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    「双月千年世界 2;火紅狐」
    火紅狐 第3部

    火紅狐・挟策記 5

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    フォコの話、128話目。
    三流策士、策に挟まれる。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    5.
     ノルド王国本軍、侵攻の日。
    「……やはり……」
    「……でしょうね……」
     行軍のあちこちで、各将軍とそれぞれの側近たちが、ひそひそと言葉を交わしている。
    「……じゃあ……」
    「……恐らくは……」
     だが、周囲のそんな素振りに、金に目を眩ませるスノッジ将軍は、まったく気が付く様子はない。
    「ぐふ、ふふ、うふふ……」
     彼女の頭の中には、この行軍を邪魔して1億をぶんどることしかない。
    「……いつ頃……?」
    「……中間くらい……」
    「……いや少し後か……」
     彼女は馬鹿にしていたのだ。
     いつまでも紛糾し、進むことも戻ることもせず、いがみ合うだけの将軍たちを。
    「……では……」
    「……そうしよう……」
     そして自分たちより力がないと軽んじていた、ジーン王国の軍を。

     そのため――彼女は簡単に、罠にはまった。



     ミラーフィールド大塩湖を迂回し、ソーリン砦とイスタス砦の中間から、少し北寄りに進んだほとりで。
    「スノッジ卿……、スノッジ卿!」
     金のことで頭がいっぱいになっていたスノッジ将軍は、何度か声を掛けられて、ようやく顔を挙げた。
    「あ、はい。何でしょうか?」
    「何を考えていらっしゃった、卿? そんなにやけた顔で……」
    「え、……ああ、いえ。……え?」
     いつの間にか、スノッジ将軍の率いる一個小隊の周りを、他の将軍たちが率いる数個小隊が囲んでいる。
    「あの……? 皆さん、どうされたのです?」
    「もうそろそろ、敵の姿が見えるかと言うところで、よくそれほど、笑みを浮かべていらっしゃいますね」
     将軍の一人にそう言われ、スノッジ将軍は思わず、顔に手を当てた。
    「あ、えっと、……いえ、どう攻めようかと、そう考えるうちに、勝利を確信したもので」
    「攻める? 誰をですか?」
    「えっ?」
     囲んでいた小隊が、じわじわと歩を詰めてくる。
    「誰、ですって? 決まっているでしょう、ジーン王国……」「嘘や方便はそこまでにしてもらおうか、卿」「……っ」
     将軍数名が、スノッジ将軍の乗る馬を取り囲んだ。
    「降りていただこう」
    「……何故です? まだ先は長いですよ?」
     まだジーン王国との密約がばれていないと高をくくっている彼女は、それに応じない。
    「二度も言わせるでない、卿。方便はもう、十分だ」
    「……」
    「おかしいと思っていたんです。何故、数日前にご自分で仰ったことを、いきなり引っくり返すようなことをしたのかと。あまりにも不可思議だ」
     将軍たちが、静かに武器を手に取った。
    「そう、そして不可思議なことが、もう一つ。卿は夜中に出歩くのが、どうもお好きらしいな」
    「……!」
    「跡をつけてみれば、これまた不可思議。敵方の陣取る、イスタス砦に入っていくではないですか」
    「そして出た時には、いかにも重たそうな袋が腰に提げられていた、とのこと。
     ……説明していただこうか、スノッジ卿ッ!」
     将軍の一人が、スノッジ将軍の乗る馬の尻を引っぱたいた。
     当然、馬は暴れ出し、前脚を高々と上げる。
    「わ、……わ、わわっ!?」
     ごろんと仰向けに落下するスノッジ将軍を、他の将軍数名が支え、そのまま拘束する。
    「な、何をなさいます!?」
    「白々しい! もういい加減、すべてを吐いたらどうだ、この売国奴め!」
    「う……」
     自分を囲む将軍たちににらまれ、スノッジ将軍はようやく観念した。

    「なるほどなるほど」
    「つまり我々を足止めし、情報提供することで、1000万、2000万の金を得ていたわけか」
    「いやいや、まったくぼろい商売だな」
    「呆れてものも言えませんね!」
    「……」
     洗いざらい白状したスノッジ将軍は、ここで拘束を解かれる。
    「え……?」
     きょとんとしている間に、続いて刃を向けられた。
    「さっさと消えろ、雌豚」
    「これ以上、我々と同行せんでもらおうか」
    「立ち去りなさい! 即刻、我々の前から!」
    「それとも罪を償うつもりか? それならそれで、介錯してやるが」
    「ひぇ……っ」
     スノッジ将軍は顔色を変え、バタバタともがくように、その場から逃げ去って行った。



     結局――スノッジ将軍は自分の弄した策と、それを上回るランドの策とに挟まれ、自滅した形となった。

    火紅狐・挟策記 終
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