める。
    「(カマラ……!? そんな馬鹿な、あの子は『阿修羅』に連れて行かれたはずだ!)」
    「(ええ。ですが、戻ってきました。あなたを、討つために)」
    「(ひっ……)」
     ハッシュの顔が真っ青になり、ガタガタと震え出す。
    「(こ、殺さないでくれ!)」
    「(私は、殺しません。……でも生かしてはおけませんよ)」
     ペルシェは従兄弟違に顔を向け、静かに頼んだ。
    「(あの男に、厳罰を)」
    「(勿論だ。この男は人の心身をドロドロに壊す麻薬を、我が国の権力を使って嬉々として売りさばいたのだ。
     これはもう、国家級の悪事に他ならぬ。相応の罰を与えねば)」
     その言葉に、ミューズも南海語で応じた。
    「(彼は『国を侵すほどの悪事には、それ相応の罰が下って当然。罰金でも禁固でも、首級でも』と言う言葉に、深々とうなずいてくれたからな。
     異論は無いそうだから、存分に与えてやればいい)」



     それから3日後。
    「これ、この辺でえーかな」
    「うん、そこにお願い。あ、それは触んないで」
    「ん、分かった」
     シグマ兄妹は荷物を抱え、家の中を周っていた。
    「ミューズ、どこ行ったんかな」
    「休んでるわ。『テレポート』使いすぎて、頭痛いんだって」
    「え、ホンマ? 大丈夫かな……」
     シグマ兄妹とミューズは、ペルシェビレッジに移り住むことを決めた。
     事件の後、ペルシェは結局ペルシャーナ王家と復縁した。ペルシェの境遇に同情したサダトが、便宜を図ってくれたのだ。
     その関係で、ペルシェビレッジとペルラ王国とで、開発援助や貿易などの話も出始めている。その関係が軌道に乗れば、ペルシェビレッジは急成長し、央北と南海の友好関係に寄与するのではと予想されている。
     その準備や運営などで忙しくなるのを予想し、ペルシェは人手をほしがった。そこで、ヘックスたちが誘われたのである。シグマ兄妹には若干の迷いがあったのだが、ミューズが「行こう」と即答したため、付いて行くことにした。
    「にしても、何でミューズはこっちに来ようって言うたんかな」
    「さあ……?
     あ、そうだ兄さん。今、チャンスじゃない?」
    「へ?」
    「ミューズは部屋で休んでるし、私は他の荷物運んでるから、二人っきりになれるわよ」
    「せやな。それが、何のチャンスなん……、あー」
     妹の言葉の真意に気付き、ヘックスは顔を赤くする。
    「……いや、休ませといた方がええんちゃうかな」
     そう返したヘックスに対し、キリアは深いため息をつきながらヘックスを指差し、こう言い切った。
    「ヘタレ」
    「う」
    「優しく振舞う振りして、怖いんでしょ」
    「……まあ、その、うん」
    「いいから。こう言う時勇気出さないで、いつ出す気?」
    「いや、もっと大事な時に……」「もっと? いつあるの?」「……行ってくる」
    「よし」
     妹に押される形で、ヘックスはミューズの休む部屋へと向かった。

    「は、……入るでー」
     ヘックスは遠慮がちにノックし、部屋の戸を開ける。
    「どうした?」
    「いや、頭痛いって聞いたから、大丈夫かな思て」
    「ああ……」
     横になっていたミューズは体を起こし、ヘックスを見上げた。
    「まあ、問題ない。気分はもう良くなったし、私も手伝うよ」
    「あ、ええよええよ、休んでて、……いや、ちゃうねん。そんなん聞きたいんと違て、……あー」
    「は? 何の話なんだ……?」
     ヘックスは一旦黙り込み、やがてミューズと同じ目線に屈みこんだ後、ゆっくりと口を開いた。
    「……ミューズて、オレのことどう思てる?」
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