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    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第3部

    火紅狐・乱北記 4

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    フォコの話、95話目。
    「猫姫」の素顔。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    4.
     続いて大火は、こんなことを言い出した。
    「沖に船がいる。あれに乗り込むぞ」
    「え……」
     フォコたちが戸惑った声を出したのは、その意図が分からなかったわけではない。
     二人とも聡明なので、沖にいたその船に「猫姫」が乗っていることと、彼女に会う意義には察しが付いていた。
    (そら、沖から様子見てへんかったら、軍港ん中の船、いつ攻撃したらええんか分からへんやろしなぁ……。ちゅうことは、あそこに船を攻撃した『猫姫』さんがおるっちゅうことになる。
     ほんで、その『猫姫』さんに会うっちゅうのも分かる話や。軍閥に峠を封鎖されとる今、そいつらを倒さな、封鎖は解かれへん。ほんなら、実力を持っとる『猫姫』さんらに協力するっちゅうのんが今、封鎖を解く一番手っ取り早い手段や。
     でも、ここからどうやって船に乗るんやろ?)
     ランドも同じ結論に至ったらしい。
    「確かにあの船には恐らく『猫姫』なる人物が乗っているだろうし、彼女――だか分かんないけど――に協力することが、現状の打開に結びつくのは確実だろう。
     でもどうやって、あんなところまで? ここには船も何も……」
     大火は答えず、二人の背後に回り込んで襟をつかんでくる。
    「え?」「じっとしていろ」
     次の瞬間、二人は宙を浮いた。

    「へ、……うひゃああああ!?」
     突然空高く舞い上がり、流石のフォコも狼狽する。
    「……っ」
     隣のランドも真っ青な顔になっている。
    「しゃべるな。舌を噛むぞ」
     どうやら、これも大火の魔術によるものらしい。
     三人は3分も経たない内に、沖に停まっていた船に到着した。
    「……も、もう、着いたんですか」
    「静かにしていろ」
    「……」
     二人とも声を挙げてへたり込んでしまいたいところだったが、確かにここで見つかれば騒ぎになる。何とかこらえ、物陰に潜んだ。
    「あいつだな」
     大火は甲板の中央に立つ、耳と尻尾の黒い、緑髪の猫獣人を指差した。
    「あの子が……?」
     一見した感じでは、その女性は少女とも取れるくらいに若かった。
    (どう見ても、一撃で船を丸焼きにするくらいに強いとは思えへんねけどなぁ……?)
     だが、大火は確信に満ちた声で返答する。
    「オーラが尋常ではない。あの中で最も、強い魔力を持っている」
    「オーラ……?」
     そう言われてもう一度目をやるが、フォコの目にはやはり、ただの少女としか見えない。
     と――。
    「……そこ、誰かいるの?」
     その少女が、こちらに目を向けてきた。
    「……っ」
     フォコたちは見つかったかと舌打ちしかけたが、大火が先手を打つ。
    「術をかける。口を開くな」
    「え、……」
     尋ねかけたが、言われた通りに黙る。
    「『インビジブル』」
     大火が術を発動した途端に、三人の姿は見えなくなった。
    (……ホンマ、何でもできるなぁ、この人)
     そうこうしている内に「猫姫」と何人かが、こちらに向かってきた。
    「あれ? ……気のせい?」
    「イールさん、本当に誰かいたんですか?」
     どうやら、「猫姫」はイールと言う名前らしい。
    「うー……ん、いたと思ったんだけど」
     イールはきょろきょろと辺りを見回し――本当に、そこにはフォコたちがうずくまっていたのだが――誰もいないことを確認して、肩をすくめた。
    「ゴメン、気のせいだったみたい」
    「はは……」
    「まあ、心配のし過ぎってことは無いっスよ」
    「相手は悪名高き四大軍閥の一角だからなぁ」
    「そう、ね。……ま、グリーンプール軍港は落としたし、これでしばらく、イドゥン将軍も大人しくなるわよね。帰りましょう、みんな」
    「はい!」
     そうして密かにフォコたちを乗せたまま、「猫姫」一派の船は動き出した。
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    NoTitle 

    そのようですね。

    NoTitle 

    別の娘だったv-402
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