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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第9部

    蒼天剣・回帰録 3

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    晴奈の話、第591話。
    子供たち。

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    3.
     表彰式が終わり、帰途に就こうとしたところで、シュウヤは呼び止められた。
    「シュウヤくん、お疲れ様」
    「あ、プレアさん」
     シュウヤはぺこりと頭を下げ、そこでプレアの横に先程戦った二人が並んで立っているのに気付く。
    「あ、お前」
    「よお。お前もプレアさんに呼ばれて参加したんだってな」
    「そうだよ。お前らも?」
    「せやねん。……ほんでプレアさん、コイツ誰やったんです? 『秘蔵っ子』言うてましたけど」
     シルキスの問いに、プレアはにっこりと笑って尋ね返した。
    「519年上半期エリザリーグ、出場者は覚えてるわよね?」
    「え? あ、はい。えーと、ウチの母やんと、ウィル兄やんのお父さん、あと『キング』と、えーと」
     シルキスはそこまで答えたが、後が続かない。そこでウィルが助け舟を出した。
    「ナラサキって言う央南の剣士と、同じく央南の……」
     そこまで言いかけて、ウィルは目を丸くした。
    「……コウ?」
    「そう。その息子さんよ、黄秋也くんは」
    「マジっスか」
     ウィルは信じられない、と言う目で秋也を見つめた。
    「……何だよ」
    「お前、コウ先生の子供だったのか」
    「そうだよ。……ってか、昔会ったろ」
    「へ?」
     ウィルは懸命に、記憶を掘り起こす。
    「……あっ。そう言えばオレん家で会ったっけ。コウ先生と一緒だった気がする」
    「思い出してくれたみたいだな。まあ、10年も前の話だから、覚えてないかなとは思ってたけどさ」
    「でも……、あれ? それだとお前、今19歳?」
    「そうだよ」
    「……ホンマ?」
     疑い深そうに見つめてきたシルキスに、秋也は鼻をフンと鳴らした。
    「本当だって。もっと年上に見えたか?」
    「ううん」
     ウィルとシルキスは、同時に首を振った。
    「もっと下かなって思ってた」
    「……どーせ童顔だよ。親父譲りなんだ」

     屏風山脈、央中側ふもとにある黒炎教団の街、カーテンフット。
     プレアは秋也たちを連れ、祝勝会を開いていた。
    「さ、さ。たくさん食べてちょうだい」
    「いただきます」
     敬虔な天帝教信者であるウィルと、礼節をきちんと学んだ秋也は礼儀正しく挨拶したが、シルキスはいち早くがっつき始めた。
    「ガツガツ……、うまー」
    「おいおい、ちゃんと挨拶しろって。後、食べ方が汚い。ほっぺ汚れてる。ちゃんとナプキンかけろ」
    「えーやんかー」
    「よくねーよ」
     二人の様子を見て、秋也は吹き出した。
    「ぷっ、ははは……」
    「んあ?」
    「手のかかる子供とお父さんかよ」
    「うっせ。コイツ昔から、食べんの汚ねーんだよ」
    「むー」
     シルキスはむくれるが、ウィルは構わずナプキンで頬を拭いてやる。
    「ところでさ、その」
    「ん?」
     ウィルはためらいがちに、秋也に尋ねてきた。
    「コウ先生、元気してるのか? もうずっと、会ってないけど」
    「元気だよ。……ってかウィル、何なら会いに来るか?」
    「え?」
     秋也はピッと親指を立て、ウィルを誘う。
    「お袋も喜ぶと思うぜ。あ、もしかしてこの後、予定あったりするか?」
    「いや、ちょっと空けても問題ない」
    「じゃ、来いよ」
    「……そだな。行くか」
     うなずいたウィルに続き、シルキスも手を挙げる。
    「ほんならウチも行くー」
    「おう、来い来い。プレアさんはどうします?」
     秋也は水を向けてみたが、プレアは残念そうに肩をすくめた。
    「行きたいのは山々だけど、私はすぐ、次の仕事があるから」
    「そうですか。……残念ですね」
    「ええ、私も。また暇ができたら、行かせてもらうわね」



     祝勝会の翌日、秋也たちはプレアと別れてふたたび屏風山脈を登っていた。
    「ここもさ」
     歩きながら、秋也がつぶやく。
    「お袋が越えた当時は、あんまり整備されてなかったらしいな」
    「そーなん?」
    「ああ。今の教主が整備するように命令したらしいぜ。
     昔は1週間くらいかかったのが、今じゃ2日で越えられるもんな。擂台賽開いたことと言い、あの人は相当やり手らしいって、プレアさんが言ってたな」
    「へー、そーなんやぁ」
    「このまんま進んだら、明後日には央南だ。二人とも、央南語はしゃべれるか?」
     そう問われ、ウィルとシルキスは顔を見合わせた。
    「……しゃべれる?」
    「いや、全然。お前は?」
    「しゃべれるわけないやん」
    「……簡単に練習しとくか?」
     二人の様子を見て、秋也はパタパタと手を振った。
    「あ、お袋央中語もしゃべれるから。一応聞いただけ」
    「……ちょっと安心した」
    「そだな」
     苦笑いした二人の顔を見て、秋也はクスッと笑った。

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    2016.12.25 修正
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