fc2ブログ

黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第3部

    火紅狐・猫姫記 4

     ←火紅狐・猫姫記 3 →火紅狐・猫姫記 5
    フォコの話、101話目。
    未来の進め方。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    4.
     フォコたち三人を迎え入れ、イールは改めて、現在自分たちが戦っている相手について説明してくれた。
    「今、あたしたちが相手してるイドゥン少将の本拠地は、大陸沿岸部からちょっと南に行った島、北海諸島第5島のフロスト島にあるの。
     イドゥン少将の軍閥は、沿岸部方面艦師団――ま、中央軍とかで言うところの海軍を主軸とした一個旅団で編成されてるわ。だから少将の本拠地も、北海上にあるってわけ。で、そこからグリーンプールや他の港町にある軍港及び駐屯地に命令を飛ばして、沿岸部を牛耳ってるの。
     ま、牛耳るって言っても、ここしばらくは弟分だったギジュン准将との取引を優先させるため、港町の治安が悪くなるようなことはしてこなかったんだけど、つい二ヶ月前に仲違いしちゃったのよ」
    「仲違いって?」
     ランドの質問に、イールは肩をすくめる。
    「准将の妹さんを自分の砦に招待した少将が、そのまま彼女を軟禁しちゃったのよ。どうしても奥さんにしたいっつって」
    「下衆だな」
    「で、准将の襲撃に備えて峠を封鎖し、武具を大量に買い付けて迎撃態勢を整えてるとこなのよ。
     あんたたちが見た兵士の乱暴ってのも、それが原因ね」
    「って言うと?」
    「さっきは沿岸部に金が入ってきてるって言ったけど、イドゥン軍閥の経済状況は割と厳しいのよ。封鎖と買い付けのせいで、ここ最近の懐具合はかなり寂しいみたい。
     兵士一人ひとりに出す給料も、三ヶ月前の半分以下になってるらしいわよ」
    「それで生活苦のために、巷で強盗まがいの騒ぎを起こしてるってわけか。……責任ある人間のやることじゃないな」
    「まったくですよ。自分の欲望のために、軍閥2つと沿岸部を巻き込んでるわけですしね」
    「それだけじゃないさ」
     ランドは眼鏡を拭きながら、悲しそうな顔をした。
    「本来不必要な峠の封鎖や迎撃準備やらさせられた上に給料まで減らされたら、兵士たちの制御が利かなくなるって、ちゃんと管理のできる人間なら分かるはずだ。
     それを、仮にも大組織のリーダーである人間が配慮の一つもせず、代わりに今熱心なのは異性を口説くこと、……だなんて、呆れるよ。
     放っておいても潰れるよ、そんな組織」
    「ま、あたしもそう思うけどね」
     イールは軽く首を振り、こう結論付けた。
    「放っておいたら放っておいた分、力の無い人たちが嫌な目に遭うのよ?
     毒で全体が冒されて死ぬより、毒の回ったところだけ切り落として命をつなぎとめた方が、それこそ懸命でしょ」
    「ま、そりゃそうだね」
    「だから近いうち、あたしたちはイドゥン軍閥を襲撃し、壊滅させる予定よ」
     拳を固め、そう宣言したイールを見て、ランドはイールを眺めたまま黙り込んだ。

    「……な、何?」
     じっと見つめられ、イールは顔を赤くする。
    「一つ、聞かせて欲しい」
     ランドは眼鏡を外し、イールに真剣な眼差しを向けた。
    「な、何を?」
    「君は……、と言うか、キルシュ卿は、この国をどうしたいんだろう?」
    「何言ってんのよ」
     イールはフン、と鼻で笑い、表情を戻してこう返す。
    「この国を立て直すのよ。この国を弱らせてる原因、軍閥の独断専横を解消することで」「それなんだよね」
     ランドは眼鏡をかけ直し、あごに手を当てながらぽつぽつと話す。
    「確かに言わんとすること、理念は分かる。納得行くし、賛同もできる。
     でもその方法は、果たして戦うことが最善だろうか?」
    「はい?」
    「君はさっき、沿岸部は外国との貿易で潤ってるって言ったよね。ここで反乱軍が海に出張って軍閥と交戦したら、その貿易はどうなる?」
    「まあ、止まるでしょうね。港町の目と鼻の先で戦闘するんだし」
    「だろう? それはこの国にとってプラスになるだろうか?」
    「なるわよ。外国からのお金が来なくなれば、沿岸部と山間部のバランスが元に戻る。そうすれば沿岸部付近の軍閥は、みんな資金繰りが悪くなって瓦解するわ。そうなれば……」
    「軍閥だけじゃない。沿岸部、いや、この国全体が痩せ細ることになる」
    「はあ?」
     ランドはイールに歩み寄り、強い口調で主張する。
    「君はこの国の内部にだけ焦点を当てて考えてるみたいだけど、もっと広い視点で考えてみてくれ。
     沿岸部での貿易拡大によって――そりゃ、軍閥にピンハネされてはいるだろうけど――そこに住む人たちの懐は暖まっている。豊かになってるってことだ。
     それが止まってしまったらどうなる? 君の言う通り、沿岸部に入って来ていたお金はストップするだろう。沿岸部に住む人たちは、それで喜ぶと思うかい?」
    「……それは……」
    「それにそのお金は、仮に軍閥が無ければ、いずれは山間部にも入ってくるはずだ。そうなれば山間部も豊かになる。
     それを君たちの都合で止めてしまったら、皆は喜ぶだろうか? 君たちのことを、この国に住む多くの、一日100万グランしか稼げない人たちは賞賛すると思うかい? 『もっと稼げたはずだったのに』と恨んでこないと、断言できるのかい?」
    「……」
    「もっと皆のことを考えるべきだ。今君たちが溺れているのは、ただのヒロイズム――自分たちが英雄になることばかり考えた、自分本位の欲望でしかない」
     イールは苦い顔をし、椅子に座る。
    「……じゃあ、どうするのよ? 折角軍港も潰したって言うのに、尻尾巻いて逃げろって言うの?」
    「そうとも言ってない。僕に、考えがあるんだ」
     ランドはイールの手を取り、真剣な眼差しで頼み込んだ。
    「会わせてくれないか、キルシュ卿に」
    関連記事




    ブログランキング・にほんブログ村へ





    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 5;緑綺星
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    総もくじ 3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 5;緑綺星
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 4;琥珀暁
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 3;白猫夢
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 2;火紅狐
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 1;蒼天剣
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    もくじ  3kaku_s_L.png DETECTIVE WESTERN
    もくじ  3kaku_s_L.png 短編・掌編
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
    もくじ  3kaku_s_L.png 携帯待受
    もくじ  3kaku_s_L.png 今日の旅岡さん
    総もくじ  3kaku_s_L.png イラスト練習/実践
    • 【火紅狐・猫姫記 3】へ
    • 【火紅狐・猫姫記 5】へ

    ~ Comment ~

    NoTitle 

    これは立ったかもわかりませんね。

    NoTitle 

    お兄ちゃん猫姫のフラグ立ててきたーv-402
    管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    トラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【火紅狐・猫姫記 3】へ
    • 【火紅狐・猫姫記 5】へ